地域生態系学講座セミナー 2003.09.08 (月) 13:00

冷温帯落葉樹林における夏緑性高茎草本植物の伸長特性

谷友和 tanitomo@ees.hokudai.ac.jp

冷温帯落葉樹林の林床では春先に光環境が良いが気温が低く、林床植物は豊富な光量を十分に使えない可能性がある。季節が進むと気温は高くなるが、今度は林冠閉鎖が始まり、急速に光環境が悪化する。夏緑性の高茎草本植物は雪解け直後に出芽し、毎年地上部を作り直すが、大きな地上部を作るためには多くの光エネルギーが必要なはずである。光制限が強く働く林床環境において高茎草本はいつ、どのように地上部を構築していくのだろうか?

道央域において、融雪日と林冠閉鎖後の明るさの異なる5つのサイトで6種の高茎草本の地上部伸長スケジュールを比較した。雪解けが遅れると伸長期間が短くなり、相対伸長速度が速くなった。サイトの明るさの違いは個体サイズに影響を与えたが、伸長期間には影響しなかった。春にロゼット葉を着けない、順次展葉型のエゾイラクサ、ハンゴンソウ、ヨブスマソウでは生育開始直後の伸長が温度制限を受けていた。ロゼットを着けず一斉展葉型のバイケイソウは春に温度制限を受けていなかった。春にロゼット葉を展開する順次展葉型のチシマアザミ、オニシモツケでは林冠閉鎖開始後に主茎の発達が始まり、林冠閉鎖速度が伸長速度の決定に寄与していた。順次展葉型の高茎草本は春の良好な光環境を高さ伸長に十分利用できていないことが示唆された。バイケイソウ以外の種ではどのサイトでも、林冠閉鎖が始まってから終わるまでの期間(閉鎖途上期間)に活発な高さ伸長が見られた。

これらの高茎草本種は一旦伸長を始めると、林冠閉鎖によって光環境が悪化しても、ほぼ一定の伸長速度を持続した。このような伸長がどのようなメカニズムによって維持されているかを今後、解明する必要がある。


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