地域生態系学講座セミナー 2003.10.21 (火) 10:30

研究経過報告ゼミ
「サロベツ湿原における泥炭採掘後の植生遷移過程」

西村愛子 aiai@ees.hokudai.ac.jp

道北に位置するサロベツには2700haもの湿原が広がり大部分がミズゴケ泥炭湿原で構成されている。この泥炭を土壌改良材として利用するために1970年から現在まで数ha以上の面積で泥炭の採掘が行われている。この泥炭採掘地において、採掘開始から現在にいたるまでの植生の遷移過程を明らかにするために調査を行なった。

30年前の採掘地からほぼ3年間隔に1×1mプロットを合計209ヶ設置し、未採掘の高層湿原上にコントロールを設けて、各プロットにおける植生調査と環境要因の測定を行った。

採掘後、経過年数と共に種数、植被率は増加しており、採掘後10年前後を境に植被率が上がり植物の定着が見られた。採掘から20年が経過するとミカヅキグサ、ヌマガヤ、ヨシの出現が多くなり、ミズゴケ類の出現被度が100%であるコントロールとは明らかに植生は異なっていた。

環境要因では、特にアンモニウムイオン、カリウムイオンなどの陽イオンと全窒素濃度が経過時間と共に減少傾向が見られた。また、地下水位においては、採掘年代との間には明瞭な関係は見られなかったが、特に地下水位の高いプロットでは他と異なる植生が発達していた。

以上のことより、採掘後の経過年数が短いほど栄養分が多く、植物の定着に適し速やかな植生回復が見られると考えられるが、本来の高層湿原に生育する種は採掘跡地内に十分に定着しているとはいえず、ミズゴケ被度の高い高層湿原へと進む遷移系列とは異なる遷移方向に進んでいることが示唆された。


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