地域生態系学講座セミナー 2003.12.18 (金) 16:00

修論経過報告ゼミ
サロベツ湿原における泥炭採掘跡地の植生回復機構について

西村愛子 aiai@ees.hokudai.ac.jp

豊富町上サロベツの泥炭採掘地周辺は、日本でも有数のミズゴケ泥炭湿原である。こ の泥炭を土壌改良材として利用するために、30年前から現在に到るまで毎年泥炭の採 掘が行われている。

本研究では、採掘という人為撹乱後、湿原植生がどのように遷移し回復しているの か、その遷移過程とそれを規定している環境要因を明らかにすることを目的とする。

調査は、異なる採掘年代の採掘地とコントロールとして未採掘地にプロット合計209ヶ を設け、植生調査と環境要因として各プロットから水を採取しその水質分析を行った。

採掘10年を境に植物の侵入定着が顕著となり、種数・植被率ともに増加傾向が見られる ものの、種数はミズゴケが優占する未採掘地のコントロールの値には達しておらず、 植被率においてもそのばらつきが大きく、順調な回復を示しておらず、採掘後33年間 で未採掘地の植生に近づいているとは言い難い。

TWINSPANにより群集分けを行い、裸地面積の大きいグループ、ミカヅキグサ−ヨシ− ヌマガヤ群集、ミズゴケ−ホロムイスゲ群集に分かれ、採掘後20年から30年のサイト ではミカヅキグサ−ヨシ−ヌマガヤ群集へと発達しており、その要因を見るために CCAを行った。採掘されてからの経過年数が大きくなるにつれて、裸地面積の大きいグ ループからその他の種が優占する群集への遷移が見られ、その変化には窒素(TNや NH4)に関与した水質要因が、ある程度時間が経過した群中においては地下水位とその 変動が重要であることが示唆された。

今後、これらの結果から群集の発達における窒素量との関係や水位変動が重要なのか について考察を行う予定である。


地域生態系学講座セミナー index | 地域生態系学講座