地球環境科学研究科 植物生態学セミナー 2006-12-19 (火) 10:30

森林帯の境界域における優占樹種ブナの更新セーフサイトの出現とその貢献度

小林誠

 気候変動に伴う樹木種の分布適域のシフトが予測される中、そのメカニズムの動的理解には、異なる森林帯の境界域における樹木の群集動態に関する知見は重要である。

 日本の冷温帯の優占樹種ブナの優占群集は、北海道南西部の黒松内低地帯を分布フロントとして、ブナを欠いた冷温帯林にシフトする。本研究では、ブナの分布フロント地帯における群集構造の地理的推移と、優占樹種ブナの定着成功の観測や定着サイトの評価を行った。

 ブナを含む森林樹木群集の多様度は、ブナの分布フロントにおいて多様性の高い群集が形成され、ブナの隣接個体がブナではない確率がより高くなると考えられた。よって、分布フロントにおけるブナの侵入・定着・成長・個体群の拡大などの諸過程には、他構成種とのInteractionがより重要であると予想された。

 主要林冠構成種の中で、開葉スケジュールの早いブナの林冠下は春先早い段階に暗くなるが、ミズナラ、ホオノキなど開葉の遅い樹種の林冠下には、春先季節的に光環境が良好なサイト(フェノロジカルギャップ)が出現した。また、これらの林冠下は開葉完了後もブナ林冠下に比べ明るい状態が続いた。またブナ以外の樹種の林冠下は、ブナ実生・幼樹にとって母樹依存的な高い捕食圧からの回避が可能と考えられ、かつ個葉特性やシュート成長量から見ても高い成長パフォーマンスが見られた。

 これらのことから、分布フロントにおける多様性の高い樹木群集構造は、ブナへの更新セーフサイトの供給に正に寄与し、ブナの分布フロントにおける個体群の維持・拡大に機能的であると考えられた。


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