地球環境科学研究科 植物生態学セミナー 2006-12-26 (火) 10:30

Response of bog or fen species to nitrogen fertilization after peat-mining

西村愛子

 窒素を含む養分資源は、撹乱によりその有効性や空間的な分布パターンの変化を引き起こし、そこに生育する植物の植生パターンや群集構造に大きな影響を与える.しかし、その養分資源の変化が植生の遷移に与える影響についてはあまり知られていない.撹乱後、植生回復過程における遷移速度や方向性を決定する要因を明らかにすることは、植生回復のメカニズムを理解するうえで重要である.  一般的に、泥炭地湿原は窒素やミネラルなどの養分資源に乏しく、富栄養化に対して敏感に植生変化を引き起こす.泥炭採掘という大規模な撹乱後、その養分状態はもとの貧栄養な状態とは異なり、養分濃度が高くなることが報告されている.また、先行研究によりサロベツ湿原における泥炭採掘後、現在にいたる植生回復は認められたが、その回復過程は一方向性を示すものではなく、いくつかの異なる群集を形成していた.このような撹乱後の植生回復過程において、養分資源が遷移の方向性や速度の決定にどのように影響しているのかを明らかにするために窒素施肥実験を行った.植生回復過程の異なる低植被サイト・ミカヅキグササイト・ヨシ/ヌマガヤサイト・ミズゴケサイトの4サイトにおいて2005年から 2006年にかけて窒素を施肥、その後、各サイトにおける優占種の成長量と遷移速度の比較を行った.

 その結果、各サイトにおける優占種の反応は、根茎の発達したイネ科2種の成長量は窒素による影響が見られず、貧栄養環境の泥炭地に特有なミカヅキグサやミズゴケは窒素量の増加と共に成長量の減少が見られた.しかし他種が優占するサイトにおいてミズゴケは、自種が優占するサイトとはその反応が異なり窒素の増加に伴う単調な成長量の減少は見られなかった.以上のことから、それぞれの群集構造の違いが窒素に対する各種の応答に影響を及ぼし、この応答の違いにより遷移の方向性が決定されることが示唆された.


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