地球環境科学研究科 植物生態学セミナー   2009-10-13 (Tue) 16:30
(場所: 工学部 N301 )

マスティングのメカニズムの解明を目指して
ー気象要因および個体内資源量からのアプローチ

宮崎祐子

多くの植物種では、開花や種子量が著しく年変動し個体間で同調することが知られている。この現象は、マスティング、あるいは一斉開花結実とよばれ、古くから生態学者を魅了してきた。これまでの生態学的研究では、低温や乾燥などの気象要因と資源量状態などの内的要因の両者が、マスティングの引き金となり得ることが指摘されている。

しかし、これまでの生態学的研究には、いくつかの限界がある。(1) 開花量および結実量と気象要因の観測データのみを用いたアプローチでは、繁殖量と気象要因の相関を示すことはできるが、現象論的な説明に終止し、繁殖量の変動を引き起こす因子そのものを突き止めることはできない。(2)気象要因と内生要因がいかに花芽分化制御のシグナルとして統合され、最終的に花芽形成を引き起こすのか、その相対的重要性を検討できない。(3)マスティングには、花芽分化から種子成熟に至るまで、さまざまな要因が複雑に影響し、分化のタイミングに応じて同じシグナルが異なる働きを示す可能性がある。しかし、年単位という時間スケールでのモニタリングでは、特定の要因が与える効果を異なるタイミングで評価することができない。

一方、分子生物学分野では近年、モデル植物であるシロイヌナズナを用いた研究がめざましく進展し、開花時期制御の分子機構に関する知識が数多く蓄積されてきており、複数の情報伝達系を経て複雑に開花時期が制御される様が、分子レベルで理解可能になってきた。こうした分子生物学で蓄積された知見をマスティング研究へ応用することで、気象要因と個体内資源量がいかに花芽分化制御のシグナルとして統合され、最終的に花芽形成を引き起こし、また大量の種子生産が行われるのかを明らかにできるのではないかと考えた。

今回の発表では、これまでに行ってきた、植物体内の資源動態に着目した生理生態学的視点からの研究の紹介をします。それに加えて、今年度から取り組んでいる、マスティングのメカニズムに気象要因および個体内資源量がどのように関与するかについて、花成制御遺伝子の発現量を指標として評価する研究について紹介したいと思います。

参考:
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