地球環境科学研究科 植物生態学セミナー   2009-10-20 (Tue) 16:30
(場所: 工学部 N301 )

Tree size distribution

矢澤佳子

樹木の各サイズクラスにおける個体数を記述したサイズ分布は、森林によって異なり、その差異は資源競争、更新パターン、撹乱、環境条件などに起因することが知られている。そのため、森林の遷移過程や構造発達の把握や将来の森林構造の予測のために、サイズ分布の評価が行われてきた(e.g. Feeley et al. 2007)。

サイズ分布は森林によって異なるが、基本的な形は類似しているため、その根底には一般的な基本原則があると考えられてきた (Coomes et al. 2003)。初期の研究では、基本の発生メカニズムを深く考慮せずに分布を表すことに着目していたが、近年になり、メカニズムを考慮した具体的な数式化が行われるようになった。West et al. (1999) は、維管束植物が個体内の水輸送経路を最適化するようにフラクタルな枝分かれネットワークをもつという理論を提唱した。この理論では、植物高、葉量や枝重量などが個体サイズに従って表せる。この理論はWBE theoryまたはmetabolic ecology theory と呼ばれ、後に植物の維管束構造が植物個体全体の生理や個体群動態、群集生態にどのような効果をもつかということに着目し、発展してきた(Enquist et al. 1998, Enquist and Niklas 2001, 2002)。Enquist and Niklas(2001) はこの理論をサイズ分布に応用し、サイズ分布が-2のべき乗分布に従うとした。一方、サイズ分布が成長と死亡のデモグラフィック特性に従うとした動態平衡理論(Demographic equilibrium theory)を用いた検証も行われた(Coomes et al. 2003, Kohyama et al. 2003, Muller-Landau et al. 2006)。これらの理論に対し、近年までに蓄積された野外データを用いた検証結果がMuller-Landau et al. (2006)やWang et al. (2009)によって報告されたが、このサイズ分布をめぐる論争はいまだ終わっていない。

今回のセミナーでは、このサイズ分布を取り巻く現在の研究についてMuller-Landau et al. (2006)とWang et al. (2009)の野外データを用いた検証結果を中心にreviewしたい。

References
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