地球環境科学研究科 植物生態学セミナー   2009-12-7 (Mon) 10:30
(場所: 工学部 N304 )

サロベツ湿原におけるモウセンゴケ属2種の生態比較

保要有里

 ナガバノモウセンゴケ(以下ナガバ)は日本ではその生育地が限られ、かつ個体数も減少 しているため絶滅危惧種に指定されている。一方同属のモウセンゴケは、日本各地に広く分 布している。一般的にはナガバの方がより水位が高く光条件のよい環境を好み、湿原の排水 工事などによる土壌の乾燥化の影響を受けやすいと言われている。水位とナガバ・モウセン ゴケ個体群の動態について調べた研究が1報告あるが、操作実験的に比較を行った例はな い。そこで本研究では生活史初期の発芽、実生定着の段階において、水分条件や水位の違い がナガバの定着制限要因になり得るのかを温室、野外実験で確かめた。発芽実験の結果は、 水ストレスが高い状態ではナガバの方が高い発芽率を示した。実生定着実験では、温室・野 外ともにナガバの方が生き残る実生数が多く、移植後のバイオマスの増加は2種とも水位間 で差がなかった。このことから、調べた水分条件の範囲では、種子が十分に供給されればナ ガバの方がモウセンゴケよりも広い環境域に実生が出現できることが明らかになった。た だ、サロベツ湿原泥炭採掘跡地で2種の追跡調査を行い、サイズ分布を調べるとナガバは小 さい個体が少なく、種子繁殖による新規個体の定着がうまく行われていない様子である。種 子生産数はモウセンゴケの方が多いこと、栄養繁殖による新規個体の増加はナガバがわずか に多いことも分かったが、それが個体群内での動態とどう関連しているのかは、更に調査が 必要である。また水分条件以外の環境要因がより大きな定着制限要因となっているのかどう かも今後の課題である。


セミナー index | A 棟 7-8F の研究室