地球環境科学研究科 植物生態学セミナー   2009-12-14 (Mon) 10:30
(場所: 工学部 N304 )

泥炭採掘跡地におけるリター分解
−リター分解から見た炭素蓄積・栄養循環−

竹内史子

 リターの分解は土壌に有機体炭素や栄養塩を供給し、大気への二酸化炭素放出を制御する。リターは貧栄養な環境の主要な栄養供給源である。湿原は一般的に栄養塩類に乏しく、一次生産は窒素やリンに強く制限されている。特に泥炭湿原はリター分解速度が非常に遅く、土壌有機物蓄積量が多いため、炭素シンクとなっている。栄養供給は植物の炭素固定や微生物の有機物分解を制御するため、炭素循環は栄養供給に大きく影響され、土壌への炭素蓄積の推定には栄養循環の把握が不可欠である。

 大規模な撹乱を受けた生態系では、地上部・地下部の植生が失われ、その回復にともなうリターの供給や分解により、栄養循環は変化する。北海道サロベツ湿原は過去に大規模な泥炭採掘が行われ、採掘後の植生はその採掘年度の違いや局所的環境の差異により、異なる多年生禾本植物が優占している。中でも、裸地における実生定着の種特性により、ミカヅキグサ(Rhynchospora alba)、ヌマガヤ(Moliniopsis japonica)の順に侵入することが考えられている。本研究では、サロベツ湿原泥炭採掘跡地において、植生変化にともなうリター分解と炭素蓄積の変化を明らかにすることを目的とした。

 泥炭採掘跡地の裸地、ミカヅキグサ優占地、ヌマガヤ優占地にサイトを設け、各サイトにミカヅキグサ、ヌマガヤの両リターバックを設置した。そして、経時変化によるリター残存率とリター成分の測定、リターの刈り取りによるリター供給量の推定、環境要因(地温、照度、土壌含水率等)の測定を行った。

 結果、リター残存率に種間差はなく、サイト間で有意に異なった。リター供給はミカヅキグサよりもヌマガヤで多く、蓄積はヌマガヤで多かった。リターの残存率と窒素含有率に負の相関があった。


セミナー index | A 棟 7-8F の研究室