地球環境科学研究科 植物生態学セミナー   2010-02-04 (Thu) 10:30
(場所: 工学部 N303 )

阿寒山系アカエゾマツにおける気温依存的な生理的乾燥の成長遅滞効果

宮田理恵

樹木を中心とする森林生態系は温度・降水量の適した範囲で発達する。温度や降水量は、地理的スケールでは森林バイオームを、地域スケールでは樹木成長を規定する要因である。温暖湿潤な気候帯の森林生態系では、気象変動に対する樹木の応答が明瞭でないとされている。一方、亜高山帯に位置する森林生態系は、短い生育期間・低温・積雪・乾燥・風圧などにより厳しい生育環境下にあるため、樹木は気象変動に対して敏感に反応するだろう。

 近年の気候変動に対する森林生態系の応答を予測するため、過去の気象変動と年輪幅の変化との関係性から、樹木成長を規定する外的要因を探る研究が進んでいる。降水量の少ない地域では、降水量が多いと年輪幅が大きい。一方、阿寒山系雄阿寒岳のアカエゾマツを対象にした先行研究では、当年夏季気温が年輪幅に対して負の効果をもち、また、森林限界に近い個体群でその効果が大きいことが明らかになった。これらの結果は、高い夏季気温は樹木成長を促進することなく、生理的乾燥を引き起こして成長を抑制し、また森林限界が下降する可能性を示唆する。

 本研究では、高い夏季気温による生理的乾燥が樹木成長を抑制するという仮説を検証するために、材中の炭素安定同位体比(δ13C/δ12C)と年輪幅および気温との関係性を調べる。材中のδ13C/δ12Cは生理的プロセスの結果を反映し、乾燥が厳しいとその値が大きくなることがわかっている。つまり、夏季気温が高いときに小さい年輪幅と高い同位体比が見られると予想できる。


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