地球環境科学研究科 植物生態学セミナー   2010-02-15 (Mon) 10:30
(場所: 工学部 N304 )

Seedling establishment patterns of five perennial species influenced byfacilitation of tussock species in a post-mined peatland ecosystem

小山明日香

複数の植物種が同所的に生育しているとき、種間では正負の相互作用が働く。正の種間作用であるfacilitation(定着促進作用)は、厳しいストレス環境下でより強く作用すると考えられている。一方で、種間作用はストレス要因やその強度の時空間的変動及び近隣個体(受益者)の生活段階や種特性によって変化するため、複数種を対象とした長期的な評価が求められる。

泥炭採掘跡地では、採掘に伴う植生の消失により強光、乾燥、霜害、土壌侵食といった複数のストレスが生じ、植物の定着が著しく制限される。先行研究において、隆起した構造とリターの蓄積により形成される谷地坊主が、その周囲で後続種の定着を促進することが明らかになった。谷地坊主は、リターの被覆により乾燥・霜害を緩和し、構造により土壌侵食を防ぐと予想されるが、これらがどのように実生定着に作用するかは不明である。そこで、1)谷地坊主が後続種の実生定着を規定する要因は何か、2)谷地坊主による影響は時間的に変動するか、を4 年間にわたる5種実生の追跡調査により検証した。

その結果、谷地坊主周囲では、土壌移動が緩和され、全種で発芽実生数が多かった。実生は発芽直後の冬期に半数以上死亡したが、夏期の生存率は高く、乾燥年にのみ低下した。谷地坊主は、強光及び霜害を緩和したが、実生生存に対する影響はなかった。このように、谷地坊主は土壌侵食を緩和することで発芽個体数を増加させ、実生定着を促進させるが、発芽後に受ける季節及び年的に変動するストレスを緩衝しないため、定常的なfacilitation効果を示すようだ。


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