環境科学院 植物生態学セミナー   2013-01-29 (Tue) 10:30
(Room: A809 )

異なる光環境におけるカシワの形態変化
Morphological response of Quercus dentata in different light environment

Ai Hojo

Woody plants regenerate themselves through sexual and vegetative reproduction by plastically changing their traits according to surrounding environments. Quercus dentata is the species typical of Hokkaido coastal forests, but their habitats are now on the decrease due to clear-cutting. However, their preservation is important for biological diversity and disaster prevention.

Quercus dentata is shade-intolerant and short seed disperser, which inhibits seedling settlement.Sasa growing under the canopy also inhibits them to settle and grow.

The purpose of this study was to find out how the plastic morphological response to light would help Quercus dentata to regenerate in the deforested area. Plots with light gradients were set up in the deforested area of Zenibako coastal forest of Otaru city, Hokkaido, where growth and molphological traits were measured and recorded.

The results were,

The deforested area seems to serve as good regeneration area for Quercus dentata seedlings, but, invasive plants including sasa need to be managed properly for the further regeneration of Quercus dentata in the area.

木本植物の更新は、実生(有性繁殖)および萌芽(栄養繁殖)更新を環境に応じ適 応させることで可能となる。カシワは、天然海岸林として北海道に広範に分布し ていたが、護岸工事等により減少し、その生態系の保全は、生物多様性維持や減 災・防災の観点から重要である。しかし、カシワは耐陰性が低く、森林内での更 新は困難であり、短距離種子散布なため森林外への侵入・定着も遅延傾向にある と言われている。また、発達したササ植被は、ブナ科樹種の実生定着阻害要因で あるが、海岸林においても広範にササの定着が認められている。

そこで、本研究は、光環境とカシワの更新特性の関係を明らかにすることを目 的に行った。伐採履歴のある北海道小樽市銭函カシワ海岸林および周辺において、 樹高が胸高以下のカシワ個体を対象に、林内、林縁、草地の3生息地において成 長特性について調査した。まず、各生息地のカシワ個体の定着状況を把握し、全 個体の当年生シュート長と樹高を測定した。ついで、生息地間で、総葉面積、樹 冠面積、分枝パターンを主幹と萌芽幹で比較した。さらに、各個体の林冠部の垂 直位置をササ上とササ下に分け、樹高、葉面積、樹冠を分析した。結果は以下の 通り。

① カシワの定度は、林内で0.02本/m2, 林縁で0.28/m2, 草地で0.10/m2と林縁お よび草地で顕著であった。林内では最大樹齢は16年、林縁・草地では11年であり、 林内での成長は著しく低かった。

② 萌芽個体密度は、種子繁殖個体密度と同様に林縁・草地で高かった。これらの 萌芽個体の萌芽幹は種子繁殖個体と比較して、総葉面積は大きく、伸長成長も良 かった。

③ 林縁とササ下で当年枝の伸長成長は良かったが、一方で、ササ下の被陰された 個体は主幹を傾斜させ矮性化する傾向が認められた。樹冠面積は生息地間で差が 認められなかった。

④ 草地において、萌芽幹は、樹高、葉数、樹冠面積について被陰による差は無か った。

以上のことから、伐採等により形成されたカシワ林周辺の草地は、実生の定着 適地を提供し、定着し地上部を失ったカシワは速やかに萌芽幹を形成することで、 光資源を有効に利用していることが明らかとなった。しかし、ササによりカシワ 更新は阻害されるため、カシワ林再生には草地の適切な管理が必要である。


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