TRENDY SEMINAR (第90回)

日時 6月30日(水) 18:00 -
場所 北大地球環境A棟309(例年通りです)

「最適成熟サイズに関する数理モデル」

高田壮則 (北海道東海大学・国際文化)

 もし個体が誕生後すぐに成熟し繁殖を開始するならば、その個体は高い適応 度を得ることができるだろう。しかし、多くの生物がその戦略を採用せずに繁 殖を遅延させていることから、繁殖遅延の問題は生活史戦略の進化に関する重 要な問題の一つとして位置づけられてきた。1980年代前半からの精力的な 研究により、繁殖遅延に関する二つの仮説が提示されている。これらの仮説は、 それぞれ、繁殖が遅れると繁殖率が増加する場合、あるいは、繁殖齢と未成熟 期の死亡率が負に相関している場合に繁殖が遅延されるというものである。こ れら二つの仮説については、齢構造モデルによってそれらの仮説の可能性がす でに確かめられている。しかし、繁殖遅延を有利にするための条件が統括的に 調べられているわけではなく、またサイズ依存的な生活史を示す生物の場合に ついて解析された例も見られない。そこで、この講演ではサイズ構造モデルを 用いて繁殖遅延を有利にするための必要条件を統括的に求めた結果を報告する。 その結果、3種類の条件が求められ、前者二つは上記の二つの仮説に対応して いた。しかし、成熟後、個体の生存率が急激に減少する場合、あるいは、成長 率が減少する場合に繁殖遅延が有利となり、死亡率の上昇や成長率の減少の度 合いが大きくなればなるほど、最適成熟サイズが大きくなることがわかった。
 また、ある二枚貝ではサイズが小さいときには捕食圧が高いが、あるサイズ (Refuge size)を越えると捕食圧が激減するために、捕食圧が成熟サイズに影 響を与えていると考えられている。特に極端な例では、Refuge size と成熟サ イズが一致する二枚貝が見られる。同じ数理モデルを用いて、Refuge size と 成熟サイズが一致する理論的可能性を検討した結果を報告する。その結果、 Refuge size 前の死亡率が高いときには、成熟サイズはRefuge size と一致す ることがわかった。これは、繁殖に投資することによって成長率が減少するよ りも、Refuge size に早く到達し、捕食を避けることができるようになっては じめて成熟する最適戦略であると理解できる。

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問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
鈴木牧・加藤悦史・下野嘉子・谷友和
Email: makizoh@ees.hokudai.ac.jp
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