TRENDY SEMINAR (第107回)

日時 6月6日 (水) 16:30

場所 北大地球環境A棟803

「シウリザクラのクローン構造と無性繁殖をめぐるトレードオフ」

永光 輝義(森林総合研究所北海道支所)

樹木のクローン性には、ジェネットの延命と空間占有という意義があるが、クローン 生産による個体群維持への寄与は様々である。また、クローン生産はラメットの成長 やジェネットの有性繁殖の減少(無性繁殖とのトレードオフ)を引き起こすかも知れ ない。この発表では、根萌芽によってクローンを生産するシウリザクラのクローンの 空間分布とサイズ分布を示し、無性繁殖をめぐるトレードオフを検討する。クローン 判定にはマイクロサテライト(SSR)遺伝子型を用いた。この発表では、SSRの開発や利 用、解析についてもわかりやすく解説する。

苫小牧緑のトンネル200 x 115 mプロットにある188ラメット集団には5 SSR遺伝子座 の遺伝子型によって44ジェネットが認められた。ジェネット集団の近交系数は-0.069 で任意交配をしているとみなされた。各ジェネットのクローンは排他的に分布し、最 大直径50 mのパッチがみられた。また、未繁殖ラメット(5 < dbh < 10 cm)集団にク ローンがしめる割合は85%(n = 91)だった。ジェネット間にはクローン数に大きな変 異(0-32)があり、ラメットのサイズ分布はジェネットによって異なる。この変異の原 因として、クローン生産開始齢、クローン生産速度、最大ラメット(おそらくジェネ ットの創始ラメット)の死亡などが考えられる。

このクローン数変異を利用して、クローン生産と成長との資源分配型トレードオフを 検討した。未繁殖クローン(5 < dbh < 10 cm)の有無による最大ラメットの相対直径 成長率の違いを検定したところ、未繁殖クローンをもつ最大ラメットは相対直径成長 率が小さい傾向があったが、その違いは有意ではなかった(Mann-Whitney U test: p = 0.288)。dbh > 5 cmのラメットとは資源のやり取りがすでにないからかもしれない 。また、任意交配集団でクローンが排他的パッチをつくると自家受粉の増加により有 性繁殖成功が減少するかもしれない。有性繁殖成功は、親子関係が排除できなかった 、最大ラメットのdbhが10 cm以上小さいジェネットの数(最大子供数)で表した( parentage exclusion rate 0.953)。繁殖クローン(dbh > 10 cm)をもつジェネットは最大子供数 が小さい傾向があったが、その差は有意ではなかった(Mann-Whitney U test: p = 0.645)。有性繁殖成功の機会が少なくサンプル数が小さいためかもしれない。

今後は、これらのトレードオフを検出するため、苫小牧演習林のクレーンを用いて成長と有性繁殖をより詳しく調べようと考えている。クレーンのまわりの25ラメット集団では6ジェネットが確認され、そのうち2つは多数のクローンを持ち、のこり4つはクローンを持たないことがわかり、上記のクローン構造の再現性が確かめられている。

 

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北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
下野嘉子・谷友和・浦口あや
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