TRENDY SEMINAR (第112回)

日時 10月31日 (水) 16:30

場所 北大地球環境A棟804

撹乱跡地に侵入する木本植物と菌根菌

橋本 靖
(帯広畜産大学畜産環境科学科生態系保護学講座)

 菌根菌に代表される植物の根系共生菌類(カビ、キノコの仲間)は、様々な生態系で 生息するほとんどの植物にごく普通に見られ、吸収根のほとんどの部分が感染をうけていることもあります。つまり場合によって植物は、生育するために利用している水分や養分の多くを菌根菌の菌糸を通じて取り込んでいると言え、これら菌根菌類は植物の生長や群落の種構成などに強く関与していると考えられます。今回はこの菌根菌について、基礎的なことの解説を加えながら、今までに行った菌根菌の研究、特に撹乱跡地でのシラカンバ菌根菌に関するものを紹介させていただきます。

シラカンバは撹乱跡地などの植生が失われた場所に、他の樹種に先駆けて侵入し群落を形成するパイオニア種である。この撹乱跡地、特に表土の損失を伴う強度の撹乱を受けた場所は、水分、養分のストレスが森林などの環境に比べ大きいことが予想され る。ここに定着する植物にとって、水分、養分の吸収を促進するといわれる根の共生菌の存在は、定着、生長に大きな役割を果たしている可能性があると考えられる。そこで、このシラカンバが強度の撹乱を受けた場所に定着する際に、どの様な外生菌根がどれだけ形成されるのかを調べた。また、菌根菌以外の菌の定着についても同様に調べた。さらに、この結果明らかになった、この撹乱跡地での優占菌根菌の分離菌株を用いて、培地上でシラカンバ実生に接種することによって、これらの菌がシラカンバ実生生長に及ぼす影響を調べた。その結果、1) 撹乱跡地土壌の外生菌根菌量はシラカンバ定着が起こると多くなった、2) 菌根菌の種多様性は変化が大きく、実生定着後に特定の外生菌根菌に優占されることがあった。3) 条件によっては外生菌根菌以外に内生菌、特に褐色内生菌が多く存在していた。4) これら内生菌はカンバ実生根系において外生菌根菌と拮抗していると思われた。また室内での合成実験から、5) これらの場所で優占している外生菌根菌はシラカンバ実生生長を良くした。6) 内生菌はシラカンバ実生の生長を悪くした。また、7) 外生菌根菌が存在すると内生菌の実生生長への害が緩和された。これらから、強度の撹乱を受けた場所において外生菌根菌は、シラカンバ実生に菌根を形成し生長を良くし、また病原性を持つ内生菌の害から実生を守る働きをしていると考えられ、実生の撹乱跡地への定着、生長に重要な役割を担っている可能性が高いと考えられた。

(簡単に自己紹介させていただきますと、昨年の7月から帯広畜産大学に赴任いたしました。博士論文研究から主に菌根菌の研究をしております。当時のフィールドは岐阜県の高山市周辺で、シラカンバ二次林を対象にしておりました。こちらに赴任する直前までは、岐阜大学流域環境研究センターでポスドクをしておりました。その時のテーマは森林の炭素循環に菌根菌の及ぼす影響評価に関する研究です。)

 

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北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
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