TRENDY SEMINAR (第113回)

日時 11月28日 (水) 16:30

場所 北大地球環境A棟804

コナラ属の系統と雑種形成

石田孝英
(地球環境・生態遺伝学講座 博士課程1年)

 コナラ属は温帯を中心に300種以上をかぞえ、その社会的有用性から、生理学・生態学・遺伝学など様々な研究の材料として用いられてきた。またコナラ属は種間交雑を起こしやすいと言われており、近年は進化学者の大きな関心を集めている。日本でも交雑個体の存在はこれまでにも指摘されているが、その形態的検討も十分ではなく、さらに遺伝的解析例は世界でも数例をかぞえるのみである。また、交雑個体に対する食植生昆虫の反応は、交雑個体の適応度を評価する上でも重要であり、現在、注目を集めている。
 本研究では1)日本産コナラ属の分子系統の解明、2)形態計測に基づく交雑個体の同定と交雑個体に対する食植生昆虫の反応の調査、を目的とした。1)においては核のlegumin遺伝子、ITS2 (spacer region between 5.8S and 26S rDNAs)と葉緑体のtrnT-trnL intergenic spacerを用いて日本産コナラ属13種(イチイガシ、ウラジロガシ、オキナワウラジロガシ、シラカシ、ツクバネガシ、アラカシ、ウバメガシ、コナラ、ミズナラ、カシワ、ナラガシワ、クヌギ、アベマキ)の分子系統樹を作成し、2)では交雑帯と考えられた石狩浜のカシワ・ミズナラ計116個体と、ミズナラ・カシワのどちらか一方しか見られない3林分150個体での葉形質の比較、そして石狩浜調査個体でのキンモンホソガの採集と同定を行った。
 以上の調査から次のような結果が得られた。
1) 分子系統解析から得られたクラスターは、形態分類に基づくコナラ属の節とよく一致したが、節間および節内の系統関係は、用いた遺伝子・計算方法により変化した。葉緑体DNAと核DNAのlegumin遺伝子を組み合わせた結果からはクヌギ節とウバメガシ節が最初に分化したことが示唆された。
2) ミズナラまたはカシワのどちらか一方しか見られない林分をコントロール群とした正準判別分析からは石狩浜で11個体の形態的中間型が検出された。石狩浜からはカシワに特異的なキンモンホソガが2種、ミズナラに特異的なもの7種が確認されたが、これら形態的中間型を示した個体のうち6個体からは、カシワおよびミズナラそれぞれの特異的食植者であるキンモンホソガが採取された。コントロール群の2種は星状毛の密度と毛長により区別されたが、これらの形質は石狩浜の個体群においては有用な基準ではなかった。カシワとミズナラの雑種と考えられる個体に対するキンモンホソガの反応は種によって異なっていた。
 以上のことから石狩浜においてカシワ・ミズナラ間の雑種が存在することは確実だと考えられる。また核DNA、葉緑体DNAでの系統関係の不一致はコナラ属の交雑による種分化を示唆した。しかし石狩浜での調査は形態による交雑個体検出の難しさも示しており、遺伝的マーカーを用いた交雑個体・遺伝子浸透の検出が望まれる。キンモンホソガの交雑個体への反応は非常に興味深く、交雑個体の適応度、寄主と寄生者の共進化、を考える上で重要であると思われる。

 

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問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
下野嘉子・谷友和・浦口あや
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