TRENDY SEMINAR (第114回)

日時 12月19日 (水) 16:30

場所 北大地球環境A棟804

リター分解菌の多様性が林床のヘテロな養分環境形成に与える影響

宮本敏澄
(北大・農・森林資源生物学)

リター分解菌は、落葉や落枝を分解し養分へと還元することから、土壌中の物質 循環において重要な役割を果たしている菌類である。そのなかで担子菌類と呼ば れるグループには、リグニン分解能力を備える種が多く存在する。リグニンはリ ターの分解速度を 制限する難分解性の物質であることから、リグニン分解能力 を備えた菌類の生態系での役割が注目されている。
今回は、この担子菌類を中心としたリター分解菌の多様性が、林床の養分環境形 成に果たす役割を明らかにするために進めた野外調査と室内実験による一連の研 究から、以下の内容について紹介させていただく予定です。

(1)− リター分解菌群集の構造と分布様式−
北海道のトウヒ属の森林において、リター分解菌相について調査を行い、さらに 個々のリター分解菌種についてコロニーの分布と時空間変動を明らかにした。

(2)−リター分解菌のリグニン分解能力の評価−
トウヒ属の森林において、リター分解菌の種組成と種ごとの空間的出現頻度、お よび菌が野外で示す樹種や分解段階に対する選択性・拘束性を明らかにした上で、 菌のリグニン分解酵素生産性と分解能力を調べた。その結果、高頻度で出現した 複数種のリター分 解性担子菌類は、比較的強いリグニン分解能を備えているこ とが確認された。またこれらの菌の総合出現頻度からみて、リター分解過程にお いて空間的に高い頻度で影響を与 えていることが明らかになった。

(3)−リグニン分解能による養分放出量制御−
室内実験により、リター分解菌のリグニン分解能力および分解にともなう無機養 分の解 放量の関係を明らかにした。リグニンの分解能力と無機養分解放量は種 による差が大きく、分解後の水溶性イオン濃度は、リグニン分解率と正の相関関 係を示すイオンと負の相関を示すものが存在した。このことから菌のリグニン分 解能力は、リターの重量減少の他にリターからの養分の解放量を規定している可 能性が示された。

(4)−異なる種のコロニーが林床の養分環境形成に与える影響−
異なる種のコロニーの存在が林床の養分循環に与える影響を比較するために、野 外の3種の担子菌のコロニーにおいて、分解初期から2年間、リター中の養分量 変化の経時的な比較分析を行った。窒素やリンの全量や水溶性イオンの濃度の変 化から、異なる菌種のコロニーでは養分環境が異なり、植物にとって利用可能な 必須養分の還元速度に差が みられることが明らかになった。

ふるってご参加ください

問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
下野嘉子・谷友和・浦口あや
Email: yotti@ees.hokudai.ac.jp
URL: http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/
Tel: 011-706-2264