TRENDY SEMINAR (第115回)

日時 1月30日(水) 15:30
(通常より1時間早い開始ですので,ご注意ください)
場所 北大地球環境A棟803

ブナのMast-seedingはなぜ起こるのか

今 博計 (道立林業試験場道南支場)

Mast-seedingは植物個体群でみられる大量結実現象であり、森林を構成する 樹木では数年に一度、広範囲にわたって同調することが知られている。こう した豊凶現象は世界中の森林から報告され、その原因の解明に多くの努力が 注がれている。日本では豊凶現象を示す樹木としてブナ属、コナラ属、モミ 属などが有名であるが、なかでもブナは結実周期が5〜7年と長く広範囲に同 調することから、研究対象として取り上げられることが多かった。しかし、 これまでブナの豊凶現象を空間的・時間的にきちんと解析した事例は意外と 少なく、種子生産量が年変動するメカニズムや異なる樹木の間で空間的に同 調するメカニズムを検証するには十分でなかった。道立林業試験場道南支場 ではブナの結実をめぐる諸問題を解明するため、1990年から北海道南西部の ブナ林6ヶ所で、シードトラップを用いて開花結実現象を観察している。今 回は12年にわたる調査から明らかになった、ブナの豊凶現象のメカニズムに ついて紹介する。
これまでの調査の結果、ブナの豊凶現象は、雌花の開花量の年変動と、種子 食スペシャリストである昆虫(ブナヒメシンクイ)の個体数の密度、の2要 因によって生じていることがわかった。これは「開花量が少ない年をつくる ことで捕食者の密度を下げておき、翌年、捕食しきれないほど大量に開花す ることで、健全な種子を残すことができる」という捕食者エスケープ仮説を 支持するものであった。
また、雌花の開花量の年変動に関わるメカニズムを検討するため、林分の開 花量と前年の結実量との関係、開花量と気象要因(日平均気温、最高気温、 最低気温)との関係について解析してみた。その結果、開花量は前年の結実 量と密接な関係にあり、前年の結実量が50個/㎡以上の場合、翌年の開 花量は200個/㎡以下に抑制されるなど、大量の種子生産によって枯渇 した資源を回復するためには、一定の期間が必要であることが示された。ま た、林分の開花量と前年の4月下旬〜5月末の最低気温との間には高い相関 が認められ、最低気温が平年並みであれば開花量は多く、平年より1℃以上 も暖かい場合にほとんど開花しない関係にあることがわかった。さらに、大 量結実にとって重要である前年のほとんど開花しない年(最低気温が平年よ り1℃以上高い年)が訪れる確率を、渡島半島における過去26年間のAMeDAS データを基に計算したところ、6.4年/回の頻度となり、ブナの平均的な結実 周期5〜7年と一致していた。
次に、こうした雌花の開花量に関わる要因を詳しく探るため、雌花序痕を利 用して個体間の開花の履歴を調べた。その結果、個体レベルにおいても、開 花量には2つの要因(資源要因、気象要因)が関わっていることが示され、 これらが複合的に合わさることで、個体間の開花の同調やばらつきが生じて いると考えられた。

ふるってご参加ください

問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
下野嘉子・谷友和・浦口あや
Email: yotti@ees.hokudai.ac.jp
URL: http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/
Tel: 011-706-2264