TRENDY SEMINAR (第116回)

日時 2月27日(水) 16:30 -

場所 北大地球環境A棟804

水文化学環境とスゲ属植物の窒素利用様式からみた北日本湿原植生の生態学的特性

中村隆俊
(北大・農・北方森林保全学講座・北方生物圏フィールドセンター・雨竜研究林)

湿原保全のための基礎的研究として、北海道の湿原を対象に水文化学環境と植物の養分利用との関係を明らかにし湿原植生の分布機構を検討した。 湿原景観は、ヨシや大型のスゲが優占しミズゴケを欠くfenと、ミズゴケや矮小なスゲが優占するbogによって特徴づけられる。これらの植生が発達する北海道内の7つの低地湿原で、それらの植生変異を特徴づけるスゲ属植物6種の優占群落を対象に、水位、水質及び各種の窒素利用特性(窒素利用効率、窒素滞留時間、窒素生産性)との関係について生 態学的な整理・意義づけを行った。 水文化学環境要因による種の正準判別分析では、pHが最も重要な要因としてfen(弱酸性 )とbog(強酸性)の区分に、次いで土壌水の窒素濃度がfen内、bog内のスゲの生産性の違い に関連していることが明らかになった。このような植生と無機環境の関係は欧米の湿原に みられるpHや肥沃度に沿った植生分布パターンと良く一致した。 スゲ植物の生態生理特性の一つである窒素生産性は、pHや窒素濃度との関連性が認めら れなかったが、fenに生育する種の窒素滞留時間と窒素利用効率は、土壌水の窒素濃度と負相関を示し、他方bogでは窒素濃度に関わらず長い窒素滞留時間をもつ種が優占した。また、bogに生育する種は夏期植物体の窒素含有量がfenにおける種よりも全体的に低く、 低いpHによる窒素吸収阻害によって分布が制限されている可能性が示唆された。これらの ことから、長い窒素滞留時間を持つことが、植物の窒素吸収が制限されるbogと貧栄養なf enでの適応戦略として重要であることが明らかとなった。 生態生理特性に対するpHと窒素環境の関係は、それぞれの環境傾度に沿った湿原植生区 分に生態学的・因果的な解釈を可能とし、これらの知見が環境汚染に対する湿原植生の反 応予測や湿原生態系の総合的理解に貢献するものと結論づけた。

ふるってご参加ください

問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
下野嘉子・谷友和・浦口あや
Email: yotti@ees.hokudai.ac.jp
URL: http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/
Tel: 011-706-2264