Special Seminar

日時 2月20日(水)16:30
場所 北大地球環境A棟803

ブナの成熟個体における同化産物動態

倉田 はるな(京大農・森林科学)

樹体内各部位の同化産物動態にみられる定性的な特徴と、各部位の春期にお ける同化産物の推定減少量から、当年生シュート(一本の枝軸の当年成長部 分;以降シュートと略す)の成長に対するソース(同化産物の供給部位)を 検討した。定性的な特徴としては、(1)シュート成長の貯蔵養分への依存 度、(2)ソースとなりうる部位の可溶性炭水化物濃度の季節変化、(3) 幹木部の放射方向におけるソース部分、に注目した。
調査は、京都大学芦生演習林において、ブナとクロモジ(クロモジは(1)のみ) を対象におこなった。(1)(2)については、シュート、枝軸(1年枝、 2年枝、3年枝)、幹、根を各樹種3個体から年間5回採取し、各部位のデ ンプンと糖類濃度を分析した。デンプンは植物の主な貯蔵物質であり、デン プンと糖類を統一的に評価した可溶性炭水化物は炭水化物由来のエネルギー 量の指標となるものである。(1)では、シュート成長期間が短いブナと、 シュート成長期間が比較的長いクロモジを対象に、枝軸におけるデンプン濃 度の季節変化を比較した。(2)では、樹体内各部位における春期と晩秋の 可溶性炭水化物濃度を比較した。(3)については、成長錘によって樹皮か ら内側に約9 cmまでの幹木部を3個体から年間6回採取し、柔組織に含まれ るデンプン粒量を顕微鏡観察によって評価した。そして、幹木部の春期と晩 秋のデンプン粒量を放射方向の変化を考慮して比較した。春期における同化 産物の減少量を推定するために、春期と晩秋の可溶性炭水化物濃度に、幹木 部のソース部分を考慮して、仮想個体(DBH = 36.9 cm, Total biomass = 851.2 kg)のバイオマスを掛け合わせた。
同化産物動態の定性的な特徴を、以下に記す。(1)については、クロモジでは、 約2ヶ月のシュート成長期間中に枝軸でのデンプン濃度が減少から増加へと 転換したことから、シュート成長初期には貯蔵養分を消費し、後期には光合 成産物を消費してシュートが成長していると考えられた。一方ブナでは、約 1週間のシュート成長期間中にデンプン濃度の減少から増加への明瞭な転換 はなかったことから、主に貯蔵養分を消費してシュートが成長していると考 えられた。(2)については、枝軸、幹、根において、晩秋に比べ春期の可 溶性炭水化物濃度は低かったことから、全部位がシュート成長に対してソー スとして貢献していることが示された。また、春期と晩秋の濃度差は、ほか の部位に比べ根が最も大きかったことから、ソースとしての根の重要性が示 唆された。(3)については、晩秋に比べ、春期のデンプン粒量が少なかっ た木部部分は形成層から内側に3 cmまでの範囲であったことから (Mann-Whitney test)、形成層から内側に3 cmの部分がシュート成長に対し てソースとして貢献していると考えられた。
同化産物動態の定量的な評価によって得られた知見を、以下に記す。各部位の春 期における同化産物の減少量は、幹 (2.88 〜 5.33 kg) < 枝 (6.07 kg) < 根 (9.87 kg)の順に大きくなった。このことから、同化産物含有量の推 定方法に含まれる誤差を考慮しても、シュート成長に対するソースとして、 地上部だけでなく地下部も重要であることがわかった。

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問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
下野嘉子・谷友和・浦口あや
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