TRENDY SEMINAR (第117回)

日時 6月26日(水)16:30
場所 北大地球環境A棟803

植物個体群における遺伝子流動
ーマイクロサテライト遺伝マーカーによる推定ー

亀山慶晃(北大・地球環境・生態遺伝 PD)

 植物個体群は,ある世代から次の世代へと遺伝子が引き継がれることによっ て維持されている.種子植物の場合,遺伝子の移動媒体は種子と花粉であり, それらの散布及び定着の過程,即ち遺伝子流動を明らかにすることは植物個 体群の維持機構を考える上で極めて重要である.本研究では,マイクロサテ ライト遺伝マーカーを用いた親子分析,父性分析,血縁度の推定によって, 植物個体群における遺伝子流動を明らかにすることを目的とした.対象種は ツツジ科ツツジ属のホンシャクナゲで,調査は広島県中部の鎌倉寺山に設置 した150m×70mの方形区内でおこなった.

1)花粉の散布パターン
1998年に開花した18個体の開花フェノロジーを調査 し,開花時期,開花数の違いに着目して4個体の母樹から5つの果実(216 個体の種子)を採取した.マイクロサテライト遺伝マーカーを用いた父性分 析によって,果実から採取した種子の花粉親を特定し,各果実がごく少数の 花粉親によって結実していること,ホンシャクナゲの雄性先熟性を反映して, 後に咲いた花から先に咲いた花への一方向的な遺伝子流動が起きていること などを明らかにした.

2)実生バンクへの遺伝子流動
実生バンクへの遺伝子流動を明らかにするため,方形区内に成立している3つの サブ個体群の林床に10 m×10 mのプロットを1つずつ設置し,70個体ずつ実 生を採取した.親子分析の結果,実生バンクから5m以内の成木が非常に多く の実生を残していること,3つの個体群間の遺伝的交流は2%以下であること, 個体群内部における成木の繁殖成功度と樹高および実生バンクからの距離と の関係は,個体群構造の違いを反映して大きく変化することなどが明らかに なった.

2)血縁構造の形成と維持
各個体の遺伝子型から個体間の血縁度を推定した 結果,距離10 m以内の個体間の血縁度が著しく高く,90-100 m以上離れると 負の血縁関係を示すことが明らかになった.さらに,各サブ個体群における 血縁構造の強さは開花パターンの違いによって大きく変化しており,各開花 木から10 m未満の開花個体数が多いほど,個体群内部の遺伝的構造が強くなっ ていた.これは,多くの花をつけるほど花粉媒介者の探索行動範囲が狭くな り,隣接個体間での交配や自家受粉が促進されるためと推察された.


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問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
赤坂宗光(DC1)・塩寺さとみ(DC1)
Email: shiodera@ees.hokudai.ac.jp
URL: http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/
Tel: 011-706-2267