TRENDY SEMINAR (第121回)
日時 10 月 31 日 (木) 16:30
場所 北大地球環境 A 棟 804

樹木キャノピーにおける
窒素動態と炭酸ガス固定機能

小林元 (九州大学農学部附属北海道演習林)

植物群落の光合成は, キャノピー内における光強度と葉の窒素含量の分布に強く影響されている. キャノピー内における窒素分布はキャノピーの成長様式と密接に関連している. 例えば,新しい葉が古い葉の上に順次開葉するセイタカワダチソウでは, 窒素が下層葉から上層葉へ転流されることで, 窒素含量はキャノピーの上層葉ほど高くなる(Hirose and Werger 1987). 一方,キャノピー全層で一斉に開葉するサトウカエデでは, 生育期間中に窒素の転流は行われず,窒素含量は葉の形態 (Leaf mass per area)を変えることで調節される(Ellsworth and Reich,1993). このように,草本と落葉広葉樹では窒素分配を調節する要因は異なるが, 常緑樹のキャノピーでは窒素分配はどのように調整されているのだろうか. 本セミナーでは,スギ・キャノピーにおける窒素分布の時空間変動を動的にとらえ, 季節や葉齢による窒素含量の変動をキャノピー内における窒素動態の観点から考察する.

スギ・キャノピーの当年葉において, 窒素含量は成長期に長い時間をかけて増加し,成長休止期に低下した. 窒素含量のこのような季節変動は個葉発生の過程を強く反映しており, 光環境の変動とは対応していなかった. 一方,旧葉の窒素が新葉に転流する過程には光環境の影響が認められ, 光強度の低下の大きいキャノピー上層葉ほど多くの窒素を新しい葉に転流した. このようにスギでは, 草本が短い時間で体験する個葉生活史を長い時間をかけて具現しており, 樹冠構造の大きく異なる常緑針葉樹と草本といえども, キャノピー内の窒素動態に関しては両者に本質的な違いはないといえた.


問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
セミナー掛: 赤坂宗光・塩寺さとみ
URL: http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/2002/
Email: shiodera@ees.hokudai.ac.jp
Phone: 011-706-2267