TRENDY SEMINAR (第123回)
日時 12 月 17 日 (火) 16:30
場所 北大地球環境 A棟8階 804号室
(通常と曜日が違っていますのでご注意下さい)

亜高山帯林における林冠の不均質性が稚樹バンクに与える影響

加藤京子(北大・低温研)

亜高山帯常緑針葉樹老齢林では、林冠には常緑針葉樹が優占するが落葉広葉樹も混在し、下層には稚樹バンクが形成される。また、階層構造が発達しないために、稚樹は林冠状態の影響を直接受けるものと考えられる。このため、更新を考える上で閉鎖林冠における林冠の不均質性を考慮することは非常に重要なことだと考えられる。本セミナーでは、亜高山帯常緑針葉樹林の更新維持機構を解明することの一環として、主に光環境の違いに着目して、異なる林冠状態(常緑樹林冠、落葉樹林冠、ギャップ)下における稚樹バンクの構造、稚樹の動態・形態的特性についてモミ属のオオ シラビソとシラビソを中心に調査をおこなった。以下に結果を述べる。

  1. 林冠の不均質性と稚樹バンクの構造
    DBH5cm以上の高木性樹種に関しては、常緑針葉樹が優占しており、落葉広葉樹は約10%を占めていた。常緑樹林冠下、落葉樹林冠下、ギャップ下の順に稚樹の光環境が良好になる傾向が見られた。どの林冠状態下でも稚樹バンクではオオシラビソ稚樹が 優占していたが、明るくなるにつれてシラビソ稚樹の割合が増加した。種構成は林冠 状態によって異ならなかったが、稚樹バンクのサイズ構造は林冠状態によって異なった。
  2. 稚樹バンクの動態
    常緑樹林冠下と落葉樹林冠下の一部では枯死率が低く、サイズ依存的な傾向は見られなかった。ギャップ下と落葉樹林冠下の一部では枯死率が高く、サイズ依存的な枯死が見られた。加入率は、常緑樹林冠下、落葉樹林冠下、ギャップ下の順に値が小さくなる傾向がみられた。ギャップ下ではシラビソ稚樹の方が樹高成長が良好であった。
  3. モミ属稚樹の樹冠形と稚樹間競争
    モミ属稚樹では、相対樹高成長と樹冠深度割合(樹冠深/樹高)に正の相関関係が見られた。また、オオシラビソとギャップ下のシラビソの枯死稚樹は、生残稚樹よりも樹冠が浅かった(樹冠深度割合が小さかった)。このため、樹冠深度割合はモミ属稚樹の活力の指標となると考えられた。ギャップ下では、局所密度と樹冠深度割合に負の相関関係が見られ、稚樹間に一方向的な競争関係があると考えられた。

以上の結果を総合して、以下のことが示唆された。

  1. 常緑針葉樹林における落葉広葉樹の存在は、稚樹バンクの構造、稚樹の動態などに影響を与えると考えられた。
  2. オオシラビソ稚樹よりもシラビソ稚樹の方が陽樹的であることが示唆された。

問い合わせ先
北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
セミナー掛: 赤坂宗光・塩寺さとみ
URL: http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/2002/
Email: shiodera@ees.hokudai.ac.jp
Phone: 011-706-2267