TRENDY SEMINAR (第125回)
日時 2003 年 02 月 26 日 (水) 16:30
場所 北大地球環境 A棟8階 A804号室

3次元樹木モデルをつかって,
開葉フェノロジーとシュート伸張方向が
稚樹の耐陰性に与える影響を評価する

梅木清(北海道立林業試験場)

 これまで, 植物(落葉性樹木を議論の対象とする)の耐陰性は, 主に個葉レベルの光 - 光合成曲線の特徴によって理解されてきた。 しかし, 一方で, 開葉フェノロジーやシュートの角度と耐陰性との関係も指摘されてきた。 たとえば, Kikuzawa et al.(1996)は, 順次開葉する樹木のシュートの角度は鉛直に近く, 一斉開葉する樹木のシュートの角度はより水平であることを指摘し, 前者の組み合わせは耐陰性の低い樹木で, 後者の組み合わせは耐陰性の高い樹木で観察されるとした。

 なぜ, これらの開葉フェノロジーとシュート伸張方向の組み合わせが耐陰性と結びつくのかは, 光合成速度の加齢に伴う変化や葉の間の相互被陰などとも関連したやや込み入った理屈によって説明されている(ここでは, 詳細は省略)。 しかし, この理屈が実際に機能するかどうかは, 十分評価されてこなかった。 そこで, 3次元樹木モデルを使いこの問題を検討した。 モデルに組み込んだ, 樹木の構造・機能は, 連続・分枝するシュートによる3次元的な樹木構造, 開葉・シュート伸張のフェノロジー, 光 - 光合成曲線, 最大光合成速度の加齢にともなう減少などである。 モデルで評価したのは, 異なる光強度のもとでの樹木個体の光合成量である。 モデル計算に当たっては, できる限り現実の樹木(ブナとオオバヤシャブシ)のデータを使用した。

 モデル計算の結果, 順次開葉と鉛直に近いシュート角度の組み合わせは被陰された環境で効率のよい光合成をし, 一斉開葉と水平に近いシュート角度はの組み合わせは 被陰されない環境で高い光合成量を実現することがわかった。

 また, 開発したモデルはまだ未熟な点はもっているが, これを使用することで, 樹木のシュートレベルの構造・機能を物質生産の量によって評価できると考えている。


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北海道大学大学院地球環境科学研究科地域生態系学講座
セミナー掛: 赤坂宗光・塩寺さとみ
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