Trendy セミナー   2004.07.08 (木) 16:30   北大・大学院地球環境・A804 号室

広葉樹の葉の形態、力学的性質はどのように形成されるのか

齋藤 隆実 (阪大・院・理・生物科学)

広葉樹にはさまざまな形態、力学的性質をもつ葉がある。例えば、常緑樹の葉は落葉樹より厚くて硬い。また、落葉樹では同じ個体内でも樹冠上部の陽葉は下部の陰葉より厚くて硬い。このような葉の形態的特長には、生育環境で光合成生産を最大にする役割があると考えられる。しかし、葉の多様な形態を生み出すしくみについては、まだ十分に議論されていない。そこで、展葉期における葉の成熟過程に着目した。

展葉期は葉の形態や生理的性質が短期間に大きく変化する。一般に植物細胞の体積増大は吸水と細胞壁の不可逆的伸展によって調節されるので、葉の水分特性が葉の形態形成に深く関与するはずである。ところが、展葉期の葉の水分特性は季節変化の一部として記述されているのみである。本研究では、葉の成熟過程における水分特性の変化を関係する諸性質とともに詳しく明らかにした。

今回は葉の形態形成に関する二つの研究を紹介する。一つ目はブナ科コナラ属で常緑性のアラカシの葉と落葉性のコナラの葉の成熟過程の比較をした。測定の結果、アラカシの葉がコナラの葉より見かけ上硬いのは厚いからで、それぞれの種で葉が成熟に伴って硬くなるのは密度が増大するからであった。展葉中は細胞の吸水に関する性質は比較的安定に保たれていた。一方で、この時期に細胞壁の力学的性質は大きく変化し、葉の形態形成を調節することが最近明らかになってきた。

二つ目はミズナラの陽葉および陰葉と、陽葉に人為的に水ストレスを与えた処理葉についての成熟過程の比較をした。光と水分環境が葉の形態、水分特性に与える影響を検討した。その結果、葉面積は展葉中の水分環境の影響を強く受けた。一方、葉面積重や葉密度は展葉後の光環境の影響を受けた。展葉中は細胞の吸水に関する性質はやはり安定に保たれていた。処理葉の水分特性は陽葉と大きく変わらず、水分ストレスは気孔の閉鎖によって回避されていた。


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北海道大学大学院地球環境科学研究科 地域生態系学講座