Trendy セミナー   2005.01.24 (月) 15:00-17:00   北大・大学院地球環境・A804 号室

[Trendy & チャランケ・セミナー合同セミナー]

原登志彦 / 小泉逸郎
原 登志彦 15:00−16:00
「寒冷圏における環境ストレスと北方林の更新・維持機構 −カムチャツカの森林を中心に―」
小泉逸郎 16:00−17:00
「河川性サケ科魚類のメタ個体群動態:野外調査、DNA解析、理論モデルの統合」

2005年1月24日(月) 15:00−16:00

寒冷圏における環境ストレスと北方林の更新・維持機構
−カムチャツカの森林を中心に―

原 登志彦

北海道の北そしてロシア・カムチャツカの西側に位置するオホーツク海は、北半球で最も低緯度の季節海氷域として知られている。そのカムチャツカの氷河やオホーツク海において気候変化の影響が近年徐々に現れてきている。例えば、海氷量の減少、年平均気温の上昇、氷河の縮小、年間降水量の減少などである。そのような環境変化に最も大きな影響を受けるのは北方林(北緯45度〜70度にかけて存在する森林、世界の全森林面積の約1/3を占める)であろうといわれているが、その詳しいメカニズムはまだ解明されていない。そこで、我々は、カムチャツカにおける北方林の成立・維持機構や植生動態を北方林樹木の環境ストレス応答の観点から解明することを目指し研究を行っている。さらに、カムチャツカをはじめとした北方林で森林火災(その多くは人為的)が急増しているが、北方林の動態と水、炭素等の物質循環に与える森林火災の影響を解明し、北方林の環境保全にも役立てたいと考えている。北方林が存在する寒冷圏は、低温と乾燥を特徴としており、我々はそのような環境条件下で増幅されると予想される光ストレスに特に注目して研究を進めている。例えば、成木の枯死によって形成される森林のギャップ(空所)に幼木が定着し森林が更新(自然再生)すること(ギャップ更新)が熱帯や温帯ではよく知られているが、カムチャツカの北方林ではギャップ更新ではなく、成木の樹冠下に幼木が定着し森林が更新すること(樹冠下更新)を我々は発見した。このような北方林の幼木の生存戦略に光ストレスがどのように関与しているのかを、我々の JST CRESTプロジェクト「寒冷圏における光ストレスと北方林の再生・維持機構」で現在行っている研究を中心に紹介したい。そして、近年の環境変動が北方林の植生動態・変化に及ぼすと予想される影響などについても、我々が現在開発している「大気―植生相互作用モデルMINoSGI」を用いた研究を紹介したい(21世紀COEプログラム「生態地球圏システム劇変の予測と回避」(代表:池田元美(北大・地環研))の分担課題)。例えば、今後、この地域の乾燥化がさらに進めば、光ストレスがさらに増幅される結果、森林火災後の森林の更新(自然再生)は非常に困難なものになると予測される。


2005年1月24日(月)16:00−17:00

河川性サケ科魚類のメタ個体群動態:野外調査、DNA解析、理論モデルの統合

小泉逸郎

本講演では、演者が大学院時代から継続調査を行なっている河川性サケ科魚類(オショロコマ)のメタ個体群構造およびその動態について、これまでに得られた知見を紹介する。前半では、大規模長期野外調査とDNA解析を相補的に取り入れることにより、野外個体群における詳細な個体群構造が把握できることを示す。後半では、これらのデータからメタ個体群動態モデルを構築し、河川生物の保護管理に応用した事例を報告する。

本論への導入―北海道中央部を流れる空知川水系は、比較的大きな本流とそれに直結する多数の小支流によって構成される。本水系に生息するオショロコマは、本流では産卵を行なわずこれらの支流でのみ産卵を行なう。予備調査から、大部分の支流では産卵メス数が10−20個体と非常に少なく、1−2ペアしか産卵していない支流さえあった。個体群統計学では、このような小さい個体群では人口学的ゆらぎや環境の確率的変動により絶滅リスクが急激に高まることが知られている。つまり、ひとつの支流だけを考えると、個体群がいつ絶滅してもおかしくないのである。そこで、空知川水系のオショロコマが、どのような個体群構造を呈し、どのようなプロセスを経て長期間存続しているかを明らかとするために、以下のような視点から研究を行なってきた。本講演ではこれらの内容について話題提供する。

前半:空知川水系におけるオショロコマの個体群構造
後半:保護管理への応用
キーワード

Trendy Seminar http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/2004/
世話役:森洋祐・西村愛子
email:yomori*ees.hokudai.ac.jp(もり)
 aiai*ees.hokudai.ac.jp (にしむら)
Phone:011-706-2264
Facsimile:011-706-4954
北海道大学大学院地球環境科学研究科 地域生態系学講座