Trendy セミナー   2005.02.23 (金) 16:30   北大・大学院地球環境・A804 号室

風媒花植物における性比配分戦略
―サイズ依存適応度仮説の諸問題と新たなモデルの提案―

真坂一彦 (北海道立林業試験場)

 風媒花植物における性表現には、あでやかな花弁をもつ動物媒花植物に劣らず大きな個体間差がある。この風媒花における性表現の個体間差を説明するために、これまで多くの研究者がサイズ依存適応度仮説を採用してきた。すなわち、個体サイズと性比(雄比)のあいだには正の相関があるはずという仮説である。この仮説は主に次の4つの考えに依拠している。1)大気は花粉で飽和することがないため、雄に投資するだけ適応度は上がる(サイズが大きい個体は繁殖資源も多い傾向があるため、サイズの大きい個体ほど雄に投資する)、2)サイズ(丈)が大きい個体ほど遠くまで花粉を散布できるため、雄に投資すると適応度が上がる、3)小さな個体は周囲の大きな個体によって花粉散布が妨げられるため、小さな個体は雄に投資すると適応度が下がる。4)種子の散布能力は花粉の散布能力より低く、そのため局所資源競争が生じ、それゆえ雌への過剰な投資は適応度を下げる。しかし、これらの考えには、風媒花植物の進化的背景を考慮したものがないうえ、現実の現象とは相容れないものや矛盾もある。実際、個体サイズと雄比のあいだに正の相関が認められなかったという報告は多い。

 今回の研究では、風媒花植物の進化的背景に考慮し、さらには風媒花花粉の挙動も記述したゲーム・モデルを作成した。このモデルを解析した結果、個体の性表現が繁殖投資量の増加にともない、完全雌相(雌花ばかりを着ける)、完全雄相(雄花ばかりを着ける)、雄一定相(雄を一定数作り、残りの資源は全て雌に投資)になることを予測した。これまでの比較し得る研究報告を検討した結果、今回作成したモデルが予測する傾向は、現実の性表現をうまく説明していると考えられた。また、仮想個体群を作って数値解析した結果、繁殖資源量の個体間差が大きい時、または風媒効率が低い時に上述の3相が出現する傾向があり、逆に繁殖資源量の個体間差が小さい時、または風媒効率が高い時に雄一定相のみが出現する傾向があることが示された。一般に、植物の繁殖資源量は個体間差が大きく、また風媒花の受粉効率はきわめて低い。それゆえ、上述の3相が出現することと現実の風媒花植物の性質は、十分に対応していると考えられる。


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北海道大学大学院地球環境科学研究科 地域生態系学講座