Trendy セミナー   2006-02-03 (金) 16:30   北大・大学院地球環境・A804 号室

ナラ類の雑種形成に対するタマバチ群集の反応

伊藤正仁
(学振特別研究員/森林総研北海道支所)

 植食性昆虫に対する植物の感受性は,種間交雑に由来した遺伝的勾配に沿って変化することが報告されている。その結果として,植食性昆虫群集の構造は,植物の交雑由来の遺伝的勾配に沿って変化するものと予想される。このような植物の諸特性にもとづく植食性昆虫の群集動態は,同一栄養段階に属する群集構成種間の相互作用を推定する上でも有効な情報となりうる。一方で,自然条件下で植物の種間雑種が形成される交雑帯は,生物に多様なハビタットを提供する“生物多様性の中心(center of biodiversity)”として注目されている。交雑の繰り返しにより植物の遺伝的変異は大きくなるため,交雑帯における植食性昆虫群集の構造は,そのような植物の遺伝的性質にもとづいて明らかにする必要がある。

 北海道の一部地域では,ミズナラとカシワが同所的に生育しているが,これら2種のナラ類は,種間雑種を形成することが知られている。またナラ類は,多種から構成されるゴール(虫えい)形成性のタマバチ群集の寄主植物である。加えて,植物組織の改変を伴うゴール形成は,植物の特性,とくに遺伝的性質に大きな影響を受けると考えられる。したがって,ミズナラ・カシワ−タマバチ系は,植食性昆虫群集の構造を,交雑由来の植物の遺伝的性質にもとづいて明らかにする上で好適な研究対象である。本セミナーでは,ミズナラ〜雑種〜カシワの遺伝的勾配にもとづいた,タマバチ群集の構造について,(1)ミズナラ母樹家系を用いた移植実験による調査結果,および(2)自然条件下での交雑帯における調査結果を紹介する。


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北海道大学大学院環境科学院 植物生態学