Trendy セミナー   2009-10-09 (金) 10:30   北大・大学院地球環境 工学部講義室 B11*

植物のすみずみにまで水を送る

種子田春彦 (東京大学大学院理学系研究科)

陸上植物は蒸発散によって絶えず体内から大量の水分を失う。失った量の水を補えるように、植物は常に水源である土壌から植物体内を通って、枝のすみずみにまで、「充分な量の水」を「安全に」運ぶ必要がある。植物体内の水の輸送経路には、両端にある根と葉で柔組織を通る部分と大部分の距離を維管束組織の導管や仮導管を通る部分があり、これらの経路を水が通る際には抵抗(通導抵抗)がかかり、スムーズな輸送を妨げる。さらに、導管や仮導管は気泡が入ることで水輸送が阻害されるエンボリズムという現象の起きるリスクを常に抱えている。今回のセミナーでは、これら、潜在的に植物が抱える水分生理に関する問題に対する植物の適応戦略についていくつかの研究例を示す。

  1. 個体内の通導抵抗の比率から見た植物の適応戦略
    植物の通導抵抗のうちわけをみると、多くの植物で根のそれは茎や葉よりも2倍以上大きい。この理由は、カスパリー帯を避けるためにおきるシンプラスト輸送のために根の通導抵抗が大きくなるためであると説明されてきたが、適応的な意義については誰も言及していない。私たちは数理モデルを用いて、植物体内の水輸送を考慮したときの最適な根、茎、葉の物質分配を求め、現実と比較することでその意義を考察した。
  2. エンボリズムへの安全性と植物の適応戦略
    エンボリズムが起きる原因として2つが知られている。ひとつは乾燥により導管液に強い陰圧が掛かり、周囲から導管の内部に空気を引き込んでしまうというものである。もうひとつは導管液が凍結と融解を繰り返すことで導管内に気泡が生じこれが原因となるものである。近年、どちらも太い導管を含む木部を持つ茎では致命的なレベルのエンボリズムが起きることがわかってきた。この太い導管を持つ植物が、エンボリズムが起こり易い乾燥地帯または寒冷な地域でどのような適応戦略を示しているのかを考えていく。
参考文献
*注: セミナーを実施する部屋「工学部講義室 B11」 の位置は, 工学部正面玄関を直進し、 自動販売機と喫煙所の間を過ぎたら左側にあります.
現在、植物生態グループは耐震補強工事のため工学部に疎開中です。 来年3月までは Trendy seminar を工学部にて行います (北大工学部建物案内図)。 なお、院生室はQ364、教員室はR棟3階にあります。
(このセミナーは、平成21年度文部科学省グローバルCOEプログラム 「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」 (url) の支援を受けた人材育成自由企画として実施しています)

Trendy Seminar http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~trendy/2009/
世話役:宮田理恵
email:miyamiya@||@ees.hokudai.ac.jp
Phone:011-706-2267
Facsimile:011-706-4954
北海道大学大学院環境科学院 植物生態学