Trendy セミナー   2009-11-27 (金) 16:30   北大・大学院地球環境 工学部N301 (案内図)

環境が生み出す葉の多様性:形の機能と適応のメカニズム

野村尚史 (国立科学博物館 非常勤研究員)

「葉の形態」は、 種や生態型を象徴する重要な分類形質であるとともに、ガス交換な ど生理的な特性を強く規定するため、環境適応の中で選択・固定された表現型質と考 えられる。

しかしながら、「適応的な形質である」ことを仮説提示に終わらせずに解明するには、 1)表現型の系統的背景を示し、2)可塑性も含めた形態と生理特性の比較によって構造 と機能の関連性を明らかにし、さらに3)個体群生態学的に表現型の選択維持されるメ カニズムを解析して、統合される結果が「最適な形態が環境に応じて選択されてい る」ことを示す必要がある。

本講演では、キク科のツワブキの生態型を材料に、葉形態が環境適応として進化・維 持されてきたことを、分子系統学・形態学・生理生態学・個体群生態学の諸分野横断 的に示す。琉球南部のツワブキには、渓流型(細葉)・陽地海岸型(小型丸葉)・林 床型(大型丸葉)という、葉の形態の異なる生態型が認識される。分子系統解析によ ると、これらの生態型が比較的近年に分化し、現在でも頻繁な遺伝子交流を行ってい ると推定されたことから、生態型間の形態変異は、環境による選択圧を常に受けるこ とで維持されていると考えられる。次に、野外調査と共通圃場試験で比較を行ったと ころ、各生態型の表現型が持つ可塑性(馴化能力)には幅があり、それぞれの生育環 境で最適な生理特性を示すことが分かった。そこで、微環境が連続的に変化する立地 し、異なる表現型の共存する集団を用いて、環境経度上の遺伝構造と表現型の分布を 個体群動態に沿って解析したところ、環境による選択圧によって集団内変異が維持さ れていると考えられた。これらの結果から、細葉・陽葉・陰葉という葉形態の種内変 異が、渓流・海岸・林床という環境への適応選択の帰結であると解釈された。

(このセミナーは、平成21年度文部科学省グローバルCOEプログラム 「統合フィールド環境科学の教育研究拠点形成」 (url) の支援を受けた人材育成自由企画として実施しています)

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世話役:宮田理恵
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北海道大学大学院環境科学院 植物生態学