_____updated: 27 February 2017

甲山隆司_____Takashi S. KOHYAMA

    専門:
    植物生態学・群集生態学

    所属:
    北海道大学・大学院地球環境科学研究院
    環境生物科学部門・陸域生態学分野

    教育担当:
    北海道大学・大学院環境科学院
    生物圏科学専攻・植物生態学コース

    研究者IDs:
    ResearcherID: A-4031-2012
    ORCID ID: 0000-0001-7186-8585

 冬は懲りずにダケカンバ樹形調査
(喜茂別岳 25 Feb. 2017)

研究室アドレス

〒060-0810 札幌市北区北10条西5丁目 北大・地球環境・A棟A704号室
Fax: 011.706.4954
Tel: 011.706.2260 
Email: こちら


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小径木が少ない樹種はパイオニア的?

    多くの樹種からなる自然林のなかで、未成熟小径木の相対的な密度が低い樹種は、耐陰性の低いパイオニア性樹種なのでしょうか?このよくある説明(遷移ニッチ理論)に対して、拡張階層理論(Kohyama-Takada 2012)では、耐陰性と無関係に、高い小径木層密度を高くする種(多く加入するが、死亡率が高く個体サイズ成長速度が低い)に対して、低い小径木密度を維持する種(加入率は低いが、死亡率が低く成長速度も高い)が安定的に共存できる、と予測します。

    対立するふたつの理論を検証するために、マレーシア熱帯多雨林の370樹種を対象に、サイズ分布と成長・死亡・加入特性を調べました。その結果、階層理論の予測する関係が認められ、遷移ニッチ的な分化は付随的であることがわかりました。ふたつの説明は排他的ではなく、森の水平方向と垂直方向の光の非均質性が、多種の共存をもたらしていることが判ってきました。
    論文はこちら:Kohyama et al. 2015. Am. Nat. 185: 367–379.


研究の興味と概要

林木集団の動態と多種系の維持機構

    八ヶ岳の亜高山帯シラビソ・オオシラビソ林、南九州の照葉樹林、東南アジアの熱帯雨林と、森林を対象にしながら、より複雑な、多様性の高いシステムに対象を広げてきました。だんだん奥地に追いやられつつある原生林を相手に、驚くべき自然の構築物とその多様性を研究できるよろこびは、かけがえのないものです。

    森林を構成する樹木の生活を理解するためには、樹木の生理的・形態的特性に加えて、樹木の三次元的な分枝構造や、その集合としての森林構造の把握が必要になります。森林の垂直構造や更新動態に注目して、さまざまな森で共存している樹木種間の関係を解析してきました。 野外調査データの分析にもとづいて、樹木の樹形生長や集団のサイズ分布動態のモデル化も手がけてきました。光資源をめぐる関係で、森林の動態と多種間の共存の機構が説明できるという「森林構造仮説」を提出しました(Kohyama 1993, J. Ecol. 81: 131-143)。 この仮説は、従来の生産生態学と個体群生態学、そして群集生態学を統合する新しい観点を提供するものです。 樹冠による光資源の先取り関係を考慮し、この抑制効果が、全種込みの一方向的なサイズ重み付けした密度に比例すると仮定することによって、多種の安定共存を説明することができます(下図は12種の安定共存の例)。

    パッチ齢構造と樹木サイズ構造を持つ12種の胸高断面積合計の時間経過
    赤・黄・緑はそれぞれ低・中・高耐陰性の種群;色が薄いほど上層まで成長できる林冠種
    (Kohyama 2006、 Ecol. Res. 21: 346-355)

    しかしながら、森林構造仮説のベースとなる、樹木個体のサイズなどを連続変数として表すモデルでは、種間共存をもたらすメカニズムを解析するには不向きです。 そこで、森林構造を上下2層から成ると単純化して、競争方程式のような連立微分方程式に還元して解析し、共存機構の「階層理論」を提唱しました(Kohyama & Takada, 2009, 2012)。 階層理論は、太陽光をめぐる競争のもとでは、大きくなる「林冠種」は、繁殖能力や耐陰性において優れた「下層種」の侵入を許さざるを得なくなるような条件を明らかにします。

    私たちの研究室では、枝先のシュートスケールから、個体の樹冠構造のスケール、さらには集団レベルでの成長・死亡・加入過程のスケール、と、多面的なスケールから、共存する樹種それぞれの持つ特性を洗い出し、解析しています。こうしたフィールド研究が、階層理論や、光合成産物のシュート間分配に基づく林分構造発達シミュレータ PipeTree(Kubo & Kohyama, 2005, Ecol. Res. 20: 255-269)のようなモデル研究と相互に発展していくような手法を用いて、さまざまな未解明な謎を解明しつつあります。

    ゆっくりと変化していく森林というシステムの理解には、永久調査区の設定と追跡が欠かせません。各研究者・グループが個別に進めてきた内外の永久調査区の観測データを持ち寄って、データベースを作り、広域のスケールでの森林の変化を比較解析していこうと、有志が集まって2001年からPlotNetを立ち上げました。リモセン研究者や生態系モデリング研究者など「ユーザ」側も加わって、さらに活動が活発になっています。


略 歴

  • 1954___ 10月30日 東京生まれ
  • 1978___ 東京都立大学理学部生物学科卒業
  • 1980___ 京都大学大学院理学研究科植物学専攻修士課程修了
  • 1983___ 京都大学大学院理学研究科植物学専攻博士課程修了、理学博士
  • 1983___ 日本学術振興会奨励研究員
  • 1985___ 鹿児島大学教育学部講師
  • 1987___ 鹿児島大学教育学部助教授
  • 担任した鹿児島大学卒業生のリスト
  • 1991___ 京都大学生態学研究センター助教授
  • 1991-1992___ ケンブリッジ大学植物学教室客員研究員 
  • 1992___ 日本植物学会奨励賞受賞
  • 1994___ 北海道大学大学院地球環境科学研究院教授(現職)
  • 1998-1999___ ハーバード大学集団進化生物学教室Bullard客員研究員
  • 報告1 (Jan. 1999) / 報告2 (Jul. 1999)
  • 2000-2008___ 地球フロンティア研究システム生態系変動予測研究領域 兼務
  • 2014___ 日本生態学会賞受賞

OBたち

博士号を取得したみなさん
和田直也・鬼丸和幸・成田憲二・高橋耕一・ 相場慎一郎・明石信廣(@京大理学研究科)・清野達之・ 西村貴司・鈴木牧・加藤悦史・宮本和樹・Joeni Rahajoe・ 浦口あや・志水顕・塩寺さとみ・庄山紀久子・小林誠・ Edi Mirmanto(論博)・飯田佳子・宮田理恵・Augustin Orou Matilo・Tika Dewi Atikah・藤沼潤一

修士課程を修了したみなさん
大西正哲・田島(三橋)亜紀・渡辺展之・田口康宏・ 内田あゆほ・森一也・奥田将己・森洋佑・牛原(赤坂)阿海・ 石橋史朗・吉田憲悟・北村知洋・田辺沙知・白崎智大・生駒佳史・玉川聖也・Doddy Juli Irawan

博士研究員・長期受入れ研究者
Peter Belingham(@CER京大)・久保拓弥・Herwint Simbolon・Matthew Potts・Yue Ming(岳明)・長谷川成明・鍋島絵里・Geeta Kharkwal・Eli Nur Nirmala Sari・Gao Yan(高燕)・Xi Chen・Song Kun・阿久津公佑・Olga Joanna Orman


研究報告 (和文総説・解説・報告書など)

原著論文は英文ページ に(あるいは ResearcherIDページ; Google Scholarページ に)

  • 甲山隆司. 1984. 林木のデモグラフィーをめぐる問題点. 種生物学研究、 8、 1-10.
  • 甲山隆司・坂本圭児・小林達明・渡辺隆一. 1984. 小楊子川流域の照葉樹原生林における林木群集の構造. 屋久島原生自然環境保全地域調査報告書、 pp. 375-397. 環境庁自然保護局
  • 甲山隆司. 1984. 亜高山帯シラビソ・オオシラビソ林の更新. 遺伝 38(4)、 67-72.
  • 甲山隆司. 1985. 極相種の特性. 沼田真、 編、 現代生物学大系12b、 生態B、 pp. 170-172. 中山書店
  • 甲山隆司. 1986. 林木種の共存研究の方向. 群落研究、 3、 15- 22.
  • 甲山隆司. 1987. 北八ケ岳の亜高山帯シラビソ・オオシラビソ・ダケカンバ混交林の動態. 長野県植物研究会誌 20, 36-41.
  • 甲山隆司. 1990. 長期観察が必要であるースマトラのケース・スタディーから. プランタ 9, 14-19.
  • 甲山隆司. 1992. 動いているスマトラの森. 堀田満・井上民二・小山直樹、編、 スマトラの自然と人々 pp. 38-52. 八坂書房
  • 甲山隆司. 1993. 熱帯雨林を形づくる樹木の多彩な生活.遺伝 47(10) 37-43.
  • 甲山隆司. 1993. 熱帯雨林ではなぜ多くの樹種が共存できるか.科学 63 768-776.
  • 甲山隆司・ 相場慎一郎・明石信廣・坂本圭児. 1994. 屋久島西部照葉樹林域の原生林と二次林の10年間の動態. 屋久島原生自然環境保全地域調査報告書 pp. 61-69. 環境庁自然保護局.
  • 甲山隆司. 1994. "生涯一葉"の植物.週刊朝日百科・植物の世界 2, 173.
  • 甲山隆司. 1994. さまざまな樹種がなぜ共存できるのか.週刊朝日百科・植物の世界 13, 46-47.
  • 甲山隆司. 1995. 地球変化と植生の変遷.遺伝 49(2), 6-7.
  • 甲山隆司. 1995. 暗い森のなかで生き延びる.週刊朝日百科・植物の世界 13, 140-143.
  • 甲山隆司. 1995. 樹形はどのようにしてできあがるのか.週刊朝日百科・植物の世界 7, 126-128.
  • 甲山隆司. 1995. 森林の変容と継続観察.随想森林 32, 89-90.
  • 甲山隆司. 1996. 森林アーキテクチャーから植生帯動態モデルへ. 日本生態学会誌 46, 57-61.
  • 甲山隆司・工藤岳・西村貴司. 1997. 遠音別岳原生自然環境保全地域の植生系調査の概要と気象環境特性. 遠音別岳原生自然環境保全地域調査報告書 pp. 13-27. 環境庁自然保護局
  • 甲山隆司.1998.生物多様性の空間構造と生態系における機能.井上民二・ 和田英太郎、編、 生物多様性とその保全(岩波講座 地球環境学5) pp. 65-96. 岩波書店
  • 甲山隆司. 2003. 生態系の成り立ちの基礎(2章) / 植物の繁殖と個体群動態(3章).松本忠夫、  編著、集団と環境の生物学(放送大学教材).日本放送出版協会
  • 甲山隆司、編著.2004. 植物生態学.朝倉書店
  • 甲山隆司.2006. 東アジアの陸域生態系の特性と環境応答.陸域生態系の科学:地球環境と生態系 (武田博清・占部城太郎 編) pp. 244-253. 共立出版.
  • 甲山隆司.2008. 生態系の「生産」と人間社会の「生産」. サステナ 9, 44-47.
  • 甲山隆司.2008. ボルネオ:燃える大地から水の森へ (大崎満・岩熊敏夫 編), 第3章 分担執筆. 岩波書店
  • 甲山隆司.2013. 陸域生態系の炭素動態:地球環境へのシステムアプローチ (及川武久・山本晋 編), 第1章・4章 分担執筆. 京都大学出版会.


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