[外来侵入アリ類と融合コロニー形成]
Ant Modelling - エゾアカヤマアリ敵対性実験の統計モデリング
最終更新: 2008-11-28 16:46:14
- このペイジでは岩倉さん修論のうち,敵対性行動実験のデータ解析に関する部分をまとめています
- 炭化水素データ解析については → CHC NN 解析1
[このペイジのもくじ]

関連ファイル・リンク
- 石狩浜敵対性実験の参考文献, 総説: Polydomy in ants, スーパーコロニーの定義?, コメントなど (非公開)
- 統計モデルファイル一式 winbugs.zip (ZIP ファイル)
- 「個体差」などを random effects とする統計モデリングについて
概要
- 岩倉美沙子さん (北海道大, 2007 年 3 月修士課程修了) の修士論文研究のデータとその解析にもとづいて,久保がアリの攻撃行動などを階層ベイズモデルとして定式化しなおし,侵入アリの出身コロニーや実験場所がアリの antennation や攻撃発生の確率に与える影響を推定した.
- 2007 年 8 月 5 日,沖縄で開催される日本蟻類研究会大会で概要を発表する予定
- 2008 年 3 月 15 日,生態学会福岡大会 でポスター発表する

統計モデリングの結果とその議論 (予定)
supercolony (SC) 内であっても別の巣からきたアリには antennation 確率・攻撃確率が高くなる
- SC 内の他コロニー,あるいは実験巣から 30 m 離れた場所から採取された侵入アリに対する antennation と攻撃の確率が高くなった (Table 1, 2 と Fig. 4, 6, 7; 事後分布 95% 区間一覧)
- ただし「SC 内の異巣」あるいは「30m 離れた場所で採取された worker」に対する 1 contact における攻撃確率は 0.05-0.1 ぐらい
SC 外のコロニーからきた侵入アリに対しては攻撃確率がさらに高くなった
- Hoshioki SC 内外を区別する方法があるらしい (Table 1, 2 と Fig. 4, 6, 7)
- antennation 確率は SC 内外で変化しなかった
Antennation 後には攻撃確率が減少した
- 確率が 1/4 ぐらいになる (Fig. 3, 6, 7)
- 解釈としては
- resident アリの攻撃衝動が弱まる
- antennation されてるあいだに invader アリが逃げだすスキを見つけている
1 trial の中で攻撃される確率は高まっていった
- つまり一匹の invader アリは 5 回の「接触」を観測されるのだけど,一回目の接触に比べて五回目の接触では攻撃される確率が 1.5 倍ぐらいに増える (Table 2 と Fig. 4)
- antennation 確率はこの「回数」には依存してなかった
- 解釈としては …… invader アリが次第に「疲れて」きて攻撃される前に逃げられなくなってる?
「特別な」個体やコロニーは特定されなかった
- random effects に関しては「特に噛まれやすい個体」や「特に攻撃的なコロニー」などは特定されなかった (Table 3 とFig. 5)
- Jozankei アリの異常に高い攻撃性は randome effects ではなく fixed effects のひとつである Monodomy 説明変数で説明された (Table 2)
以上のことから何が言えそうか?
- SC 内外にかかわらず「自分の巣ふきんのアリ (日常的に接触するアリ)」「巣から 30 m 離れたところのアリ」が区別されている可能性があり,さらに SC 内 Hoshioki コロニーのアリは invader アリが SC 内外の区別がつくらしい
- SC 内でも他巣からきた invader アリは警戒され (antennation 確率が上昇),攻撃される確率は高くなる
- しかも 1 contact あたりの攻撃確率は低いので「敵対性がない」と観察者に判断されがちだった?
- 石狩浜 SC 分断化の影響もあるのかもしれない (しかし分断前と変わったかどうかはわからないだろう)
- (Monodomous とみなされている) Jozankei アリは攻撃性が高く, 30 m 離れたところでとられた (おそらく他巣の) アリへの攻撃確率が高い
- antennation 後は攻撃確率が低下するが,それでも SC 内のアリの antennation なしの攻撃確率より高い
- Jozankei アリは他種のアリや昆虫から頻繁に攻撃されているのかもしれない
- そう考えると石狩浜のアリはあまり他種のアリなどに遭遇しないのかもしれない?
他に議論すべきこと?
- スーパーコロニーの「維持」?
- 社会性昆虫のうんぬん?
- アルゼンチンアリとの類似
- Jozankei では巣間闘争がある (アルゼンチンにおけるアルゼンチンアリ状態?)
- 石狩浜では巣間闘争がおさえられている? (侵入先におけるアルゼンチンアリ状態?)
そもそも「何を言いたい論文」とするか?
- 敵対性実験データだけを使った行動解析のみ
- 遺伝子データについては必要に応じて岩倉さん修論を引用,あとは藤原君の修論研究で?
- 炭化水素データは「次」の論文で
ハナシの組み立ての例 (1) --- 「supercolony って観察される攻撃確率で定義されてるのでは?」という方向性
- アルゼンチンアリなど外来性侵入アリの supercolony が注目されている
- supercolony とは何か? 明確な定義があるのか?
- 働きアリたちが攻撃行動する確率によって supercolony が定義されるのか?
- また supercolony 性とやらを維持するメカニズムは何か?
- 遺伝子?
- 体表面炭化水素組成は遺伝子で決まるのか? 時間変動する,という研究もある
- 石狩浜の F.yessensis メタ個体群は supercolony と呼ばれてきた
- その supercolony 性の実態は?
- そもそもアリの行動は侵入アリの素性によって異なるのか?
- (久保の問題意識) supercolony, polydomy, monodomy はアリの行動から定義可能か?
これらに対して「わかったこと」は?
- アリの攻撃確率は何で決まるか?
- 侵入アリの出身地によって上下する
- 攻撃にさきだつ antennation によって低下する
- resident アリが monodomous なら上昇する
ハナシの組み立ての例 (2) --- 「攻撃確率が低いからといって必ず認識能力も欠落したわけではない」という方向性
- アルゼンチンアリなど外来性侵入アリの supercolony では同種内別巣アリへの「nestmate 認識能力」が欠落している,というハナシがある
- これは「観察された攻撃確率の低さ」からそう判断されている …… そう考えてよいのか?
- エゾアカヤマアリに関していうと, antennation では少なくとも二水準の強度,攻撃に関しては三水準の強度があり,「認識能力」がなくなっているわけではなさそうだけど攻撃確率は全体に高くない (1 接触あたりの確率がどのような場合でも 0.5 をこえない)
- さらに先に antennation をやってしまうと, (観察者には) 攻撃確率が下っているように見える
- アリの行動もっとよく見て (行動連鎖とか),きちんと統計モデリングしなさい,というハナシ
用語の問題,など
(久保の疑問,など) cf. 総説: Polydomy in ants
- localities: colonies でよいのではないか?
- internidal: intercolonial とする?
- nestmate: ほんとに「同巣」だといえるのだろうか?