2000.03.25

第 47 回生態学会大会 (広島) 自由式シンポジウム
「光環境の時間的・空間的不均一性に対する植物の応答
〜 葉から個体,個体群,群落へ 〜」 (企画: 唐艶鴻・村岡裕由)

森林動態シミュレイターでは
どうやって光分布を計算してる?

--- あるいはモデル屋から見た光計算法の変転 ---
久保拓弥 (kubo@ees.hokudai.ac.jp)
北海道大学院地球環境科学研究科
地域生態系学講座 (PD 特別研究員)

    近ごろの樹木・森林動態シミュレイター



  1. 植物生態学が取り扱う問題の規模
  2. 毎木データーと毎木シミュレイター
  3. Simple & Powerful なモデルの時代

    嚆矢とモデル屋の暴走 (1953, 1980-1990?)



  4. 長く影響力を持つことになる単純化
  5. 伝説 (1) 林内の光環境は上ほど明るく
  6. 伝説 (2) 「真上の林冠」がなければ
  7. 伝説 (3) 「葉面積指数」が同じ樹冠なら
  8. 「なんでもかんでも一次元に平均化,ええ,そうに決まってます」

    三次元世界への回帰 (1977, 1990-2000)



  9. 昔から三次元構造は ……
  10. 1970 年代の奇跡
  11. 1990 年代の標準モデル
  12. カンペキな共同モデリング作業
  13. 先見と独創に満ちた職人芸

    誰でもできる光量シミュレイション



  14. 良くも悪くも何も考えてない
  15. 天の光は ……
  16. 動く方向は逆ですが (観測点 → 光源)
  17. ま,そんなに差はないんですけど ……

    おしまい



  18. つまるところ

要旨

森林動態シミュレイターではどうやって光分布を計算している?

久保拓弥 (北大・地球環境)

「植物は光環境にこう応答している」 これがわかれば,つぎにはそういった植 物によって構成されている集団の消長が知りたくなるかもしれない.この目的 のために,過去半世紀にわたり植物集団の挙動を数理的に再構成できるような 幾多もの動態シミュレイターが設計されてきた.そのたびにひとつの同じ問題 が繰り返し取り上げられてきたのである. 「植物集団の内部においてその光環境はどう形成され変化しているのか?」

数理モデルはひどく単純化された架空の世界を生態学者に提供しているにすぎ ない.とはいえ,それらは実測との対応を吟味されたりされなかったり,さら には現象の見通しをよくしたり,あるいは迷信の源泉にすらなった.今日なお 影響力を維持している光量の一次元垂直勾配モデルは,変動する光分布はモデ ルの中で計算できるという鮮烈な描像を持ち込むと同時に,ずいぶんと観念論 的な信仰も広めたといえそうだ.

光量子計・魚眼レンズ・画像解析ソフトウェア,これら三種の神器を駆使した 立体的な光分布の把握が重視される当節にあっても,上のような一次元世界の 教条は議論の前提として広く受け入れられている.

二〇世紀後半になって,あらゆる分野で勃興してきた「自然科学における素朴 計算主義」,その「形而上学的仮定はこれを廃する」というお作法は森林動態 モデルにも変化を及ぼした.「観測された現実」ときちんと比較できるような, 林内光環境を評価するモデリングを行え.一次元から三次元へ.計算機は最良 の「現象再構成装置」と信じる一部の生態学者たちはこの問題にどう立ち向かっ たのか?

これまでの光計算モデルや演者が共同研究者たちと進めている毎木調査スケイ ルの樹木集団データーと対応する森林動態シミュレイターなどを例としてとり あげながら,仮想植物集団内に「光子」を射撃したり消したりして光環境を形 成させる方法論 ── そのココロ (歴史的しがらみ) とワザ (ごまかしテクニッ ク) の一側面について紹介する.



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