植物生態学者たちは樹木とその集団の時間発展に関連するさまざまな側面を研究して きた:
これらの課題を総合するためにシラビソ (Abies veitchii) の三次元的な functional-structural 樹木シミュレイター PipeTree を開発した. シミュレイターと個体群の挙動と八ヶ岳・縞枯山の 同齢林分観測データ (Kohyama & Fujita, 1981) を比較することで, モデリングの当否を検討した.
PipeTree では個々のシュートごとに三次元的な開空度を計算し, それによって個体の年間炭素同化量が決まる. これさまざまな維持コストをさしひいて個体全体の純同化量を決定する. 頂芽優先など考慮した資源配分モデルにしたがって樹木個体内で資源の移動をさせる. 配分された資源は, いくつかの形態的な制約を満たしつつ, 各部の生長に利用される. 光資源をめぐる競争は現実の樹木と同様に個体内・個体間で存在している. また簡単化した二次元地下部のモデリングによって水をめぐる競争も考慮している.
PipeTree を構成するサブモデル群を調整し, 縞枯山の個体・集団の動態データに見られる樹高-幹直径のパターンを再構成できるようなアルゴリズムを確定していった. 一例として, Abies 個体内では光資源にあわせた「適応的な」資源分配は非現実的な形状の樹冠を生成し, むしろ頂芽優先による統制が重要であった. また, Abies 個体間で光をめぐる競争だけでは現実に八ヶ岳調査地に見られた樹高差の拡大が再現できず, 地下部における水の取り合いによって観測されたパターンに近い計算結果が得られた.