常緑広葉樹の葉寿命が光環境や葉内窒素含量などの葉特性にどのように依存しているのか, そして同所的に存在する樹種間での相違を明らかにする新しいデータ解析手法を開発した. 常緑広葉樹ではシュート伸長が 休眠などによって不規則 になり, このために観測される葉齢分布は実葉齢とは異なる見かけのものとなっている. こういった照葉樹のシュート動態に普遍的な特性も考慮した 新しい観測方法と葉寿命推定モデルが必要である.
2004 年 10 月, 2005 年 3, 7, 10 月に屋久島西部の花山林道・西部林道ぞいの 林縁・林冠下それぞれにおいて常緑広葉樹 (合計 22 樹種) の稚樹 (樹高 1-5m) のシュートの伸長休眠・二度伸び動態を追跡調査を実施した. また同じ場所・同じ樹種のシュートを切り取り, 見かけの葉齢分布を記録し葉特性 (窒素含量など) を測定した.
対象とする 22 樹種間のシュート伸長特性と葉寿命を表現する 統計モデルのパラメーターの種間共通部分・種間差・個体差を 同時に考慮して観測データから推定するために, 階層ベイズモデルを開発し Markov Chain Monte Carlo (MCMC) 計算によってこれらの事後分布を推定した. シュート伸長の確率論的な休眠・二度伸びの影響をくみこみ, パラメーターの種間差事前分布などをデータから推定した. 対象 22 樹種のシュート伸長・葉寿命モデルの パラメーターの事後分布は種間で類似していた. また基本休眠確率や休眠の明るさ依存性, また葉寿命モデルの基本葉寿命や葉齢依存性などでは種間差が統計学的に特定された. 多種からなる生物群集のデータ解析・統計モデリングにおける, 「全部を一度に」評価できるこの Bayesian data analysis の潜在能力の一端を示すことができた.