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露崎 史朗 (Shiro TSUYUZAKI)
植物群集生態学・環境保全学

有珠山/サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ
(露崎担当分 2009年12月20日更新)

レポート優秀作品 Excellent reports

 そのまま処分するのはもったいないレポートを、ここに掲載しておこう(要は、もったいないだけ)。これらのレポートの内容が全て正しい、というわけはないので誤解なきよう。名前は、載せても良いのかもしれないけれど、一応、無名ということで。それと、ワープロ提出と手書きのものは、書き写す気にはなればいので、良いのがあるんだけれど、載せられない。さらに、しょうもないレポート課題を出してしまったため優秀レポートがなかったりとか、試験にした年のレポートは存在しなかったりする。
 明らかな誤字・脱字、個人的に好きではない漢字は、書き直してある。

-英語(一部英語みたいな)レポートはこっち (読めるのだけ)

[ 2000 | 2007 ]


2007

環境保全学特論

A

問1
選択した文献
露崎史朗. 2001. 「火山遷移初期動態に関する研究.」日本生態学会誌 51: 13-22

1.
火山遷移は主要な自然撹乱の一つである。火山遷移初期植物群集の成立機構および動態は事象により様々であり、筆者は本稿で、これらについての先行研究を「植物に対する撹乱の度合いと頻度」「火山遷移の区分」「撹乱後の植物群集の動態」「帰化植物の侵入」「撹乱前の調査と永久調査区の必要性」という観点からレビューした。
 この中の「撹乱後の植物群集の動態」では菌根と植物間の相互作用についても述べられている。すなわち、菌根の発達は土壌窒素・リンの吸収に影響するため植物群集構造に大きく関与することが指摘されてきた。しかしMSHでの菌根接種実験で、接種個体と非接種個体の成長に有意な差が認められなかったことから、菌根の存在が遷移上有効とする見解には疑問があるという。

2.
 Fujiyoshiら(2006)は、富士山の初期遷移段階に生育する4種の草本植物、Polygonum cuspidatumMiscanthus oligostachyusAster ageratoides var. ovatusHedysarum vicioides、を用いて、AM菌の存在と土壌の発達がそれぞれ植物の生長に対してどのような影響があるかを調べた。
 調査地で遷移初期の土壌(Bg)と遷移が進んだ土壌(Ic)を採取した。この土をポットに入れ、そこへ上記4種の現地性のAM菌接種個体と非接種個体を植えて実験室内で育て、その後乾燥重量、窒素含有量、リン含有量について計測した。
 その結果、土壌はIcがBgに比べて4種の植物全ての生長を促進する傾向が見られた。またAM菌の接種は、H. vicioidesの生長を著しく促進したが、他の3種については有意な変化は見られず、その作用は種特異的なものである可能性が示唆された。

3.
 Fujiyoshi ら(2006)は、菌根の存在は植物の生長に影響を与えることがあり、その影響は種特異的なものであろうという結論を出し、Titus ら(1998)は、菌根の存在は植物の生長に影響を与えないという結論を出した。両者は異なる結論を導いたが、両実験では用いた植物の種が異なる。Fujiyoshiら(2006)は4種の植物を用いた。このうちマメ科のH. vicioidesは窒素固定を行う種で、実際本種がAM菌の接種により著しく成長が促進された。一方Titusら(1998)は7種の植物を用いたが、窒素固定を行う種は含まれていない。また室内で行ったFujiyoshiら(2006)の実験に対し、Titusら(1998)は屋外実験で、コンタミの可能性が否定できないのはTitus本人も認めるところである。

4.
 露崎(2001)は「菌根の存在が遷移上有効である」という見解に対し、Titusら(1998)の結論を引用して、この「再検討が必要である」としている。しかし上述した4のように、菌根の存在が遷移上有効であるかという問いに対しては、実験に用いる種、つまり現地に生育する種に窒素固定を行うものが存在するかどうかが深く関わってくる。このように菌根と初期遷移の関係は一概に言えないことから、本文は「菌根の存在が遷移上有効かどうかという問いに対してはTitusら(1998)やFujiyoshiら(2006)など対立する見解があり、さらなる事例の蓄積が必要である」と述べるのが妥当であろう。

5.

  • Masaki Fujiyoshi., Atsushi Kagawa., Takayuki Nakatsubo. & Takehiro Masuzawa. (2006) Effects of arbuscular mycorrhizal fungi and soil developmental stages on herbaceous plants growing in the early stage of primary succession on Mount Fuji. Ecological Research 21: 278-284
  • Jonathan H. Titus. & Roger del Moral. (1998) The role of mycorrhizal fungi and microsites in primary succession on Mount St. Helens. American Journal of Botany 85: 370-375
  • 露崎史朗.(2001) 火山遷移初期動態に関する研究. 日本生態学会誌 51: 13-22

B

1. 生態系から放出されるメタンについてまとめる。地球温暖化による生態系からのメタン放出増大には、大きく分けて2つあると考えられてきた。1つはツンドラ地帯の永久凍土に含まれるメタンの排出がある。これは温暖化により永久凍土が溶け、その結果として放出されるものである。2つめは湿原地帯から放出されるメタンである。これは湿地に生息するメタン生成菌である嫌気性細菌が温暖化によってそれの活動が活発となり、メタン放出が増大するものである。しかし、陸上植物からも大量にメタン放出があることが発見された(Keppler et al. 2006 )。これにより、森林化による植生の増加によっての地球温暖化緩和に対し、疑問が出てきた。

2. Parsons et al. (2006) は、Keppler et al. (2006) が実験室の結果を地球規模にスケールアップする際に、問題があると指摘した。これは茎や根を含む純一次生産速度(NPP)を用いたことに、メタン放出と植物の成長に関係があるという証拠が無く、葉と同じレベルで茎や根からメタンが発生するとは考えにくいためである。そのためParsons et al. (2006) の研究では、NPPの代わりに葉の現存量をスケーリングに使って推定した。その結果、陸上植物からのメタン放出量はKeppler et al. (2006) の推定量よりも全体で約72%少ないとわかった。

3. Parsons et al. (2006) とKeppler et al. (2006)では、全球での各バイオーム推定量に大きな違いが見られる。問題2のところでも書いたように、Parsons et al. (2006) では全体のメタン放出量はKeppler et al. (2006) の推定量より約72%少ない結果となったが、さらに熱帯雨林帯での放出量は-80%、温帯の森林地帯で-55%、熱帯のサバンナや草原地帯でも-73%と Parsons et al. (2006)でのメタン放出量の見積もりは、かなり小さいものであると結論づけている。

4. 以上のことから、Keppler et al. (2006) で発見された、陸上植物からメタンが発生しているという事実は、Parsons et al. (2006) の研究でも確認されたが、両者での研究が示めしたメタン発生量の見積もりには大きな差があり、どの程度メタンが発生しているのかは、未だ不確実なことが多い。そのため、温暖化物質としてとても重要であり、地球温暖化に大きく関与していると考えられる大気中のメタンがどこから発生しているかを解明のために、陸上植物からの全球規模でのメタン発生量をさらに正確に、定量的に示す必要があると考えられる。

参考文献

  • Keppler F, Hamilton JTG, Bral M & Thomas Ro"ckmann. 2006. Methane emissions from terrestrial plants under aerobic conditions. Nature 439: 187-191
  • J. Parsons, C.D. Newton, H. Clark & M. Kelliher. 2006. Scaling methane emissions from vegetation. TRENDS in Ecology and Evolution 21: 423-424

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2000

景観生態学レポート

Theme 1:α -diversity
 α-diversity (= intra-community diversity)とは生物多様性に関する概念の1つで、ある均質な生育地にどれだけの種が共存できるかという群集内多様性の尺度として用いられる.つまりα-diversity とは、局所的な種の多様性を示す.したがって地域間でα-diversity を比較する場合は、その地域に卓越する中性的な環境に成立する群集を選んで種数を比較する手法が使われる.それに対してβ-diversity(= inter-community diversity)とは、生息地の多様性に基づいた生物多様性の概念であり、各々の立地に対応した群集型や植生型の数によって表されることが多い.
 おおまかな傾向として種の多様性は対象面積を広げるにしたがって増加する、これは対象面積自体の拡大によって生息地が多様化し、出現種数が増加するためと解釈できる(β-diversityの増大).
 その一方で、対象面積の拡大による種多様性の増加は、β-diversity のみならず&α-diversity にも影響を与えると考えられる.α-diversity は、局所的な生息地における種間競争や共存の結果を反映するだけでなく、種の供給源としての広域的な種の多様性の影響下にあるからである.広域的生物相が潜在的な種の供給源としてのプールとなり、α -diversity に作用するのかもしれない.景観レベルでの広域的な種多様性はγ-diversity (landscape diversity)と呼ばれる.

Theme 2: Relationship between α-diversity and γ-diversity
 Patel et al. (1996)は東欧エストニア(面積4500km2)を対象として、植生学的に広域的な種プールと局所的な種のプールおよび小プロット(1 m2)に出現する平均植物種数の関係を調査した.彼らは広域的プールの定義を、気候・自然地理的に均一であり様々な群集の共存が可能な地域における種のプールとし、広域的プールの調査範囲をエストニアと定めた.一方、局所的プールは、ある1つの植生景観で占められる群集内において共存可能な種のプールと定め、14の植生タイプを局所的プールの範囲と見なした.その結果は、広域的プールと局所的プールの間には正の相関が認められ、更に局所的プールと1 m2プロットの出現種数の間にも同様の関係が認められた.各スケールにおいて供給源としてのプールと種の多様性には比例関係があり、種の多様性はスケールによって飽和せずに種プールによって規定されているのかも知れないと結論づけた.
 一般に植物社会学では、植生タイプの階層分けに様々な解釈が可能であり、群集タイプの増加を客観的に計測することは難しい.Patel et al.は、植生タイプを決定するためにエストニアにおいて観察された維管束植物1416 種の中から1073種を選び出しているが、その判断基準をEllenberg らによるヨーロッパ中部の植生指数に求めている.そのためEllenberg のリストに存在しない種については考慮されていない.このように、植生タイプと対応するように対象植物種を選択しているが、判断基準は提示されていない(植物種の抽出により現実の種プール値よりも算出プール値が小さくことに関しては補正されている).
 Patel et al.の論文は、ある地域の植物群に関する解析例だが、地球上の様々な生物群における解析例も報告されている.Caley and Schluter (1997)は、各大陸において、異なった生物群(脊椎動物、無脊椎動物、植物)を取り上げ、局所的多様性と広域的多様性との対応関係は検討した.
 彼らは大陸間をまたがる地域におけるサンプル方法を統一するために各大陸から任意に指定した500 × 500 km = 25,000km2の地域を広域的範囲とみなした.そして広域的範囲の中心に当たる面積比1~10 %の範囲を局所的な多様性を表すための範囲と定義した.ここで考慮すべきことは、種多様性にβ-diversity が寄与する度合が調査地域間で異なる可能性についてである.機械的に局所的生物相の範囲を決めたために、局所的生物相は景観的な枠組みに当てはまらない可能性がある.また局所的範囲を比較的大きく取っているために局所的範囲に様々な生育立地の多様性が含まれると考えられる.大きな局所的範囲によって、β-diversity が局所的多様性に与える影響の地域間での違いは比較的相殺されていると思われるが、手法的にはβ-diversityの影響を除外できていない.
 Caley and Schluter の結果では、広域的生物相と局所的出現種数との対応は飽和関係がなく、正の相関が認められた.Patel et al の論文には植生学的な弱さがあり、Caley and Schluter の論文はβ-diversity の影響が除去されていないが、2つの論文を相補的に解釈すれば、植生データーからだけではなく様々な生物群、そして地球全体にわたる地域間で、局所的出現数と広域的種プールの間には比例関係が存在すると読みとれる.
 以前から種多様性の地域間差について、進化史的要因や気候的要因に基づいて議論されてきた.熱帯における樹木の場合や、温帯における草本植物の場合のように、地域的な種の出現頻度が高い例は、進化史的に多くの分類群が出現し、それらの種の生存に気候が適しているため、種の多様性が保証された結果であるという考え方である.樹木の種多様性は生育地域の生産速度と良く対応していることが知られ、広域的及び局所的な気候パラメータと種多様性の対応関係はこれらの論文の結果と矛盾しないように思われる.しかし種多様性の内的要因として種間相互作用が働く過程は、局所的種多様性と広域的種多様性の対応関係に組み込まれていない.もし、局所的な種多様性にとって広域的種プールが大きな規定要因となっているならば、α-diversity とγ-diversity の対応関係に種間相互作用が及ぼす機構は不明であり、更なる検証が必要となる.

References

  • Caley, M. J. and D.Schluter (1997): The relationship between local and regional diversity. Ecology,78,70-80.
  • Partel, M. ,Zobel, M. ,Zobel, K. and E.van der Maarel (1996):The sppecies pool and its relation to richness:evidence from Estonian plant communities.Oikos,75,111-117.

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