生命環境野外実習 (旧, 生物野外実習)
概要
理科教育は、新しい知識を次々と与えることよりも、むしろ自然を探求する過程を通して科学の方法や基本的知識を見につけさせ、正しい自然観を育成することの大切さが強調されつつある。1998年12月改訂の 学習指導要領 (1)でも、「小学校、中学校、高等学校を通じて、児童生徒が知的好奇心や探求心をもって、自然に親しみ、目的意識をもって観察、実験を行うことにより、科学的に調べる能力や態度を育てるとともに、科学的な見方や考え方を養うことができるようにする」ことが求められ、そのための自然体験や身近な自然環境を利用した実験・観察が重視されている。植物群集動態に関する実習を行なうことは、学習指導要領の本方針の具体化という点でも、また、植物群落に関する高等学校生物の教科内容の理解を助けるという点においても、有効なものと考えられる。
(1) 1998(平成10)年 新学習指導要領のこと
これらの観点から、
火山実習
駒ケ岳において火山噴火後に植物群集が、どのように時間的、空間的に変化しているかを、まず、野外において自身で測定することで方法を体得し、解析を行い視覚的に理解することを目的として行う。
海浜実習
汀線からの距離に沿い土壌移動撹乱と塩分ストレスの勾配が生じている海浜を用い、自身で測定することで、各種の環境適応様式と群集構造の変化を把握し、解析を通じてより視覚的に理解することを目的に行う。

海浜における植物地下部観察のため、地下茎や根を傷つけないように掘り取っているところ(2008年8月4日)。
海浜植生調査の光景。函館山の見える日は、気分は良いが、日焼けに要注意! (2008年8月5日)
内容
2008-2010年
北斗市東久根別海岸における海浜植生のゾーネーションを材料に行う。
予習・準備等は、駒ヶ岳実習に順ずるので、参考文献(複写)をよく読み、予習しておくこと。
日程 |
内容 | |
|---|---|---|
1日目 |
午前 |
海浜植物の堀り取りによる地下部構造の測定 (テンキグサ・コウボウムギ・ハマボウフウ・シロヨモギ・ハマニガナ・ハマヒルガオ・オニハマダイコン) |
| 午後 | 地下部構造の観察および測定をもとにレポート作成 | |
2日目 |
午前 | 汀線からの距離に応じた植生調査 (各班 20-25 mのラインを2本) |
| 午後 | データ整理・解析(類似度等)・グラフ化 | |
3日目 |
午前 | 観察・測定をもとにレポート作成 |
東久根別海岸フローラリスト
- アカツメクサ Trifolium pratense
- アカザ(シロザ) Chenopodium album
- アメリカセンダングサ
- アレヂマツヨイグサ (s.s.)
- イヌキクイモ Helianthus strumosus
- イヌホオズキ
- ウンランLinaria japonica
- オオウシノケグサ
- オオマツヨイグサ Oenothera glazioviana
- オオヨモギ
- オカヒジキ
- オニグルミ Juglans mandshurica var. sieboldiana
- オニハマダイコン Cakile edentula
- カモガヤ Dactylis glomerata
- ケカモノハシ Ischaemum anthephoroides
- コウボウシバ
- コウボウムギ Carex kobomugi
- コヌカグサ
- サルトリイバラ
- シラゲガヤ
- シロヨモギ Artemisia stelleriana
- スギナ Equisetum arvense
- ススキ Miscanthus sinensis
- ネズミムギ
- ナワシロイチゴ Rubus parvifolius
- ノラニンジン Daucus carota
- ハマエンドウ Lathyrus japonicus
- ハマゼリ
- ハマダイコン Raphanus sativus var. raphanistroides
- ハマナス Rosa rugosa
- ハマニガナ Ixeris repens
- ハマニンニク(テンキグサ)
- ハマヒルガオ Calystegia soldanella
- ハマボウフウGlehnia littoralis
- ヒメスイバRumex acetosella
- ヒメムカシヨモギ
- ヒルガオ Calystegia japonica
- ブタナ(タンポポモドキ) Hypochaeris radicata
- ヘラオオバコ Plantago lanceolata
- ヨシ Phragmites australis
1997-2001年, 2004-2005年
天候等により変更あり。遅刻厳禁(自分を含め)
| パターン 1 (方形区調査) | パターン 2 (毎木調査) | |||
|---|---|---|---|---|
| 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | |
1日目 |
ガイダンス後、直ちに出発 | 山麓部プロット | ガイダンス後、直ちに出発 | 毎木調査プロット |
2日目 |
山頂部プロット 火口等見学(随時) |
山頂部プロット* | 毎木調査プロット 山頂で昼・火口等見学 | 毎木調査プロット |
3日目 |
レポート | レポート |
* 時間があれば温泉(チャップリン館) - 確率低い
レポート作成には、繰り返し計算が結構あるので、コンピュータを使用したい。2004年実習は、コンピュータなしでのレポート作成は不可能だった。
評価
実習参加への積極性およびレポートによって総合的に成績を評価する。
2001年の実習参加者は、2日目から皆なで相談してレポート準備をしていたらしい... 偉い!

2000年実習風景(00/07/15)。曇りの日だと、このように快適な実習だが ... 毎回こういう天気とは限らない
準備
個人装備
- 野帳(フィールドノート)・筆記用具: 植物名は書かないと覚えない。気づいたことは、どのようなことでもメモすることは実験と同様に大切なこと。
- 雨具・防寒具: 天候は変わりやすく たとえ快晴の日でも 雨具 は準備 すること - 夏でもセータ等が必要となることもある。また、傘では手がふさがり転んだときなどに危険でありノートもとりづらい。傘は、強風下では全く役に立たない。100円ショップのものでも良いから 合羽 (レインコートともいう)を用意した方がよい(ただし、100円ショップのものは1度で使えなくなることを覚悟する)。9月に実習を実施する場合には、防寒具 も必須である。
- 飲料水: 快晴の日は、命の源。500 mlでは足りないことは経験済み。
- 弁当(昼食): 入山前に(Lで始まる)コンビニよるが、商品に不満がある人や特別ドリンクのある人は事前に用意する。海浜の実習では歩いて5分のところにコンビニがあるので心配はない。
- リュックサック: 全用具が入る大きさなら、どのようなものでも構わないが、やはり手提げ鞄よりは両手が使えるだけ便利である。
以下のものは、自己判断により準備。
- カメラ を持っている人は、持って行くといい思い出がとれるでしょう。
- 日焼けに弱い人や日焼けが嫌いな人は 日焼け止めクリームや日除け帽などは必携である。2008年の海浜の実習では、日焼けによる被害者が続発した。
- 軍手は、カラマツの枝にぶつかるとか転んで軽石で、手を怪我しそうだとか思う人は準備する。
- 山頂でも使える 携帯電話 を持っている人は、携行し、それを持っていることを担当教官まで伝えて欲しい。携帯電話を嫌いな人間が書くことではないが。
教室準備: 実習に際して、教室で準備しておく。
実習中の
注意
海浜での注意
悲しいことだが、多くの海浜では、ガラスの破片などのゴミが埋もれているため、素足・素手で作業するのは危険である。足は、長靴がベスト。根系( root system )調査の時には、素手で砂を掘らないよう、スコップ・シャベル・軍手を上手に使おう。
山での注意
服装は、山歩きができるようなものを! 特に靴は大事なポイント。雨の日は登山道がよく滑るので怪我のないよう!
駒ケ岳に入ると、トイレがない。入山前前に寄っておいた方がよい! 2001年には、そのような理由で登山道を駆け降りて行った学生がいたが、危険である。
山のエチケットとして、ゴミは持ちかえろう。
参考文献
露崎・長谷(2000)は、実習の具体的内容を説明したものなので、実習前に一読し不明の点を明らかにしておくこと。参考文献は必ずしも購入する必要のあるものではないが、あれば実習の助けになるので、興味のある学生には購入(複写)を薦める。
- 露崎史朗・長谷 昭. 2000. 植生動態実習マニュアル. 環境教育研究, 北海道教育大学釧路校 3: 153-159
実習関連 分類学・生態学 参考書
- 小林四郎. 1995. 生物群集の多変量解析. 蒼樹書房, 東京. pp. 194. [レポート作成時の手法について解説]
- 鮫島淳一郎・辻井達一・梅沢俊. 1985. 新版 北海道の花. 北海道大学図書刊行会, 札幌. pp. 359 [野外において植物確認に使用]
駒ケ岳における生態学研究文献
露崎による関連文献はこちら 英文 , 和文
著者: 赤坂宗光(Akasaka M), 近藤才寛(Kondo T), 西秀雄(Nishi H), Titus JH, ,露崎史朗(Tsuyuzaki S), 上坂尚平(Uesaka S)
- Yoshioka, K. 1966. Development and recovery of vegetation since the 1929 eruption of Mt. Komagatake, Hokkaido, Ecological Review, Sendai 16: 271-292
- Yoshioka, K. 1974. Volcanic vegetation, pp.237-267. In: The Flora and vegetation in Japan, ed. Numata, M. Kodansha, Tokyo. [駒ケ岳の1929年噴火後の記録]

パッチはこんな感じ。円く括ったところがパッチ (上坂尚平撮影)
ディレクトリー内関連ページ
駒ケ岳においてなされた生物学に関する 卒業論文
指導教官 長谷 昭 [北海道教育大学教育学部函館校 生物学教室 ]
- 木村裕樹. 2001. 標高傾度に対応した樹木の成長と開葉特性及び光合成特性の関係
- 新沼寛子. 2000. 駒ケ岳の植物の菌根共生と環境適応機構
- 花田安司. 2000. 駒ケ岳におけるカラマツおよび落葉広葉樹数種の光合成特性と環境適応
- 大澤由明. 1988. 駒ヶ岳におけるカラマツ実生成長とマイクロハビタットの関係
- 加藤文子. 1988. 駒ヶ岳におけるカラマツ実生の定着様式
- 平野高志. 1988. 駒ヶ岳における低木パッチのサイズと種多様性の関係について