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露崎 史朗 (Shiro TSUYUZAKI)
植物群集生態学・環境保全学

有珠山/サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ
(2006年12月16日更新. 2009年9月3日修正)

遷移

目次

[ 遷移 | 有珠 | 参考文献 ]

用語: 亜極相, 環境傾度分析, 気候的極相, 極相, 極相種, 極相群集, 極相パターン説, 極相林, 後極相, 湿性遷移, 土壌的極相

遷移 (succession)
時間の経過に伴う群集の変化

succession
図1. 遷移の概念図


遷移系列の分類 (あくまで教科書的な区分)

遷移型 定義 事例 植物供給源
一次遷移 土壌中を含む全群集が消失した状態からの遷移 移入

湿性遷移

湖・池等から

乾生遷移

火山噴火
新島
二次遷移 群集が除去された状態からの遷移( 写真 ) スキー場放棄
森林火災
泥炭採掘
石炭採掘
移入
栄養繁殖移入
埋土種子

遷移図
乾生一次遷移の典型的とされる模式(Whittaker 1975)。時間の経過につれ植生高が高くなる。

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遷移用語

生物学辞典 (露崎担当分)

亜極相 (subclimax)

(= 準安定相、妨害極相)

 気候的極相概念中で使用され、極相となりうる手前の状態で安定し、長時間にわたり遷移が停滞しているようにみえる遷移系列上の群集を指す(-遷移)。極相に近づくにつれ、一般に遷移速度は遅くなるため、亜極相群集は長時間存在することとなり、準安定相とも呼ばれる。しかし、亜極相と極相の識別は概念的なものであって、実際に亜極相・極相を区分することは困難なことも多く、区分自体の意味も不明なことが多く、現在の生態学では、気候的極相概念にもとづく議論でもない限り用いない。極相に至らずに停滞する要因としては、噴火、山火事、人為などの撹乱があげられる。人為撹乱としては、ボタ山(ズリ山)や埋立地などが長期間経過し、草本期が持続すると、亜極相的とみなせることがある。これらの撹乱を除去すると遷移は進行するため、その意味で妨害極相と呼ぶこともある。なお、前極相は、撹乱によらない要因により遷移が気候的極相の前の段階に留まることを言う。

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環境傾度分析 (environmental gradient analysis)

(=環境勾配分析、傾度分析, = Gradient analysis)

 広義では、群集が標高差や土壌の乾湿という様々な環境傾度に沿った配置様式を表現する分析方法全般を指す。環境傾度分析は、直接法と間接法の2つに大別される。直接環境傾度分析は、得られた環境データを分析に組み込み、環境と調査された調査区内の種組成との対応関係を調べる。一方、間接環境傾度分析は、調査された調査区や群集を、環境要因なしに種と調査区の配列を決め、ついで配列に関係する環境を抽出する。間接法には、主成分分析、(傾向化除去)対応分析などがある。狭義では、R.H. Whittaker (1967)が考案した、環境データと群集データの対応付け方法を指し、これは直接環境傾度分析に属する。正準対応分析(canonical correspondence analysis)は、環境要因を説明変数とした重回帰分析と対応分析を組み合わせた序列化手法なため、直接環境傾度分析に分類されることが多い。野外においては、必ずしも群集配置をうまく説明できる環境要因を抽出できるとは限らないので、直接・間接環傾度度分析は、適宜使い分けるべきである。

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気候的極相 (climatic climax)

(=気候極相、単極相, =mono-climax)

 F.E. Clementsが提唱した、遷移初期にはどのような群集であろうとも、最終的に1つの気候帯の中では唯一の極相に到達するという、気候的極相説にもとづく極相を指す。すなわち、極相は気候のみにより決められるとした極相観である。極相以外の植物群集は、すべて極相に向かい推移しているか、あるいは何らかの要因により推移が停滞した状態(亜極相など)にあると考える。極相は、優占種群が存在し、それらの種の安定性と永続性により認識される。気候的極相は、地球規模では、おおむね気候帯をもとにした群集区分であるバイオームに相当する。しかし、この極相概念は、実証性に乏しく、その後提案された多極相説、極相パターン説などの方がより遷移現象を説明しやすいことから、あまり用いられることはない概念となった。なお、現在の日本の多くの群集は、何らかの形で撹乱を受けた二次的な群集であり、気候的極相に相当する群集は、ほとんど存在しない(- 極相林)。

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極相(クライマックス)(climax)

 遷移系列上で、通常は最後に位置する群集を極相という(-遷移)。ただし、気候的極相説(単極相説)の立場と、土壌的極相説(多極相説)の立場では、その極相観は異なるが、多極相説の方が、より多くの現象をよく説明でき、さらに極相パターン説の出現にともない、気候的極相概念を用いることは廃れている。極相パターン説からは、明瞭な極相を定義する必要はなく極相は時間とともに変化する環境経度に沿って連続的に変化した最終段階と考える。いずれにしても、極相は、相対的には遷移初期から中期に見られる撹乱やストレスの高い群集に比べて、種の構成や群集構造の変化が小さく、平衡状態に達したか、それに近い状態にあると考えられる。実際には、極相と認識できる群集は、ギャップ形成等の撹乱により部分的に種の入れ替わりが起こり、様々なスケールでのモザイク状あるいはパッチ状の群集配置から構成されている。

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極相種 (climax species)

 主に極相群集に出現する種のことを指す。極相に出現する種のことなので、極相群集をもとに作成される潜在自然植生の構成種が、おおむね極相種と一致する。ただし、多極相説で用いる極相の方が、単極相説よりも概念的に広いのにみられるように、極相種の範囲は厳密なものではないが、極相種には先駆種と比較して、おおむね以下のような特徴がある。1) 種子は、大きく、散布距離が短く、寿命が短い。2) 植物体は、成長速度が遅く、耐陰性が高く、寿命が長い。3) 繁殖は、開始時期が遅く、有性繁殖への資源投資が少ない。日本で極相種とみなされる高木種は、温暖帯では、シイ・タブ・イスノキなどが、温帯ではブナ・ミズナラ・サワグルミなどが、冷温帯ではオオシラビソ・トドマツなどがあげられる。これらの極相と認識できる生態系に特徴的にみられる動物種も、極相種と呼べる。

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極相群集 (climax community)

(= climax vegetation, =極相群落、極相植生)

 極相に達したとみなされる群集を指す言葉である。ただし、極相概念が、気候的極相説、土壌的極相説などの説により定義が異なり、いずれの群集を極相群集と呼ぶかは立場により多少異なる。いずれにしても、極相群集は、群集の高い安定性と永続性をもとに認識できるとする点が、多くの極相概念間で一致している。ただし、安定性(stability)・永続性(persistence)の定義にも様々なものがある。一方、このことは、長期間維持されている群集である極相は、寿命や撹乱による様々な規模での部分的な群集構造の変化とその後の再生過程を経て、動的に維持されていることを意味する。A.S. Watt (1947)が提案した循環遷移(cyclic succession)は、群集が、さまざまな撹乱に応じた異なる発達段階の群集がモザイク状に入り組んだ形で成立する、という遷移観で、極相にもこれがあてはまるといえる。日本における代表的な極相群集は、森林となり、極相群集が、森林であることを強調するときに、特に極相林と呼ぶこともある。

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極相パターン説 (climax pattern theory)

 環境傾度に沿い群集は連続して配置されているという植生連続説(vegetation continuum concept)に基づく、極相のとらえ方で、極相は、様々な環境傾度に沿って空間的に連続した各種の個体群の重なりあいのパターンとして認識できるとする説を指す。すなわち、時間的・空間的にもっとも成熟した段階に出現する種の組み合わせにより極相は形成される。Whittakerは、群集間には明瞭な境界が存在せず、エコトーンが幅広く存在する証拠を示すことで、この結論に到達した。この説によれば、極相的な群集は以下のように整理される。1) 群集の生産力と構造、個体群組成が安定した状態にある。2) ただし、群集は、環境傾度に対応した個体群の組み合わせのバランスから形成されているものなので、必ずしも群集や極相の存在を認識する必要はない。極相パターン説を証明するために、Whittakerらは環境傾度分析を導入し、環境と植物群集の対応関係を示す解析手法が大きく発展した。

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極相林 (climax forest)

 極相群集の一形態で、特に、森林であることを強調する場合に極相林と呼ぶ。森林は、通常、降水量が樹木成長に適量以上である地域に成立するため、日本のように降水量が豊富な地域では、極相は森林となるのが普通で、おおむね極相群集と極相林が同意となる。ただし、気候的極相説と土壌的極相説では、極相概念が異なるため、極相林が何を指すかについて、見解が異なるが、現在では、土壌的極相に相当する群集を含めて極相林ということが多い。日本では、南から北への緯度傾度に沿って、①暖温帯域の、タブ・カシ類・シイ類などの常緑広葉樹林または照葉樹林、②温帯域の、ブナ林などの落葉広葉樹林、③冷温帯域の針広混交林とエゾマツ、トドマツに代表される針葉樹林が、潜在的には極相林と呼べる群集となる。しかし、林相的には、これらの森林に区分できる群集でも、日本では、人為の影響を強く受けているところも多く、極相林と呼べる群集やそれらが存在する地域は少ない。

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後極相 (postclimax) (=後安定相)

 気候的極相説の立場で用いられる用語で、気候的極相よりも発達あるいは進展した状態で成立している群集をいう。たとえば、本来の気候的極相は草本群集であるにもかかわらず、谷地形である等の理由で土壌水分が増し低木や高木が侵入し、草本群集よりも発達したようにみえる群集を形成しているような場合をさす。しかし、気候的極相説においてのみ使用される用語であり、現在は、ほとんど使われない。

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湿性遷移 (hydrarch succession)

(= 湿生遷移)

 群集遷移の一形態で、遷移の開始期に湿った環境から始まる遷移の総称である。その遷移は、まず沼沢地化といわれる湖沼の形成があり、ついでそれらの沼沢地が、周囲からの土砂の流入、植物の侵入とその遺骸の堆積、により陸地化していく2つの過程でなされる。したがって、植物相の変化は、植物プランクトンから水生植物(沈水植物、浮水植物、浮葉植物、挺水植物などに区分することもある)に変化する過程を経由し、ついで陸生植物が表れるという流れとなる。なお、この遷移系列を湿生遷移系列とよぶこともある。環境傾度上では、(地下)水位傾度が時間の経過とともに高いところから低いところに向かう群集変化と見ることができる。陸地化後は、乾生遷移の途中相のいずれかの部分に組み込まれる。ただし、ミズゴケ湿原や湿生ハンノキ低木林などは、水位が安定し、そこに長い年月にわたり高木の侵入がなければ、土壌的極相とみなせる。

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前極相(preclimax) (=前安定相)

 気候的極相の考え方にもとづく概念で、気候極相となるよりも前の段階で安定している群集を指す。例えば、微気象などの差異で、本来、極相は森林となるべき地域で発達している低木林などが前極相に相当する。気候が同一とみなされる地域では、より乾燥した状態で成立する群集が、より湿生な群集に対して、前極相と呼ばれることが多い。しかし、この用語は、気候的極相説においてのみ使用する概念であるため、現在では、ほとんど使われない。

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土壌的極相 (edaphic climax)

 多極相説(poly-climax theory)にもとづく極相概念では、同一の気候帯に属する地域でも、気候以外の要因、すなわち、土壌や微気象の違いにより、異なる極相群集が発達すると考える。それらの極相の中でも土壌要因により、群集構造を規定されている極相を指す。例えば、気候的極相説からはブナ林が気候的極相と考えられる日本の温帯域においても、乾燥土壌ではアカマツ林が、過湿土壌ではサワグルミ林などが発達し長い時間定着することがある。気候的極相では、これらの森林は亜極相として認識されるが、多極相的立場では、これらは土壌的に安定した極相群集とみなす。ほかにも、過湿土壌状態や低温のために、高木が侵入できない状態が長期間継続している湿原や高山草原などは土壌的極相とみなせる。また、人為により長期間維持されているススキ草地などの群集も土壌的極相とみなせる。また、多極相説からは、土壌的極相のほかに、地形極相、生物極相など、さまざまな極相を想定することができる。

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1977-78年噴火後の有珠山における遷移

'火山における植物群集動態' も参照されたい

  1. 転石苔を生さず
    その遷移においてコケ期はない (Tsuyuzaki 1987)
  2. ない袖は振れない
    その遷移において一年生草本期はない (Tsuyuzaki 1994)
  3. 縁の下の力持ち
    遷移初期から栄養繁殖起源の多年生草本が優占する (Tsuyuzaki 1989)
  4. 兎と亀の物語
    初期に回復が早く見えたところは回復が遅く、初期に裸地であったところの方が森林化が早い部分がある (Tsuyuzaki 2009)
    G8サミット「洞爺湖環境フォーラム」要旨

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参考 References

英文文献

  • 露崎史朗. 1993. 火山遷移は一次遷移か. 生物科学, 岩波書店 45: 177-181
  • 露崎史朗. 2001. 火山遷移初期動態に関する研究. 日本生態学会誌 51: 13-22 改訂版

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