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露崎 史朗 (Shiro TSUYUZAKI)
植物群集生態学・環境保全学

有珠山/サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ
(2011年3月20日掲載. 2011年10月21日更新)

火山灰の下から発芽するタネ

文・写真 露崎史朗


有 珠 山 に 見 る 森 の 再 生

ファウラ (2008) 20: 34-35 写真・文章は一部差替


火山再生と遷移

噴火のたびに壊滅的な被害を受ける植生。
有珠山周辺の森林は、しかし、その都度たくましく再生してきた。
死の世界のように見える火山堆積物の下から、
植物はどのように芽を出し、そして森を作るのだろうか。

fireweed 火山噴火を含めた撹乱直後によく出現するヤナギランの赤い花。有珠山火口原でみられたものだが、成長はよくない。ヤナギランの左右に見える植物は、やはり撹乱地によく出現するヤマハハコ。ヤナギランは、合州国では、ファイヤーウィード fireweed(火事雑草)と呼ばれ、火災跡地によく出現する。1991年7月30日撮影。

火山植生遷移

 一般に、火山の周辺では、噴火直後は土壌栄養が極めて乏しいため維管束植物(種子植物とシダ類)は侵入定着できず、窒素固定菌を持つ地衣類や、岩の隙間の水分を利用できるコケ類などがまず侵入してくる。そして時間が経過し、これらの植物によって土壌栄養が貯まると草本、特に一年生草本が定着する。そして多年生草本に置き換わり、さらに低木、陽樹(生長過程で多くの日光を必要とする樹種。シラカンバ、ミズナラなど)、陰樹(日光が少なくても生長できる樹種。イタヤカエデ、ブナなど)へと置き換わっていく。陰樹林をもって、遷移は最終段階となり安定した状態つまり極相になると説明される。

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1977-78年の有珠山噴火から10年を経過した有珠山火口原の景観。特に植物の回復が遅い部分だが、テフラがまだ流されることと、噴火前には結構大きな森林があったことが分かる。1988年4月29日撮影。
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火山噴火直後には、植生回復が最も早かったオオイタドリの開花。1998年8月4日撮影。

 しかし、有珠山周辺の植生はこうした一般的な遷移とは大きく異なっている。もし火山の影響がなければ、この地域での極相はミズナラ-エゾイタヤ-シナノキ林になると考えられるが、実際には噴火の影響を強く受けているため、極相林を見つけることは難しい。
 火山噴火は、植物の立場から見れば噴出物の違いをもとに、溶岩性の噴火と、火山灰・軽石のような噴火降灰物(テフラ)性の噴火の2つに分けられる。両者は、噴火直後に土壌栄養が乏しいことは共通だが、溶岩は冷え固まれば動かないが、テフラは噴火が治まってからも降雨、融雪、強風により流されるという大きな違いがある。その結果、遷移初期には、侵入する植物が大きく異なることがある。有珠山はまさに典型的な後者の例に当てはまる。

seeds 噴火直後にもっとも早く、テフラ上に再生した植物の1種であるオオイタドリ。これらの中には、噴火前の土の中で生きていて、そこから再生したものもある。1983年撮影。
有珠山での遷移の特徴

 テフラ性噴火であり、そして数十年ごとに周期的に噴火するという有珠山ならではの特性から、有珠山周辺での植物の遷移は次の四つの特徴が見られる。

seeds 噴火から20年後に1 m以上の深さに埋もれていた土を掘り取り、温室で潅水することで発芽した植物。大きな葉は、エゾノギシギシ。これらの植物は軽石・火山灰の下で20年生存していたことになる (撮影 後藤真咲)。

 これらの特徴は、テフラが噴火の主体である渡島駒ヶ岳や米国セントヘレンズ山においても概ね共通事象であり、冷温帯域のテフラ性噴火後の植物再生の共通点と思われる。


洞爺湖と生物(植物編)

 多分、上の原稿を雛形に「春木雅寛・露崎史朗. 2008. 植生復帰. 洞爺湖・有珠火山地域の環境と資源企画展示ガイドブック. 北海道大学総合博物館, 札幌. pp. 16-19」のために大至急で書いたもの。写真は全て同一である。
 さらなる元板は 有珠山の植生変化について

Case 2. 軽石・火山灰の下に鍵がある

洞爺湖と有珠山の植生

 火山噴火は、自然攪乱の横綱格である大規模撹乱であり、その影響力は計り知れない。日本は火山大国であり、「島原大変肥後迷惑」など数多くの火山噴火に由来した話が聞かれる。
 洞爺湖は、北海道南西部にあり支笏洞爺国立公園の一部をなすカルデラ湖である。その成因は火山噴火であるが、さらに、その南側には有珠火山群がある。この火山群には、もっとも標高のある大有珠(標高は737 m前後)を始めとして、小有珠、四十三山、昭和新山、有珠新山などの山々が含まれている。有珠山周辺の植生は、噴火の影響を強く受けており、極相を見つけることは難しい。しかし、火山の影響がなければ、その極相は、ミズナラ-エゾイタヤ-シナノキ林となると考えられる。このことは、有珠山には天然の針葉樹類がほとんどないこと、斜面の造林地間にミズナラ林が見られること、松浦武四郎の「東蝦夷日誌」に記録されている善光寺はコジマエンレイソウで有名だが、その林はミズナラ林に代表されることなどから、おおむね間違いない。

火山植生と遷移

 火山遷移は、教科書的な説明では、噴火直後には、土壌栄養が極めて乏しく維管束植物は侵入定着できず、窒素固定菌を有する地衣類や、岩の隙間の水分を利用できるコケ類などが侵入してくる。そして、時間が経過し、これらの植物によって土壌栄養が貯まると草本、特に、一年生草本が定着してくる。そして、多年生草本に置き換わり、さらに低木、陽樹、陰樹と置き換わっていく。そして、陰樹林をもって、日本では極相となる、と説明される。果たして、これは全ての火山でいえるのだろうか。
 火山噴火は、植物の立場に立てば噴出物をもとに、溶岩性の噴火と、火山灰・軽石のような噴火降灰物(テフラ)性の噴火の2つに分けられる。両者は、噴火直後に土壌栄養が乏しいことは共通だが、溶岩は冷え固まれば動かないが、テフラは噴火が治まってからも降雨、融雪、強風により流される、という大きな違いがある。その結果、遷移初期には、侵入する植物が大きく異なることがある。

タネもあれば芋もあるが、ないものもある-有珠山を調べる世界的意義-

 実は、有珠山の遷移は上で述べてきたものと大きく異なり、それは4つの格言でまとめることができる(重定・露崎 2008)。

  1. 転石苔を生さず
  2. ない袖は振れない
  3. 縁の下の力持ち
  4. 兎と亀の競争

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