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露崎 史朗 (Shiro TSUYUZAKI)
植物群集生態学・環境保全学

有珠山/サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ
(2010年2月7日更新)

植物分類学 (Plant taxonomy)

はじめに (なぜこのページを作るのか)

[ 学名 | 総論 | 各論 | 参考 | 図鑑等 ]


 学生のレポート・論文等で学名の書き方の間違いが、最近減ったような、減らないような。ともあれ、いい加減な学名は論文を書く時にも信頼性を失う原因の一つになることは疑いない。10種くらい学名が書いてあって、そのうち3つがコケてる論文を審査させされたことがあるが、ここまでひどいと、データそのものまで疑わしくなる。以下のページ等を参考に自分が正しいと思う学名を使うことが重要である。
 もう一つの目的は、完璧に 趣味 なので、植物の見分け方等も、少しずつだが書いていこうとは思う(これも趣味)。
 良く聞かれることの一つに、「 図鑑 」は何が良いか」というのがあるが、「この図鑑」と1冊だけを薦めることはできない。というのは、どの図鑑にも一長一短がある。「これ一冊でOK」とかいう、受験参考書みたいな図鑑はない。いくつかの図鑑を比べてみることも重要である。学名や分類キーがかなり異なっていることが分かる。

学名 (scientific name)

 学名について、面白い一文を見つけたので、ここに載せておきたい。どこかの大学の3年または4年の試験解答に書いてあった書き込みのようである。

Latin is a language as dead as dead can be.
First it killed the Romans, and now it's killing me!

 その講義は、この嘆きを解消することと学名の必要性を説く授業で、そのイントロに紹介されていた。

ゼミ等で目にする過ち (気づいたらメモ)
  1. 悪名高き マイクロソフト ワードユーザーが硬い意志と親切心からやってくれる、人名略記に伴うピリオド、subsp., var.等のピリオドの直ぐ後ろの文字が大文字に自動変換されているのに気づかない。

    誤: Acer palmatum Thunb. Var. Amoenum Ohwi
    正: Acer palmatum Thunb. var. amoenum Ohwi

     さらに、すごいのがNicotiana attenuataと入力したら、勝手にattenuateと直された。属名と種小名の性は統一するのが約束だろーが! と怒鳴ってみたり。
  2. 学名のフォントスタイルは統一する。学名はイタリックにすると思っている人が結構いるが、統一されていれば、必ずイタリックにしなくてはならないという規則はない。ただし、雑誌によっては投稿規程に学名はイタリックにすると指示してあるものもある。
     属名、種小名をイタリックにしたら、亜種名、変種名もイタリックにする(上例)。図鑑等では、自分が採用した学名をボールドで書き、異名と考えるものをイタリック等にしているものもある。
  3. 命名者を書くときには、亜種・変種・品種名命名者のみではなく、種小名命名者も書く。図鑑等では、普通は、種より下の分類群の説明の前に種の説明がなされているため、種小名命名者を省略している。論文等で、事前に種小名命名者を書いていない限り、それは間違いである。

    誤: Acer palmatum var. amoenum Ohwi
    正: 上記
    長い例ではAster ageratoides Turcz. var. ovatus (Franch et. Savat.) Nakai f. yezoensis (Kitam. et Hara) Ohwiとなる。なお、Asterについては学名見解が統一されていないので、上の学名を採用していない人も多い。
    ただし、自動名については、亜種・変種名命名者は省略できる。
    例: Platycerium bifurcatum (Cav.) C.Chr. ssp. bifurcatum var. bifurcatum

  4. 複数の文献から学名を取る場合、人名等の略記の仕方が異なる場合がある。この場合には、自分の論文の中では統一する。
     人名Linnaeus(リンネ大先生)は、略さないかLinn.あるいはL.と略され書かれているので、いずれか一つを用いる。ちなみに一文字の略が許されているのはリンネだけ。
  5. 種小名に人名・地名等の固有名詞が用いられる場合、本来は大文字だが、小文字にしてもよい。論文中では統一する。小文字を使う方が増えている。

    Populus Maximowiczii、あるいは Populus maximowiczii

     本来、ラテン語は、今でいう大文字しかなく、後に小文字ができたので、大文字・小文字の区別はなかった。後に、固有名詞は最初の一文字を大文字表記するようになった。「原色日本植物図鑑」では、種小名が人名由来の場合には最初の一文字を大文字表記している。

未同定種 (sp.とspp.)

 名前が種レベルではつけられない場合は、未同定種として扱うしかないが、その記載の仕方については、なんでもかんでもsp.をつければ良いというわけではなく、

sp. (sp) = speciesの単数形, single species
spp. (spp) = speciesの複数形, (probably) plural species

ということで、意味がまったく違うので、注意したい。

 属レベルまで明らかであれば、
Salix sp. = ヤナギ属の1種だが未同定
Salix spp. = ヤナギ属は確かだが数種が混じる(可能性もある)。ヤナギ属に属する全ての種という意味もあるが、生態学の論文では混じるという意味がほとんどだろう。
 同様に、キク科であることは分かるならば
Asteraceae sp.やAsteraceae spp.とするが、意味は上記と同様に異なる。

読み方について

 学名はラテン語で書かれているので、読み方もラテン語であるのが本当なのだろう。しかし、今の地球上にラテン語を話す人はいない。米国では、当然、米語読みをする。しかし、ワシントン大学にいた時に、どうにも米語読みに抵抗を感じて、日本ではラテン語読みをすると言ったら、今の時代に誰がラテン語を話すのか、と問い返されてしまった。ローマ字読みをするのが、ラテン語読みに一番近いのだろうが、ここは、考えようで、ローマ字読みすると、英語圏では、全く通じない。日本でも、自分が学生の頃はPinusは「ピヌス」と言う人が多かったが、今では、「パイナス」と英語読みをする人が増えている。
 結局のところ、現状では、国内では、ローマ字読みでも英語読みでも可、海を越えたら、英語読みをするのが、意思の疎通を一番しやすい、といったところだろうか。ただし、ゼミ中とかに、これをチャンポンに使われると聞いてる方が混乱するので、自分のスタンスを決めておくことは大事である。

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総論

学名

学名検索データベースへのリンク

 学名については、国際植物命名規約 (International Code of Botanical Nomenclature, ICBN)があることを知る。属名、種名などの表示方法とラベルの書き方というページは、園芸植物の学名の書き方を説明しているが、その中の原種記載についてのルールは全く同じなので参考になる。

 個々の学名に自身がないときには、Royal Botanic Garden, Kew の学名データベースか、The International Plant Names Index (IPNI) を参照する。なお、近年のDNA解析等による系統関係については、Angiosperm Phylogeny Website等で見ることができる。ただし、分類と系統は、時として別問題となるのことに注意されたい。なお、英国自然史博物館(Natural History Museum)のホームページで見ることができるが国際分類学イニシャティブ(Global Taxonomy Initiative [ Japan , 日本版 ])プロジェクトが立ち上がり、世界中の分類学情報を網羅的に整理する試みが始まっている。

日本分類学会連合: この中の、 加盟学会 を見ると日本の分類学の現状が分かるはず。

植物分類学会ページの中のFlora of Japanの検索機能を使うとFlora of Japan (講談社)で用いられてる学名を知ることができる。

植物学リソース: 3000以上の植物関連サイトをテーマ別、種類別、地域別に分類したリンク集
生物多様性条約 (環境庁自然環境局 生物多様性センター)
東京都立大学牧野標本館所蔵 タイプ標本データベース
Harvard University Herbaria Databases

Links for plant taxonomy [福島大学教育学部理科教育教室黒沢研究室]

- 国際植物命名規約 (ICBN)

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見分けるために
形態
花・果実
分類基準として多くが花(そして果実)形態を採用するので当然といえば当然。しかし、野外調査では、必ずこれらの器官があるとは限らないので、それ以外の見分けるポイントを知っておく必要がある。
触った感じとかいう、図鑑とかで表現しづらい部分も大事なので... 触ってみるしかない。葉に多型がある場合もある。
匍匐茎や地下茎も茎。
地下部
図鑑を見るとよく、「地下部は...」とか、「根茎を作る」とか書いてある。地上部だけを持って教室に戻ってきても、もう遅い。
生態
生息地
特に光と水の状態を見ておく。
撹乱 撹乱の度合いは、火山では大事だ(スキー場でも)。
季節性
花期、結実期はいつか。

 標本を作ろう! 似た植物を比較するには、これで比べるしかない。写真では、触った感じは分からない(-写真を撮るなという意味ではない。むしろ、撮るべき-)。標本といっても、押し花そのもののことなので、子供の頃の「夏休みの学習」とかを思い出し楽しみながらながらやれば十分なので、決して難しいことではない。標本採集時には、採集日・場所(locality)を記録しておくことは、もちろんだが、上記にあるような観察事項も記録していると、きっと、良いことがあるはず。

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同種異名 (synonym) について

 分類学上のシノニムsynonymは、同種異名、異名、同物異名などと訳され、同種とみなされる分類群(標本)が複数の学名を持つことを意味する。同種異名は、以下の3つの場合に発生する。

  1. 命名規約上のシノニムnomenclatural synonyms: 先取権上の同種異名
  2. 分類見解上のシノニムtaxonomi(cal) synonyms: 見解により異なる学名を与えられている
  3. 同時多発シノニムsuperfluous synonyms (これは勝手な訳): 同時に複数の名前が与えられた

 (1), (3)については、命名規約に基づき正しい名前(正名, correct name)が与えられる。正名として選ばれたシノニムを基礎異名basionymと呼ぶ。例外として、保留名(保存名) conserved name / nomen conservandum (nom. cons.)がある。保留名は、既に広く一般に使用される名前が先取権により同種異名として処理されると学名が混乱するが、命名規約の目的は学名混乱を避けることであり、その規約精神に反するため、先取権を適用しない場合に設けられる。保留名の可否についてはは命名規約委員会で議論し決定される。

 さて、植生記載等で問題となるのは、(2)の場合である。これについて、もっとも安直な解決策は、雑誌"Plant Ecology (formerly Vegetatio)"に見られるように、学名は指定した文献や図鑑等に全て従うことを明記し、私情を一切挟まず、その文献の学名に従うことである。ただし、どの文献に従うかは、自分の判断が必要となる。個人的には、なんでもかんでも一番新しい文献に従えば、それで良いというわけではないと思っている。例えば、「日本の野生植物」は相当数の研究者が各分類群について分担執筆しているため、分類群によっては承服できない学名もかなりある。その場合、学名に命名者を明記することで、その学名を用いる理由は判断される。最近、あちこちのホームページからのつぎはぎとしか思えない、統一性のない学名の羅列をみることがあるが、まったくもって頂けない。

 和名については、命名規約があるわけではないので、どうでもよいと言えば、どうでもよいことではある。ただし、標準和名(自分にとって何が標準和名かは謎だが)を使用することが提唱されており、あまり用いられていない和名を用いると、読者も混乱するし、できるだけ広く用いられている名前を使用するように努めるにこしたことはない。学名を併記するのも、混乱を避ける一つの方法である。

 同種異名を悪用して、輸入禁止生物が「別種として」持ち込まれることがある(あった)らしい。ある意味、学名が混乱していることが原因ともなるわけだが、悪党につける薬はなし、といったところだろうか。

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各論

フロラ (維管束植物全般)・地域別

ブタナ Hypochaeris radicata の学名について

日本
帰化植物・侵入植物
(西)オーストラリア (「鉱山廃坑跡地における植物群集の再生」)に関連して

英文参考リンクは こちら

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分類群
ヒルガオ科 アサガオ分類学
カエデ科 かえでとモミジ
スミレ科 Viola Index Japan 分類上難しいグループへの挑戦! 有料化されないで欲しい
イネ科 竹 Bamboo Home Page
カヤツリグサ科 カヤツリグサ科植物図鑑 岡山理科大学・星野研究室作成 (スゲの会)
羊歯植物 Checklist of world ferns
蘚苔類 ミズゴケ US Environmental Protection Agency: 分類以外が中心だが有効
菌類 日本産糸状菌類
内生菌
菌類は植物に入れないが... 必要なので
藻類 藻類講座 なんとなく懐かしいもので ...
地衣類 地衣類研究会 日本産地衣類チェックリスト
参考

講義で使ったもの。英文なので、そちらのページへ飛ぶ。

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