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露崎 史朗 (Shiro TSUYUZAKI)
植物群集生態学・環境保全学

有珠山/サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ
(2010年5月8日更新)

研究概要

目次

[ テーマ | 火山遷移 | 二次遷移 (スキー場造成・採掘・森林火災・動物)| 湿原植生 と保全 ]

共通テーマ: 環境変化に伴う植物群集動態機構の解明

 撹乱(disturbance)直後から極相に至るまでの植物群集動態および 遷移 (succession)様式を、包含的に説明できるモデル構築を目指している。具体的には、一次遷移(火山)と二次遷移を分けることなく、乾性遷移と湿性遷移を分けることなく、さらに人為撹乱を考慮しても説明可能な遷移理論を構築したい。このことが、生態系の保全と復元につながるのだろう。

[ I have a dream today ... ] (2010年専攻セミナー教員紹介資料)

 森林火災やスキー場に関わる研究は、温暖化話と関わったり、紫外線が植物に与える影響について研究したい学生が発生したりで、I hyave a dream ...状態となりつつある。

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(1) 火山噴火初期植物群集動態

1977-78年噴火 - 有珠山山頂部1985年の姿。麓に見える町並みが洞爺湖温泉街  1977-78年に噴火した有珠山山頂域に永久方形区を設定し現在まで調査を行っている。植生回復は、栄養繁殖種子散布埋土種子(seedbank)・人為散布の4起源が主である(* 有珠山フローラリスト *)。主に、一年生草本は埋土種子から、木本植物(ヤナギ類やカンバ類)は種子散布により供給されている。噴火から10年程度は、 オオイタドリ オオブキ のような大型多年生草本の栄養繁殖が植生回復に大きく寄与していた。植生発達決定因子としては、初期には植物供給起源からの距離・土壌栄養状態・土壌安定性の3つが主要である。植物群集構造は、多様性等の側面から見ると大きくは変化していない。また、先に侵入した植物の特性により遷移速度が決められている。

 研究過程で効率の良い土壌中からの埋土種子抽出法(遠心浮上法 centrifuged flotation method)を開発し、噴火から30年を経過しても、なお、火山灰下ではかなり高密度で種子が生存していることを証明した。写真の花は、噴火30年にテフラ下に埋もれていた旧表土を採取し、その土壌中から発芽し開花したオトギリソウ(Hypericum erectum)のものである。

Summit area in 1985

* 埋土種子については: 植物科学の新展開 - 分子から群集まで広視野研究をめざす-

 2000年噴火火口周辺に永久調査区を設定し現在まで調査を継続しているが、砂防工事が火口近くまで行われており、今後継続調査が可能かどうかは分からない。その一方で、日本初のジオパーク GeoPark に指定され、開発と観光の狭間に置かれた微妙な地域となった。

* 各地の火山での調査の様子 (ガイアグループNewsletter 2001.6 より)

 1980年に噴火した米国セントヘレンズ山において調査を行い、それを有珠山の植生回復と比較し撹乱強度が似ていれば種組成を異にしても機能的・構造的に類似した植物群落が発達することを示した。

 火山のような撹乱地においては帰化植物が初期に侵入することが認められる。北海道渡島駒ケ岳においては、非在来種であるカラマツが優占している。カラマツを材料として帰化植物の侵入定着特性を明らかにするために、定着状況を把握し、その侵入機構について調査中している。駒ケ岳では、菌根菌の定着状況と植物成長の関係、定着促進効果(ファシリテーション)が遷移初期に与える影響等も調べた。

* 有珠山における植物群集動態
* 駒ケ岳における植物群集動態

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(2) 二次遷移植生動態

 スキー場・耕作放棄地・採掘跡地等、人為撹乱地の調査が中心であったが、基本的には、自然撹乱も人為撹乱も同じ図式で書けるはずである。その検証のためにも、2005年より調査を始めたアラスカ森林火災跡の植生回復過程は明らかとしたい。また、台風等、その他の自然撹乱跡も調査したい。

 知床半島の知床100 m²運動の行われた近くの耕作放棄地では、一般に二次遷移では埋土種子が植生回復上重要なものとなるが、ここでは埋土種子集団の発達は悪く、植生回復にあまり寄与しておらず、推移が遅い原因となっていた。

 フィリピン、マキリング山においてアグロフォレストリー(agroforestry)導入による森林保全効果を検討した。現地の人達は、自分がやっているのがそうなのだという自覚がない点が面白い。クリスマスと治安状態から、ピナツボ山を見る以外は遠出もできず、調べられることは中軸分枝数(number of veins, NV)位だったもので、大学の近くでずっとシダ植物のサイズ測定をしていた。


スキー場植生

* スキー場斜面における植物群集動態

 北海道・新潟県スキー場斜面の植生と環境データを集積し斜面植生の推移様式の検討を行っている。スキー場斜面植生発達は、人為干渉形態・斜面斜度・周辺植生・土壌侵食等が主に規定され、造成時の人為干渉が軽微なスキー場ですら、土壌移動は広範に発生し植物侵入を抑制している。北海道低地スキー場では、様々な草本群集が発達するが、ススキ(Miscanthus sinensis)草地を除くと木本植物定着は不良であり、帰化植物の侵入は木本植物の侵入を阻害する。一方、高地スキー場ではススキ草地が発達せず木本植物侵入は不良である。これらの傾向は本州のスキー場でも同様であり、木本植物侵入定着による迅速な生態系回復にはススキ草地導入が鍵となる。

中山峠スキー場の夏。何を感じますか。  米国(ワシントン州、オレゴン州)のスキー場植生と日本のスキー場植生との比較を行い、植物群集発達様式が2国間で異なるのは、造成方法を含めた人為撹乱強度によることを示した。カナダ西海岸の州立公園および国立公園内にあるスキー場を調査した。また、これらの指定公園の法的規制の特徴を調べた。これらの成果を踏まえスキー場造成に伴う環境問題を、北海道および新潟県を例に生態学的側面および経済・社会側面から整理した。
 北海道では、2000年に入り10以上のスキー場閉鎖(休業)された。スキー場として使われてるのなら、まだ我慢もできるが、斜面は今、一体どうなっているのだろう... * そういうページ をここに作りたい。


鉱山廃鉱跡地における植生回復と復元

* 鉱山跡地における植物群集動態

 自然撹乱と人為撹乱をつなぐ糸として鉱山廃坑跡地が適しているのではないか、という視点から研究を始めた。西オーストラリアのボーキサイト採掘地を調べたが、これは社会問題が大きくからみ、悩ましい。煙誘導種子発芽に関する研究のアイデアと手法は、オーストラリアで会得することができた。煙により種子発芽が誘導される現象は、火災の多い地中海性気候の地域から数多く報告されているが、日本でも煙誘導発芽をする種はゼロではなかった。


大規模森林火災後の植生回復

* 火災生態学 fire ecology

Wildfire  火災後の植物群集発達様式は、火災の頻度や規模に規定される。温暖化が進めば、火災は降水量や気象の変化に伴い、頻度も強度も変化すると予測され、特に、火災強度が増せばタイガを始めとする森林はCO2の貯蔵源から放出源に変化する。これまでの調査から、クロトウヒ林における森林火災と、その後の回復の鍵はミズゴケであることが明らかとなり、今後、ミズゴケを復元させることによりクロトウヒ林を維持する手法を検討する予定である。また、地表面アルベドは、植生が回復するまで、低い値のまま推移するものと予測され、現在、永久凍土や表面温度の分布との関係を調べている。

動物撹乱

 撹乱とは限らないが、これまでに扱った動物は以下の通り。アリとかもあるけど。

  • エゾシカ: 洞爺湖中島における草原植生への影響
  • ヤク: 過放牧が中国チベット地区における湿原植生に与える影響
  • レミング(ネズミだけど): バイジャーラーヒ周辺におけるシベリアレミングによる植生改変パターン
  • ネズミ: 有珠山火口原におけるエゾヤチネズミの定着特性
  • カラス: 駒ケ岳におけるハシブトガラスによる種子分散

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(3) 湿原遷移と保全

Drosera  釧路、中国大陸、シベリア、アラスカの湿原において調査を行った。スケール依存的に、水位が植生分化を規定し、ついで物理化学要因が重要となることを示した。また、湿原における森林構造・野地坊主(tussock)・放牧が植生に与える影響を調査した。また、湿原においてメタン放出量は、物理化学的要因のほかに植物群集組成が大きく関与していることを示した。地球温暖化のもと湿原における植物群集構造は大きく変化する可能性は高く、保全生態に関する研究の必要性を感じる。

 サロベツ湿原では、多くの学生が調査しているので、詳細は学生に聞く方がよい。サロベツ泥炭湿原の植生回復機構も参照されたい。

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湿原の植物と保全
北海道の自然環境再考: その危機的現象をとらえる湿原の保全と復元 -サロベツ湿原を事例として-


 これらがきっかけとなった訳でもないが、日本では火山・湿原は国立公園等に指定されていることが多く、国立公園における生態系管理も考えていかねば、と思う。有珠山は洞爺支笏国立公園のど真ん中にあり、私の調査地は特別保護地区の中だが、そこには、有珠山には生えている訳もないアカエゾマツが堂々と植えられている。これでいいのか。復元についても悩ましい。

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