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(2016年10月15日更新) [ 日本語 | English ]

レンズ (lens)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

[ 光学 | 顕微鏡 | カメラ | プレパラート ]

光学 (optics)


索引
光の作用に関し研究 本影 umbra: 点光源 → 半影 penumbra + 本影 umbra: 線光源

蜃気楼 mirage: 熱(冷気)のため大気中で光が屈折し、空中や地上に何か物が有るように見える現象

ガリレイ光学 Galilean optics
光エネルギー: 発光体luminous body (発光emission)

→ 入射(光)線incident ray
→ 入射面 inclined plane
→ 反射 (物体を通し伝えられる)
→ 照らされた物体 illuminated body

光の広がり vergence ∝-1 距離 (単位, ジオプタ diopter, D) < 0

Ex. 1/0.5 × (-1) = -2D
→ 自然光: 発散しかありえない
↔ 収束(人工光で可能) (D > 0) → 光学システム

レンズ lens, L

光の広がりを変える特性を持つ物体
ジオプタ度数 diopter power: レンズ度数をジオプタで表したもの

口径 aperture: 穴・管等の円筒形物内径(垂直断面の内側直径) (aperture: 隙間, 開口)

1. 円筒形物の内径
2. レンズ等の有効直径
3. 軍事における口径

f値 f-number: レンズの焦点距離を入射瞳径(レンズの光束の大きさ)で割った値

A) プラスレンズ(+レンズ)
= 凸レンズ convex lens (converging lens)
ジオプター増 = 発散 dispersion 減

Ex. +3Dのレンズを0.5 mの点に置く
レンズの公式 lens equation: U + P = V

lens lens

Cf. 鏡の公式 mirror equation

光軸 optical axis: 光曲がらず通過

→ 軸上点axial point (≈ 節点 nodal point - 薄レンズで概ね同じ)

X (点源 point source), X' (像点) ≡ 共役点 conjugate points - 像の発信源と受信点
1/U = u [Xからのレンズまでの距離], 1/V = v [X'からの距離]

→ レンズ距離動かす: +3DレンズはXから33 cmの距離で無限距離で像を結ぶ → 焦点面(焦平面) focal plane

Def. 第1焦点 primary focal point (focus, pl. foci), F: 像点が無限となる距離

lens lens

Def. 焦点距離 focal length, f = 1/P = 1/(レンズの屈折力 = ジオプター)

Ex. +14D → f = 1/(+14) ≈ 0.0714 m

Def. 第2焦点secondary focal point, F': 無限遠上の物点の像を結ぶ

lens lens

→ +3DのレンズをXに25 cmまで近づける

→ U + P = -4 + 3 = -1 = V < 0
→ (みかけの)X'はXと同じ側: 1/V = v, 1/(-1D) = -1 m
人の目にはレンズの1 m向こうにXがあるように見える
Ex. 目とレンズの距離が10 cm → 1/(-1.1) = -0.91D
Q. 更に目をレンズに近づけDの変化を求めよ → X' ≈ X

表. +3Dレンズにおける物体距離と像距離の関係 (単位 cm)

物体との距離 → 像との距離
∞ → +33 (F')
-50 → +100
-40 → +200
-33 (F) → ∞
-25 → -100
-5 -→ 5.9

B) マイナスレンズ(-レンズ)
= 凹レンズ concave lens (diverging lens): ジオプター減 = 発散 dispersion 増

lens
lens

Ex. 1. X = 0.25 m → U = 1/(-0.25) = -4D, P = -3 ∴ V = -4 -3 = -7

→ 像位置: X’ = -(1/7D) = -14.1 cm

Ex. 2. X = ∞ → U = 0, P = -3 ∴ V = -3

→ X' = F'
像image: 実像real image (X) ↔ 虚像virtual image (X')

表. -3Dレンズにおける物体距離と像距離の関係 (単位 cm)

+25 → +100
+33 (F) → ∞
+100 → -50
∞ → -33 (F')
-33 → -16.7
-25 → -14.1
-10 → -6.9
Law. 物体とその像は(速さは違うが)同じ方向に動く

物体空間と像空間

レンズに当たる前に物体面から出る光 = "物体空間"に位置する
レンズ通過後の光 = "像空間"に位置する
→ レンズの同じ側に表れることもある

Q. +4Dレンズを用い物体と像を1 mにするには、レンズを物体と像の間のどの位置に置くか
A. X-X' = 1 m, u = 物体の距離, v = 像の距離 → v = 1 - u

レンズは物体と像の間 → U = -1/u (レンズ面でのジオプターは負), V = 1/(1 - u)
U + P = V ∴ -1/u + 4 = 1/(1 - u) → 1 - u = v = 1/2 → レンズは物体と像の両方から50 cm
レンズを間に置くという制限をはずすと解は2つになる

C) 複合レンズ
複数の薄いレンズの組み合わせ → L1, L2, …, Li, … Ln

レンズ間に隙間がある → 像位置変化
レンズ順に解く: L1通過光 → L2受け取る → … → Li通過光 → Li+1が受け取る →

Ex. 3枚のレンズ

L1 = +2D, L2 = +1D, L3 = -4D
X-L1 = 1 m, L1 - L2 = 25 cm, L2 - L3 = 23 cm
lens L1
lens L2 lens L3
L1: U + P = -1 + 2 = V
L2: U = +1/0.75 ≈ +1.33D → U + P = 1.33 + 1 = 2.33 = V
L3: U = +1/0.2 = +5D → U + P = +5 -4 = 1

レンズ法則

law of lens

N: 節点, F: 第1焦点, F': 第2焦点

  1. 主光線 = 節点を通る光線: 直進する
  2. 第1焦点を通る光線: 軸と平行にレンズから出る
  3. レンズ軸に平行な光線: 物体側全光線は像空間で第2焦点を通る
    (2), (3) → A'を通る = 像点
→ 2本の線が求まれば、像点(= 焦点距離)が求められる [応用範囲広い]
倍率 maginitude, M
= (像の大きさ)/(物体の大きさ) = (像の距離)/(物体の距離)

< 1 → 縮小 minification

直線倍率 linear magnification, M
≡ I/O: 物体と像との大きさ(長さ)の比

→ (空間屈折率を考慮しなければ)節点を通る光線のみで求められる

law of lens

ΔAXN ∝ ΔA'X'N → I = A'X', O = AX, v = NX', u = XN
M = I/O = A'X'/AX = NX'/XN = v/u
v = 1/V, u = 1/U ∴ M = U/V

Def. 正立: M > 0, 倒立: M < 0
Q. 映写レンズ F = 5 cm , 35 mmスライドフィルム u = 6 cm → 最適なスクリーンの位置と映し出される像の大きさを求めよ

A. U + P = V → -1/0.06 + 1/0.05 = V = 1/v = +0.3 (= 30 cm)

M = v/u = 30/-6 = -5 (= 5倍) ∴ 175 cmの大きさ(ただし倒立)

  • Rubin ML. 1993. Optics for clinicians (2nd edn.). Triad Publishing Co., Gainseville (田辺正明(訳) 2002. 臨床医のための光学)

望遠鏡 (telescope)


天体望遠鏡 astronomical telescope

ガリレイ式望遠鏡 = 屈折型望遠鏡refracting telescope telscope

Cf. 反射型望遠鏡reflecting telescope

角倍率 angular magnification, M
≡ |θ2/θ1|

≈ 見かけの大きさの比
h = F1X' = F2X'
tanθ1 ≈ h/f1, tanθ2 ≈ h/f2
→ M = |f1/f2| = |L2/L1|

倍率 = (接眼レンズ屈折力)/(対物レンズ屈折力)

魚眼レンズ fisheye lens
広角レンズ wide-angle lens
望遠レンズ telephoto

telscope
軸倍率 axial magnification
∝ (直線倍率)2
主要点 cardinal points: 6点(2主点 + 2節点 + 2焦点)

主点: 主平面のレンズ軸との交点
節点: 厚みのあるレンズ(薄いレンズでは軸上点に近似)

N: 第1節点, N': 第2節点

屈折 refraction
物質の誘電率と透磁率から電磁波速度決まる = 物質固有値 → 物質境目で屈折発生
屈折率 refractive index or index of refraction
= 物質屈折率 index of refraction of a substance, n

n = cv/cm

cv: 真空中の光速度(実用上は空気中でよい)
cm: 物質(媒質)中の光速度

cv > cmn > 1. 波長により異なる
Ex. 589 nm → H2O = 1.33, 水晶体 = 1.42, 角膜 cornea = 1.376

絶対屈折率 absolute refractive index (absolute index of refraction): 入射側が真空の場合の屈折率
相対屈折率 relative refractive index (relative index of refraction)
フェルマーの原理 Fermat's principle
= フェールマーの最小時間原理(最短時間の法則) Fermat's principle of least time

2点間を結ぶ光の経路は、その所要時間を最小にする → スネルの法則導出

telescope
スネルの法則 Snell's law
n1sinθ1 = n2sinθ2

θ1: 入射角 incidence angle
θ2: 屈折角 refraction angle
Ex. コップにさしたストローが折れ曲がって見える
物質2では物質1に比べて光速遅いので屈折する
(物質表面に垂直(法線)に入射 → 遅くなるが方向変わらない)

単位
プリズムジオプター, Δ: 1 mで1 cm屈折距離を持つ角度 angle → tanθ = BC/AB

telescope
1Δ → tanθ = 1/100 = 0.01 → 100 × tanx = xΔ: 小角度を示す際に有用(< 30°)
セントラド centrad: 1 mの距離で1 cmの円弧の屈折距離を持つ角度 → 角度小ならプリズムジオプターに近似(現在使わない)
メータアングル meter-angle, m.a.

臨界角 critical angle
n1 > n2, θ2 ≥ 90°となるθ1 (sinθ1n2/n1) → 屈折光存在しない
全反射 > 90°
平面屈折
1) 2つの平行面 Ex. 窓ガラス telescope

a) 光線が面に直角に入る → 光線偏位なし
b) 板傾く → 光線はガラス内で屈折し元の方向に戻り出て行く

→ 眼にはX'に物体があるように見える

2) プリズム prism: ガラスの両面が平行ではない

telescope
光線が第1面に法線に沿い入射
→ 第2面まで直進 → 第2面で偏位 deviation
第1面入射角と第2面屈折角が等しい時(= プリズムを通し対称) → θ最小 telescope プリズムがさらに回転 → 光線偏位は最小値から増加
実際のプリズムでは球面屈折と歪曲収差存在 ≠ 理想プリズム

→ 色の分散 dispersion: 電磁波波長により屈折率異なる

太陽スペクトル solar spectrum
応用

分光器 spectroscope (spectrometer)
2色テスト bichrome test (duo-chrome test)
眼科用プリズム (Risleyプリズムやフレネルプリズム)

複屈折 double refraction

局面屈折

telescope
∠CPX = β = ∠CPX + α = α + β
∠CPX' = β' (屈折角), ∠CX'P = α' → θ = α' + β'
β = θ - α, β' = θ - α'

スネルの法則の角度が小さい時の近似: n1θ1 = n2θ2

Eq. 1: n1(θ - α) = n2(θ - α')

CP = r (曲率半径 radius of curvature), h ≈ 弧に近似 → θ = h/r

同様にα = h/u, β = h/v → Eq. 1に代入

hn1(1/r - 1/u) = hn2(1/r - 1/v), n1(1/r - 1/u) = n2(1/r - 1/v)

Eq. 2: 単一球面一般公式

n2/v - n1/u = (n2 - n1)/r, or n1/u + (n2 - n1)/r = n2/v

n1/u ≡ U (object vergence)
n2/v ≡ V (image vergence)
(n2 - n1)/r ≡ P (vergence power)

→ U + P = V (P, 面屈折力)

Q. 半径10 cmのガラス棒 (n = 1.50)の空気中での屈折率
A. P = (1.50 - 1.00)/(+0.1) ∴ +5D
Q. 水(n = 1.33)に入れた時の屈折率
A. P = (1.50 - 1.33)/(+0.1) ∴ +1.7D → 屈折率が3.3下がる

P = 1/f1 = 1/f2 [薄いレンズで成立]

Eq. 3 [拡張]: Psurface = n1/f1 = n2/f2
無収差
像が鮮明に写る(点の様になる) ↔ 収差 aberration: 像が不鮮明に写る

色収差chromatic aberration (Cf. プリズム) → 2色テストbichrome (duochrome) test
球面収差spherical aberration → 歪曲収差 distortion トロイダルtroidal面
マドックス管
非点収差astigmatism

→ 非点収差クロスダイアグラム cross diagram

円柱レンズ cylindrical lens → 放射状非点収差
コマ収差 comma aberration

最小錯乱円 the circle of least confusion: ぼやけが最小となる軸上の位置
circle circle

⌈ L1 × 90 = +0.75 × 90 ⌉
⌊ L2 × 180 = -3.25 × 180 ⌋

→ 最小錯乱円は2つの焦点の中間になる

等価球面度数 spherical equivalent power ≡ 最小錯乱円を元にしたレンズ平均度数

レンズのプリズム効果
PC = d: レンズ中心からの距離
f: (第2)焦点距離 → tanθ = d/f

point X

prism
プレンティスの法則
プリズム力, θ = d (cm) × P (D, ジオプター)

Q. f = 8.5 cm, -レンズ, PC = 7 mm → プリズム力
A. P = 1/f = -1/0.985 = -12D → θ = 0.7 × (-12) = -8.4
反射 reflection
平面鏡 plane mirror
1) 全反射 total reflection (total internal reflection): 入射した全電磁波が反射される → 理想的導体表面の反射

prism θi, 入射角 angle of incidence
θr, 反射角 angle of reflection
反射光(線) reflected ray

θi = θr → 正反射(鏡反射) regular reflection

↔ 乱反射 diffuse reflection (irregular reflection)

Ex. U = -2.5D (u = 40 cm), P = 0 → V = -2.5D (虚像)

ライトパイプ light pipe:: 内面全反射により光を片端から他端に伝達

→ 円柱形・ピラミッド形・円錐形等に引き出された透明な屈曲性固体の棒(の束)

球面反射
Ex. 凹面鏡concave mirror ↔ 凸面鏡convex (converging) mirror

prism
CA = 曲率半径(r)
CA = CP, γ = θ → CF = CP, CF = FA
Def. FA = f = 焦点距離
→ f = CA/2 = r/2, P = -1/f = -2/r

U + P = V → U + (-2/r) = V

Ex. 凸面鏡, r = 20 cm, 50 cmに物 → 像

u = -50 cm, U = -2D, P = -2/r = -10D
U + P = V → V = -2 - 10 = -12, v = 1/12 = -8.3 cm

導体表面: 入射した電磁波の電場を打ち消すよう電場生じる ? この電場により電磁波発生し放射される

2) 誘電体境界面の反射: 誘電体境界面では入射した電磁波の一部は反射、一部は屈折しつつ透過

誘電体: 誘電分極が生じ電場の大きさ変化 → 電磁場境界条件を満たすには一部電磁波が反射される

Ex. 水等の流体で急に水路の深さや幅が変わった時に、波の一部が反射され残りが透過する

反射の法則 law of reflection

光ファイバー optical fiber: 内側への全反射を利用 → 内視鏡等にも利用

ファイバースコープ fiberscope: 数千-数万本を束にした光ファイバーによる軟性内視鏡

減衰 attenuation

物質中を電磁波伝搬時、電磁波の電磁場により物質中の電荷が動き(電流)、電荷の運動エネルギーは熱に変わり電磁波はエネルギーを失い電磁波の電磁場は徐々に振幅が小さくなる。導電率の大きい(= 抵抗小)物質は電流を流しやすく電磁波は早く減衰する
prism この減衰の仕組は高エネルギー電磁波(X線等)に適用できない。高エネルギー線は、電荷(分子や電子)の位置を変えるだけではエネルギーは吸収されず、原子核から電子をはぎ取ることでエネルギーを失う
フーリエ解析
波動の周波数解析。全ての波は正弦波の重ね合わせで作られ、各周波数成分に分解もできる。音波は空気振動だが、それを高音成分、低音成分等に分解できるのはこの解析法に基づく

prism
prism

偏光 polarization (of light): 光が波動性を持つための特性

左右円偏光
二色性 dichhroism Ex. 円(偏光)二色性 circular dichroism, CD
偏光フィルター polar screen (polarizing filter)
反射防止膜 anti-reflection coating, 干渉フィルターinterference filter: 干渉による弱まりを利用
ニューロン環(ニュートンリング) Newton ring: 光波の干渉により現れる明環・暗環のこと

回折 diffraction

電磁波が障害物の後方にも伝わること
不透明物質 opaque substance (不透明材料 opaque materials)の側を光が通る → 回折

↔ 透明物質transparent substance (透明材transparent materials) (adj. transparent透明な) → 回折なし

半透明物質translucent substance (半透明材translucent materials) (adj. translucent半透明な): 様々

回折角 diffraction angle
回折像 diffraction pattern

Def. 1. ブラッグの法則 Bragg law (近似式): 回折はブラッグの条件 Bragg condition を満たす時のみに起こる

ブラッグの式 Bragg equation: = 2dsinθ

n: 正整数
d: 格子面の間隔
θ: 視斜角 glancing angle (入射角の補角)

lens 光路長 optical path length

Ex. AOB, A'O'B'

→ 光路差 optical path difference: 波の辿る道のりの差

Ex. A'O'B' - AOB

Def. 2. ブラッグの法則: 光路差が波長の整数倍のときに回折する
lens → 太線の部分が光路差 = 2dsinθ
左右対称格子面でのみ回折は起こる → 回折格子 grating (diffraction grating)
ブラッグ反射 Bragg reflection
(回折)格子定数 grating constant (lattice constant)
X線回折, 電子線回折 electron diffraction
散乱 scattering
散乱度 ∝-1 波長 → 青色(可視光中で短波長)は赤色より大きく散乱 = 青空

水平線に近い(大気を通過する距離長い) = 散乱度高 → 全てが散乱 (?)

後方散乱backscattering
測光 photometry → 光度計(測光器) photometer, 光検知器(光検出器) photodetector

露光(露出) exposure

レーザー laser

= light amplification by stimulated emission of radiation)
増幅された平行な光線
自然放射(自然放出, 自発放射) spontaneous emission: 外部からのエネルギーに関係なく放出されるエネルギー

Ex. 励起状態b → fab(Eb - Ea)/hの光を放射 → 基底状態aに遷移

↔ 誘導放射(誘導放出) stimulated (induced) emmision: 入射光を与え放射光を発生させる

励起された電子・原子が他の定常エネルギー状態に移る際、外部から加えられた電磁波(光)等のエネルギーと同じ位相や周波数のエネルギーを放出する現象

        ┌→ 原子にfabの光を入射しfabの光を放射させる
        │   誘導放射された光と入射光は、進行方向・位相が同じ
        │   ⇒ 干渉により増幅される
        └───┘ 反復により増幅 ⇒ レーザー

自由電子レーザー free electron laser
ガスレーザー(気体レーザー) gas laser, 液体レーザ liquid laser
(メーザーmaser: マイクロ波増幅器)

lens
ポンピング pumping
室温熱平衡状態 → 殆どの原子は基底状態(Ea)

→ レーザーは原子数がEa < Ebでなければ発生しない(誘導放射が増幅されない)
→ ポンピング必要: 電子ビームや別の振動数の光を当てEcの状態の原子を増やす

acb のサイクル

光沢 luster → 金属光沢metallic luster
視差 parallax: フィルムに映る像と、ファインダーに映る像とのずれ
光伝導体(光導体) photoconductor
感光性の photosensitive
光学密度(光学濃度) optical density
光心 optical center
光学距離 optical distance

冷光 luminescence
→ シンチレーション(蛍光作用) scintillation

Ex. 蛍光 fluorescence (adj. fluorescent): 蛍光灯 fluorescent light, 蛍光体(燐光体) phosphors, 点状蛍光体 phoshor dots, リン光 phosphorescence

顕微鏡 (microscope)


顕微鏡の世界(種類)

虫眼鏡(拡大鏡) magnifying glass → 拡大レンズ(単顕微鏡, 拡大器) magnifier
複顕微鏡

双眼顕微鏡 binocular microscope
解剖顕微鏡 + 顕微手術器、ポケット顕微鏡、旅行用(携帯)顕微鏡、供覧顕微鏡
鉱物顕微鏡 mineral microscope、金属顕微鏡 metallograph
偏光顕微鏡 polarizing microscope
限外顕微鏡 ultramicroscope
位相差顕微鏡 phase-contrast microscope: 比較的小さな構造や無色の試料に利用
→ 部分的相違によるもので部品換えれば転用可能 = 万能顕微鏡もある
紫外線顕微鏡 ultraviolet microscope

中性子顕微鏡 neutron microscope: 生細胞観察可能
電子顕微鏡 electronic microscope (EM) + 超薄片技術

透過型電子顕微鏡 transmission electron microscope (TEM)
走査型電子顕微鏡 scanning electron microscope (SEM)

細胞小器官観察 → 固定死細胞のため生細胞との違いを意識する
解像力 20 μm
写真面は平板であるが奥行き(立体構造)を頭に置く

走査型プローブ顕微鏡 scanning probe microscope (SPM)

走査型トンネル顕微鏡 (STM)
原子間力顕微鏡 (AFM)

顕微鏡観察
  1. Tradescantia ohiensis Rafin 気孔観察
  2. Anabaena azollae Strasburger: オオアカウキクサ(Azolla japonica (Franch. et Sav.) Franch. et Sav. ex Nakai)に共生する藍藻
    糸状体を針で解し、ラン藻を表に出しプレパラートを作り15 × 60で観察。くびれがあり、1つの細胞が割と多く目につくが、分裂途中段階と考えられる。異質(形)細胞もよく観察される。オルガネラはこの倍率でも、核らしいものを除けば、明瞭には識別できない
  3. Tradescantia spathacea Sw.: 原形質分離 → 細胞浸透価判定

双眼光学顕微鏡


使用法
鏡身を右手で握り、左手を鏡台に添え箱から取り出し机上に置く。直射日光下避ける。正しい姿勢で腰掛け、体の真中に顕微鏡を置く。腰掛高を変え、目の位置を適当にし検鏡。悪姿勢での検鏡は疲労を早める
レンズ汚れはエーテル-アルコール混液を浸したガーゼで拭き除く。ステージ自然降下や粗動ハンドルが硬すぎる時は、左右粗動ハンドルの同時逆回転で調節できる → 処置は勝手に(自己流で)やらない
接眼レンズをつけたまま収納(レンズを始め機械部分解手入は精度を落とす原因) → いたずらに分解しない

I 構造

鏡脚(台足) base, foot
鏡柱(柱部) arm
関節(屈曲装置) inclination joint
ステージcentering screw, mechanical stage: 遊尺の読み方
鏡筒: 器械的筒長 = 標準筒長 160 mm
対物レンズ交換装置objective changer: レボルバーrevolving nose-pieceの回し方
焦準装置(coarse adjustment, fine adjustment):

測微ラセンmicrometer screw: 鏡筒の上下運動を1-2 μまで読み取れる。物体の厚さを計るのに利用
同高焦準
作業距離

対物レンズ objective (lens) → (レンズで見る)物体 object
1) 対物レンズの種類
アクロマート achromatic 対物レンズ: Fraunhofer線のうちの赤と青の線の色収差の補正
アポクロマート apochromatic 対物レンズ: さらに黄についても補正
プラン-アポクロマート plan-apochromatic 対物レンズ: 色収差、像面湾曲収差も補正した最高級レンズ。写真撮影にも最適
2) 対物レンズの分解能
= 解像力 resolving power (of lens), h): 近接した2点が2点として見える度合

h = λ/2NA = λ/(n × sin(u/2)) = 0.61λ × NA

λ: 光源側波長
n: 光源側媒質の屈折率
u: 光源からレンズに入る光と光軸とのなす最大開角(θ = u/2)

開口数 numerical aperture, NA = n × sin(u/2), (maximum = 1.3)

可視光線平均波長: 0.55 μ、シーダー油のn: 1.515 → 光学顕微鏡分解能限界 δ = 0.55/1.4 = 0.39 μ
h = 550 μm/2 × 1.3 = 212 μm = 0.2 μ (limit)

電子顕微鏡(electric microscope, EM)のλ

NA 0.005 A (∝-1 粒子速度), λ: 0.054 A: 電子線のλ
h = 0.054 Å/2 × 0.005 Å = 5.4-6 Å: 加速電圧の平方根に比例
電子密度 electron dense (EMで黒くスライドされる部分)

3) 接眼レンズ ocular, eyepiece
ハイゲンスHyghens型接眼レンズ: 2枚の平凸型レンズからなる。アクロマート対物レンズと併用
補正接眼compensating ocular: アポクロマート対物と併用。K8Xと刻む
ペリプラン接眼レンズ: 色収差、像湾曲も修正。視野周辺まで平らに見え、顕微鏡写真撮影にも適
実視野直径(実際観察している標本面直径) = (対物レンズ視野数)/(対物レンズの倍率); 18/20 = 0.9 (mm)
(眼鏡をつけた人は高アイポイント接眼レンズが便利。双眼の方が疲労少)
コンデンサ
アクロマートコンデンサ: 色収差のみ補正
アクロマート・アプラナートコンデンサ: 色収差・球面収差補正
油浸対物レンズのようにNAが1.25-1.30もある対物レンズを使用する場合、コンデンサの後端面とスライドグラスとの間を油の層にすると対物レンズの分解能を十分に発揮できる

II 手入れ

原則: 丁寧・清潔。対物レンズと微動装置は、素人手入れ不可能
レンズ手入

埃は軟かい清潔な毛筆(羽毛)で払い落とすかゴム球で吹き払う。レンズペーパー(ガーゼは糊を落として)で軽く拭く。蒸留水を少しつけ拭く。キシロール(クロロフォルム)を少量ガーゼに浸し拭き、すぐ乾いたガーゼで拭き取る

長期保管: 箱 cabinet に納め保管。備品管理には台帳を利用 使用上の注意

短期間使用しない場合は覆い(通例、ビニール製カバー)を被せる。頻繁に使用する場合でも、顕微鏡カバーの使用をまめにする。対物レンズはガーゼで包む。直射日光、急激な温度変化を避ける

III 顕微鏡の見方

0. 照明装置 illuminating apparatus
反射鏡 mirror
絞り diaphragm
コンデンサ condenser
フィルター支持枠 light filter
照明装置(アッペ、ケーラー)
光源(自然光源・人工光源)
1. コンデンサcondenser絞りの使用法

microscope 対物レンズ後ろの焦点
面に結像したコンデン
サ絞りの像
対物レンズ瞳を70-80%
まで絞る
コンデンサ絞りを絞る

2. 光源絞り
絞りは明るさと焦点深度との兼ね合いを考えつつ開閉 → 全開は周辺ボケを起こすので不可
3. ケーラー照明手順
  1. ステージ(載物台)上にプレパラートを置きクリップで押える
    対物レンズ先を見ながら粗動ネジを操作し鏡筒を出来るだけ下げ、プレパラートに近づける(顕微鏡を覗きながら鏡筒を下げてはいけない)
  2. 照明装置を、平面反射鏡から15-50 cm位離しておく
  3. 平面反射鏡の中央部に光束をあてる
  4. コンデンサー絞りを最小に絞って、絞りの"はね"の上に光源フィラメントが結像するよう、光源の集光レンズを前後に調節。フィラメント像の大きさは40倍対物で15 × 15 mm位。10倍で5 × 5 mm
  5. コンデンサー絞りを開き、接眼レンズを上から覗き標本にピントを合わせる
  6. 光源絞りを小さく絞り、コンデンサー位置を上下し、光源絞り輪郭が標本と共に鮮明に見えるようにする
  7. 反射鏡を少し動かし、光源絞りの輪郭が視野中心にくるよう調節。次に光源絞りの輪郭が接眼レンズの視野絞りに外接するまで開く
  8. 接眼レンズをとり除き、鏡筒の中心線上に目をおいて鏡筒内部を覗きこむと、光源フィラメントの第2像がみえる。光源装置を前後させて、フィラメントが対物レンズの瞳をいっぱいに満たすような大きさにする
  9. フィラメント像が対物レンズ中心からずれていれば、光源ランプ首振りつまみを操作し中心に一致させる
  10. 接眼レンズをとり除いたまま、上から鏡筒を覗きこみ、対物レンズ中に作られるコンデンサー絞りの像が、対物レンズの瞳を70-80%程度まで縮めるよう調節する
4. 位相差顕微鏡
1) 原理: 位相差 → 厚さや屈折率の違う試料を通った光波のずれ

無色透明だが屈折率異なる部分のある試料観察 → 屈折率大きな媒質中を通る光は、屈折率小さい媒質中を通る光よりも位相遅れる → この位相差に関わる回折光を利用

2) 位相差顕微鏡の実技
  1. ターレットコンデンサーをはめ込む
  2. 緑色フィルターを支持枠にのせる
  3. 表示孔を0にし明視野で視野を決める
  4. 反射鏡を平面鏡としケーラー照明を行う
  5. コンデンサーの虹彩絞りを全開にする。次にターレットを回して輪状絞りをコンデンサーのしたに送り込む
  6. 心出し望遠鏡を差し込み、外筒をつまみ回しつつ昇降させる。リングに焦点を合わせる。"心出し"という、この操作は対物レンズを取り替える度に中心調節を行う
  7. コンデンサーのネジ2本を回し中心調節 → 机下の装置のハンドル回しコンデンサー下げる必要時ある

顕微鏡写真


撮影チェックリスト

顕微鏡部分
光軸調整
1. 視野絞りの像は中心に
2. 非プリセンター電球ではフィラメントが光軸中心に来る
撮影装置部分
1. 光学系にゴミ付着ない
2. フィルム巻上げ時送られている
3. フィルムASA感度セットは(NEOPAN F: ASA 8)できている
4. ファインダー内2重線(視野補正)は明瞭にみえる
撮影テクニック
標本観察し眩しければNDフィルター入れる
標本観察でフレアー(霞)がかかる → 指紋等汚れが光学系にある
コンデンサー絞りは通常7:3 → 絞るほど解像度落ちる
視野絞りは、視野に外接するまで絞りこむ
露出決定

露出アンダー → 視野内試料の輝度差大きい時
露出オーバー → 視野内試料の面積が少なく明るく抜けている時

接眼レンズ倍率 magnification は余り大きくしない - 通常FK3.3 × P7 × 位
レリーズボタンはソフトタッチで

大きさ測定

ミクロトーム microtome: 材料を数ミクロンの厚さに切る装置
接眼ミクロメータ micrometer、対物ミクロメータ使用: 原則、対物ミクロメータ1目盛は10 μm

電子顕微鏡 (electron microscope, EM)


= 電子(線)をあて拡大する顕微鏡
1924 de Broglie: 電子顕微鏡理論
1939 電子顕微鏡発明(Siemens-Halske杜)

a) 透過型電子顕微鏡 transmission electron microscope, TEM

観察対象に電子線あて透過した電子を拡大観察。対象構造や構成成分差により電子線透過量異なるので、透過電子密度変わり顕微鏡像となる。電磁コイルを用い透過電子線を拡大し、電子線により光る蛍光板にあて観察しCCDカメラで写真撮影。観察対象を透かし観察するため薄片や電子線透過フィルムの上に塗りつけ観察

b) 走査型電子顕微鏡 scanning electron microscope, SEM

観察対象に電子線あて反射した電子(か2次電子)から得た像観察。対象に電子線を当てる位置をずらしスキャン(走査)し顕微鏡像形づくる。電子は検出器に集めコンピュータ処理2次元像表示する
[長所] 対象表面形状や凹凸、表面に近い部分の内部構造観察
[短所] 観察対象導電性ない → 電子線連続照射で表面帯電し反射電子パターン乱れる → 観察対象表面を予め導電性物質で薄くコーティング

走査型トンネル顕微鏡scanning tuuneling microscope (STM)

フリーズエッチングfreeze etching technique (レプリカ法)

透過型電子顕微鏡をい、細胞や細胞内組織等の内外表面の三次元的微細構造を観察する方法
Ex. 試料 → グルタルアルデヒド固定

グリセロール浸漬した組織片 → 凍結
高真空中で削るように切る → 表面(切断面)
昇華 - その面にPt-C蒸着

分解能 2-3 nm

microscope 陰極 cathode

陽極 anode
Condenser


Specimen /
Objective





Intermadiate image
projector
Final image

c) 走査型透過電子顕微鏡
= scanning transmission electron microscope, STEM
TEMとSEMの両特徴を持つ

固定・染色 (fixation and dye)


固定fixation

細胞(組織)をできるだけ生きているままの状態で保存
固定剤 (fixative)
  • オスミック酸: 揮発に富み溶液は還元力強。固定作用激烈であるが組織への浸透力は比較的緩やか
  • クロム酸: 潮解しやすくやや赤色を帯びた結晶。組織への浸透力は弱く原形質分離を起こさせやすい。他薬品と混合すると優れた固定作用を表わす
  • 重クロム酸カリ: 暗赤褐色の大結晶。浸透作用はクロム酸に劣る。細胞質は良く保存するが核に対して不適当。他薬剤と混合すると良い固定液となる
  • ピクリン酸: 強浸透性持つが凝固力余り強くない。組織が収縮し易いので単純には使用できない
  • カルノア液 Carnoy: 固定剤
カルノアのアルコール・クロロホルムchloroform・酢酸
浸透力も凝固作用も強く激しい固定剤
純アルコール:クロロホルム(局方):氷酢酸(局方) = 12 :6:2 (ml)

保存効くので数回分一緒に作ってもよい

固定時間5-60 min。比較的大きいものでも2 hr限度 - 長く置くと収縮強くなる
パラフィン包埋前処理に利用
カルノアの酢酸・アルコール Carnoy's fluid
純アルコール EtOH : 氷酢酸 acetic acid = 6:2 (= 3:1) (ml) (用途は上記と同)

トレーサー tracer

調査物の追跡を容易にするための物質
染色 staining: 細胞(組織)各部を特異的に染める
染色剤: 主に細胞質を染める酸性色素と核質を染める塩基性色素がある
発色剤
酸性色素(染料)
  • ピクリン酸: 水・アルコールに溶け細胞質を黄色に染める
  • スダンIII: 弱酸性で水に溶け難いがアルコールに多少溶ける。脂肪に溶解し脂肪を着色するため脂肪染色剤として用いる
  • ライトグリン: 水・アルコール・丁子油に溶ける。ヘマトキシリンとの複染色に用いられる
  • 酸性フクシン: 細胞質の染色剤として広く用いられ、細菌染色、その他特殊な用途もある
塩基性色素(染料)
  • チオニン: 薄溶液は藍色を呈するが、著しく色彩変調を示す組織学上重要色素
  • メチレンブルー: 核染色色素。病理学・細菌学で欠くことできない。生体染色にも重要
  • メチルバイオレット methyl violet: C24H28ClN3
  • 中性赤: 弱塩基性で水・アルコールに可溶。弱い核染色剤だがゴルジ体染色、その他一般組織学で細胞質染色使用。無害で生体染色重要色素
  • サフラニン: 水・アルコールに可溶。核・仁・中心体染色剤として重要

包埋 (embedding)


A) パラフィン包埋 paraffin embedding (general procedure)

利点: 連続切片製作に優れる< br /> 難点: 切片作成に時間要する。有機溶媒使用するため物質により溶け去る、脱水・加熱を行なうため組織収縮強い。切片作成時に室温考慮する、大きな硬い組織に適しない

自動包埋装置: 脱水からパラフィン浸透までを自動化

準備 preparation
脱水: アルコールEt-OH、共栓ガラス瓶(○個)
(無水アルコール(作成), セロイジン瓶(無水アルコール用)、無水硫酸銅、濾紙)
透徹: キシロール、共栓ガラス瓶(3個)
浸透: パラフィン(融点確認) - 包埋用、恒温器(2台, 37°C and 56°C)、共栓ガラス瓶、濾紙、コップ(浅い)
包埋: アルコール・グリセリン、時計皿(シャーレ代用可)、コップ、水槽、ピンセット、アルコールランプ
1) 脱水 dehydration: 固定を終えた組織片から水分を100%除く → アルコール置換による

各濃度アルコール作成: 無水(100%)、純(99%、95%)、局方(90%)、80%、70%、(必要に応じ50%)

アルコール計alcoholmeter (比重計)かメスシリンダー(量水器) messylinderにより80%以下の濃度は作成

無水アルコール: 純アルコールを無水硫酸銅で脱水し作成 → 灰白色微粉末(硫酸銅は青色結晶)

濾紙を適当な大きさに切り袋を作り、その中に無水硫酸銅を入れ、端をくくり粉が漏れないようにする 共口試薬ビン(磨合せ注意)に純アルコールを入れ無水硫酸銅入り濾紙を2, 3浸す → 一晩で完成 無水硫酸銅が青色に変わったら、再生せず廃棄し、新しいものを用意する

脱水: 組織の入る共栓ガラスビン(× コルク栓)をアルコール濃度数分と無水アルコール用セイロジンビン用意

90%までの脱水所要時間は、小さな組織で1-2時間、通常1日で十分。大きな組織では2-3日でもよい
95%以上では組織を強く収縮するので、相当大きな組織片でも24時間を越さない方がよい
脱水完了 → 引き続き透徹作業
(海産物等組織が壊れやすい時は30%位から始めることもある)

植物組織保存は、通常70%アルコールで行う
→ 変法: 無水アルコールにより組織収縮が激しすぎる場合に使用される

Ex. 1. 純Et-OHで短時間(1時間以内)処理後、クレオソート・キシロール(局方クレオソート2 + キシロール8)に移し30-40分置く(途中液を1回交換) → 純キシロールに移す
Ex. 2. 95-99% Et-OHからメチル・ベンゾエートmethyl benzoateに移し24-48時間(途中液2回交換)中に組織透明になったらベンゾールに入れ20-30分毎に2回液を換えベンゾール・パラフィンを経て浸透に入る

2) 透徹 clearing (dealcoholization): アルコール取り除く → キシロールxyrolかクロロホルムによる置換

パラフィンはアルコール不溶 → アルコール・パラフィン両方に溶ける物質(パラフィン誘導剤, 透徹剤)にまず浸しアルコールを完全に追い出した後にパラフィン浸透を行なう

透徹剤: キシロールxylol (xylen)、クロロホルム、ベンゾール、トルオール等

ガラスビン3個用意

a) 無水アルコール3・キシロール1 (無水硫酸銅敷いておく)
b) キシロールのみ(Iとする)
c) キシロールのみ(II)

a-cの順で各ビン中に標準で20-30分程度漬けておく(時間長すぎると組織収縮する)
組織全体が透明になり飴色となりビンの底に沈めばキシロールがよく滲み込んだと判断してよい
一部白濁 → 脱水不完全なので逆順をたどり無水アルコールまで戻し脱水やり直す
[脱水兼透徹剤] 正ブチルアルコールnormal butyl alcohol、テルピネオールterpineol、ジオキサンdioxane (有毒)

3) 浸透 infiltrating (パラフィン浸透): パラフィンを滲み込ませる

パラフィン融点はミクロトーム切断時の室温を考慮し決める

Ex. 室温10-19°C → 融点52-54°C (冬は若干低融点を使用)

恒温器incubator (thermostate)中実施 [重湯煎water bath代用可]

一台の内部温度をパラフィン融点より2-3°C高めに調節
もう一台の恒温器37°C前後に調節しておく

透徹剤-パラフィン置換手順: パラフィン引火注意。コップを5-6個用意
37°C恒温器中に混合液(透徹液30 mlとパラフィン10 g混液)を入れておく
組織を37°C恒温器に入れた混合液に浸す(小片30-40分、大きいもので1-2時間)

4) 包埋 embedding: パラフィン固定
a) 金属枠

金属枠2つととガラス(金属)板1枚が1組(できれば包埋する組織片の数だけ用意)
枠内面とガラス板上面にアルコール・グリセリンを指で塗る
組織片大きさに枠を合わせ箱を作る
コップ中で組織片にパラフィンが十分滲みこんだらバット(流し箱)に水入れる(深さは枠を冷やす時に水が入り込まない位が適当)
ブンゼン灯(アルコールランプ)に火をつけ、その側に匙を置く
恒温器から金属枠1組を取り出しバット側におく(以降すぐ恒温器蓋は閉じる)。コップを少し焔で熱し、包埋枠中にパラフィンを注ぎ込む
枠8分目位で恒温器を開け組織片入り浸透用コップを取出す
セラミックピンセットを少し暖め組織片をつまみ枠のパラフィン中に沈める

ミクロトームで切る時のことを考え、組織片の最初に切る面が底に当るよう置く
組織片周囲に厚さ2-3 mmのパラフィンが残る程度が理想
→ 組織片が枠に触れるのはよくない(この場合、枠を少し広げパラフィンを注ぎ足す)

ガラス板を静かに持ち上げ、水の入らぬよう気をつけながら、水平にバットの底に沈める

そのまま固めるとパラフィンが収縮し中央が窪み気泡が入るので、2 mmほど窪んだら、焔で温めた匙で枠中のパラフィンの表面をなでて溶かし、注ぎ用コップから少量のパラフィンを匙ですくって足す

パラフィンが冷めて固まったら取り出し、包埋片をはずす

b) 時計皿(盃): 基本的には金属枠法に順ずる

時計皿内面にアルコール・グリセリン塗布
水槽に水を浸し手近に置く(なくてもよい)
ブンゼン灯に火をつける
注ぎ用パラフィン・コップを恒温器から出して焔で少し温め時計皿に注ぎ入れる(少量が良い)
コップを恒温器から出し、焔で温めた竹箸で組織片を取り、時計皿のパラフィンに入れる
時計皿をし羽化に水槽の水面に浮かべ冷やす
表層にパラフィンの皮が十分に張ったら、時計皿を水中に沈める
パラフィンが冷めたら完了

[包埋失敗時] パラフィンが全体均質な半透明になっていない場合はパラフィン結晶ができており、薄い切片とならないので、包埋までをやり直すべき。ただし、組織収縮が大きくなり精密観察には適さなくなる 結晶範囲が狭ければ、37°C程度の所に(数ヶ月となることもある)放置すれば結晶が消えることがある

embedding
図23. パラフィン包埋用具と包埋片。A: 包埋用金属枠とガラス板。B: 包埋片。一端に記号札つける。C: 包埋片を台木に密着させた所。D: スパチュラspatula。E: 包埋用匙
5) 切片: ミクロトーム使用

台木(2 cm程度のサイコロ形)につける: 組織片の切り始めの部分を確認し、その 面を上に向け、台木にパラフィン(融点同)をスパチュラ等を焔で温めて貼り付ける
形整えるtrimming: 組織片前後左右を1-2 mmパラフィン層を残し小刀で削る
切片厚さ均一にする工夫(風吹くと切片飛ぶ → 窓閉める)

a) 滑走式ミクロトーム(トーマ・ユング型) [準備] ミクロトームは試料つける前に十分点検(刀台が指一本で滑らないと作業困難)

毛筆2本
切片収納箱(底に黒い紙を敷けばよい)
ナイフ(剃刀): 包埋片形整えたり、連続切片リボンを切り離す際便利
布: キシロールを含ませ付着パラフィンを除去する

embedding
図. 包埋片の方向とリボン形: 刀長軸に対し包埋片の長辺を平行に置いて切った場合のリボン。この形がよい。包埋片の1隅を削ってあるので切片境界が分かりやすい
ミクロトームの傾斜
[切り方 sectioning]

(1) 刀台取手に指をかけ左手親指と示指で微動装置ハンドルを摘み、刀台を手応えのあるまで向こう端に押しやる → (2) 刀台取手を持ち静かに引く → [1枚目できる] → (1)に戻る = 連続切片
連続切片長くなる → 適当な部分で切り(できれば1枚刃に残す)筆穂に載せ切片箱に移す
掃除重要(特に刀)

embedding
A: 傾斜足りず切れない(逃角負)。傾斜(約5°)適当。C: 傾斜強すぎ良く切れない。逃角(スカシ角) clearance angle (α)。b: 刃角
b) 回転式ミクロトーム: 基本的には滑走式ミクロトームに順ずる。準備も同じ

回転版の調子確認が一番重要
刀を刀固定器に取り付ける。回転式ミクロトームでは、通常刃を真上に向け刃渡りが水平になるよう固定
刀の傾斜を4-6°にする
車のハンドルを握り時計の針方向に回す → 1回転ごとに1枚切れる

良く切れない場合の原因と対策
  1. リボンにならず切片バラバラ(軽度なら切片が巻く程度) = パラフィン固い → 室温上げる(電灯等で温める)
  2. リボン曲がる: 載ガラスに真直ぐ切片が張れない[切る前に注意] → 切ったものは解剖刀(メス)で削り整形
  3. ミクロトーム刀に張り付く: 切片が軟らかすぎる → 室温下げる
  4. 皺が生じる: 刀の切れか傾斜が悪い
    → 調整のし直し / 刃にパラフィン付着 → キシロールで拭く / 刀台の動き速すぎる → ゆっくり切る / 室温高すぎる → 室温下げる
  5. 切片がボロボロになる(組織片が裂けることもある): 脱水不完全 → 救い様がない
    浸透剤が残っている(透徹剤が不適切) → 浸透包埋やり直し
  6. リボンが裂けたり縦に傷がつく → 刀に傷か汚れ
    刀の傾斜が小さい → 刀を代えるか調整のし直し
    パラフィンごみ等の固形物が包埋中にある → そこを避け切るしかない
  7. 切片に横波ができる
    刀や台木の固定ネジが緩いか、台木と包埋片の間に軟パラフィンが残存している
    刀の傾斜が大きすぎる。滑走路に油が多すぎる → 調整のし直し
  8. 切片厚薄不規則や1枚おきに切れる → 刀傾斜不適当か、切れ味悪い
  9. 切ると音がし強い抵抗を感じ、うまく切れない → 組織固い = お手上げ
  10. リボンや切片が飛びその辺に付着する - 静電気が原因で始末におえない(何をやってもだめなら日を改める)
    ともかく静電気でにくくする Ex. 室内に蒸気を立て静電気を防ぐ
パラフィン切片作成
準備
パラフィン伸展器 - 自動温度調節のついた電熱式がよい
載ガラス slide glass - 埃つかないよう注意
卵白グリセリン

鶏卵卵白を容器に移し泡立器等で雪のような泡を立てる。ロートに濾紙をのせ、その上に卵白泡を盛り上げ、ロートの上に小瓶をおくと数時間-一晩で濾過され透明液が溜まる。これに等量グリセリンを加え、瓶を傾けながら静かに混ぜる。腐敗・微生物発生防止にチモール小塊を1%混ぜ完成

きれいな水を満たした器1個(ビーカー等)
解剖刀、ガーゼ、黒い下敷き
貼り方
適当な温度(包埋に使ったパラフィンの融点より5-6°C低め)の湯を進展器に充たす
載ガラスに卵白グリセリンを塗る → ガーゼで塗りすぎた分を拭く
毛筆に水を含ませ卵白グリセリンを塗った載ガラス上に薄く広げる → 水滴形成は脂肪があるのでやり直し
連続切片リボンを適当な長さに解剖刀で切る
リボンを水を含む毛筆で触れれば付くので、それを載ガラスの水の層の上に並べる
並べ終わったら切片の下に水が行き渡っていることを確かめ、足りなかったら毛筆に含ませ補充する
載ガラスを水平に持ち上げ温めた伸展器の上に置く → 切片がやや透明になる
水が蒸発しないうちに伸展器から降ろし、載ガラスを傾け余分な水を捨て、針と解剖刀を使い切片を並べる
載ガラスを再び伸展器上に載せ、ガラスの一端をガラス棒にかけて僅かに傾斜させる
→ 水分が低い方に集まり間もなく乾いて載ガラスに密着
載ガラスの端に必要情報を記し、金属製枠(マッペ)に並べ埃の届かない所で完全に乾かす(恒温器3時間、室温一昼夜程度)

カメラ (camera)


フィルム時代

化石化部分は多々あるが、用語はデジカメでも生き残ってるのがあるので ...
フィルム
  • ネガカラーフィルム(ネガ): プリント前提。大きく伸ばすこと可能
  • リバーサルフィルム(ポジ): スライド前提。プリント可能だが色・印刷悪(ER 64, 400晴天向)。KR, KMプロ用
ASA(ISO)感度
フィルムスピード略号 Ex. 25, 1000

数字大なほど速いシャッター可(= 暗所撮影可)
数字小なら粒状性よい(= 大伸ばし可)

カメラ
= 一眼レフ + 二眼レフ → 接写には一眼レフ適
レンズ
↑ < 50 mm = 広角レンズ(同距離からより広い範囲撮影可)
50 mm = 標準レンズ(人間の目の画角に最も近い)
↓ > 50 mm = 望遠レンズ (同距離から遠くのものをより大きく撮影可)
撮影倍率
= (リング・ベローズの長さ)/(レンズの焦点距離) = A

Ex. 中間リング50mmを 100mmのレンズに付ける → A = 0.5となるので0.5倍の大きさに写る

露出補正
(1 + A)2 = B

Ex. A = 0.5 → B = 2.25
→ 通常より露出を2.25倍かける(1/125, f8 → 1/60 f8, or 1/125, f5.6)

2倍露出

シャッタースピードを1段(1クリック)遅くする、または
絞りを1段(1-2クリック)開ける

オートストロボ使用時は、予め露出補正によりASA感度変えておく

Ex. ASA100をASA50にセット

収差
≡ レンズにより像に発生する色・像にボケや歪みを生じること
色収差: 色づきの歪み
ザイデル収差: 像のボケや歪み

球面収差: 入射点の光軸からの距離により集光点の光軸方向の位置が変わるため起こる、光軸上1点から出た光が像面で1点に集束しない収差
コマ: 入射点光軸からの距離で像倍率変化するため起こる、光軸外1点から出た光が像面で1点に集束しない収差
非点収差: 光軸外の1点から出た光線による子午像点と球欠像点のずれる収差
像面湾曲: 平面の物体の像面が湾曲する収差
歪曲: 方形の物体が方形像を結ばず樽型等になる収差

ボケ: 物体の点が点像にならないこと

デジタル digital camera

魚眼レンズ fish-eye lens
通常撮影用レンズは、カメラに取り付けると撮影倍率の違いはあるが、基本的には見たままの像を写す

→ 周辺に行くほど歪み生じる現象をレンズ組み合わせ補正しているため

魚眼レンズ: この補正がないレンズ = 上下左右180°の像を写しこむ

種類
全周(円像)魚眼レンズ: 天体天頂角、方位角、日照時間、輝度分布測定等の学術用途に開発されたレンズ
対角線魚眼レンズ: 対角線方向に180度の画角を持つ(一般撮影向き)

ストロボスコープ stroboscope
ストロボを連続発光し、動きを「コマおとし」に分解観察する装置
ストロボ: 暗い場所に人工的に光を送る装置

カイドナンバー数字大 = 遠くまで光届く(Ex. 40/ASA 100/f2で20 mまで)

高速写真 high-speed photography: ストロボ撮影に必要

→ 動物生態調査等に利用される

撮影方法


フィルムカメラでの失敗の少ない撮影 (今じゃ、デジカメ)
機材
一眼レフ + マクロレンズ(なければ接写リング) + あればクローズアップレンズ)
できればベローズ
三脚
あればストロボ
  • ブレない(速いシャッターを切る)

植物写真

  • 一番形の整った対象を選ぶ
  • 種の同定ポイントを踏まえて撮る
  • 目標物にピント合わせる (被写体とカメラを平行にし全体にピントを合わせる。または、ピントは花から葉までに合わせる (ピント確認 → 背景邪魔にならないよう)
  • 撮影場所を知るため背景などの情報を入れる (+ 主役が目立つ)
  • 植物の回りをスッキリさせる
  • AEカメラでは植物が暗い所で外が明るいと露出アンダーになる → 予め植物の露出を計るかASA感度下げる(ASA100 → ASA50/25)
  • 絞りを絞り込むためシャッタースピード遅くなる → 三脚等使用しブレを防ぐ
  • 曇りの日や日影では、カラーは青っぽくなるのでストロボ使用望ましい
自己満足
全ては自分の気に入ったようにセット Ex. 光・影利用
  • AEカメラ → 花の露出を予め計るかASA感度上げる
  • 光斜めや逆光で撮ると花が浮上がったり輪郭にソフトムード

プレパラート (mount)


菌類

水生不完全菌類
葉縁を直接顕微鏡観察し分生子柄が葉縁から水中へ伸び出している部分をスパチュラで切り出し、これをスライドグラス上にすくい上げ封入する
水酸化カリウム(KOH): 顕微鏡観察時に3-5%溶液を用い、細胞をほぐし、膨張させ見やすくする

ドクツルタケでは表面に滴下すると黄変するため試薬として用いる

mount 前葉 prophyll: 単子葉類側枝上の第1葉。双子葉類や裸子植物の側枝最基部の2葉

ラクトフェノール(Ex. 石炭酸10 g, 乳酸10 g, グリセリン20 ml, 純水10 ml): 固定・封入

コットンブルー等で染色して封入すると良い

ネイルエナメル: 封縁
ホルマリン酢酸水: 液浸保存、固定封入
パラフィン、バルサム: 封縁

フッター