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(2018年2月27日更新) [ 日本語 | English ]

埋土種子 (seedbank)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

[ 生活史 ]

種子貯蓄 (seed storage)


種子の貯蓄場所 → 種子の生存にとって重要
種子の貯蓄形体の分類 (Lamont 1991)
  1. 非貯蓄性種子 non-storage: 非休眠性で、種子が成熟後に時間をおかずに分散し埋土種子とならない
  2. 埋土種子 buried seeds: 成熟後、非成熟にかかわらず分散したい種子は埋土種子となる種子
  3. 林冠貯蓄種子 canopy storage: 成熟後しばらくの間樹木についたままの状態で過ごす。木本植物では比較的多くの植物がこの戦略をとる。Ex. マツ科植物では山火事が起こるまで種子を分散されせず山火事によって乾燥することにより果実が裂開し、種子を分散する。
索引

埋土種子 (buried seed, seedbank)


埋土種子集団 buried seed population: ある生息地において発芽せずに保持されている種子集団

休眠能力を有し土壌中にある期間蓄積している種子群 → 埋土種子寿命は、休眠能力と大きく関係
休眠能力を有さない種子は親から離れた後すみやかに発芽するので埋土種子とならない

埋土種子集団のタイプ
一時的埋土種子集団 transient seedbank: 生産された年から1年よりも長く種子が生存していない集団
永続的埋土種子集団 persistent seedbank: 一時的transientではない種子を含む集団 (Grime 1979)

トキンソウ Centipeda minima (L.) A.Braun et Asch.: 一年生 - 50年以上の埋土記録


有珠山火口源埋土種子の生存率は埋もれていた深さと高い相関(Tsuyuzaki 1991)

深さ数cmで光は届かず、この深さで温度変動大とも考えにくい →
埋土種子生存要因には低温かつ小さな温度変動が最も有力
種子がこれだけの寿命を自然界において有している意義は不明

表. 埋土種子集団密度推定法は、発芽試験・浮上法等異なるが一般的とされる値と有珠山の例(Cook 1989)
    生息地                    埋土種子/m2  文献

    耕作放棄地生息地          34000-75000  (1, 2)
    一年生草本草地生息地       9000-54000  (3)
    草原生息地                 2000- 1700  (4)
    遷移初期                   1200-13200  (5, 6)
    熱帯耕作地生息地                 7600  (7)
    熱帯二次林(5年)生息地      1900- 3900  (7)
    熱帯降雨林生息地            170-  900  (7)
    プレーリー生息地            300-  800  (8)
    森林(80-200年)生息地        200- 3300  (6, 7)
    有珠山草地*                      2128  (9)
    有珠山森林*                      1985  (9)
    有珠山火口原(埋土から20年)       1317  (10)
                (埋土から20年)     > 1000  (11)

耕作放棄地・一年生草本期・遷移初期などは一般に密度が高い
1年生植物に休眠機構なし → 劣悪環境時に全種子発芽 → 個体群絶滅(Cavers 1983) → 休眠必須

埋土種子集団変動 fluctuation of seedbank

GSP (gross buried seed population) = Ssp

+ (Sp + Sm) - (Sg + Sd + Sa + S0)

Ssp:それまでの埋土種子数
Sp: 1シーズンの生産種子数
Sm: 移入種子数
Sg: 発芽種子数
Sd: 枯死した種子数
Sa: 捕食種子数
S0: 移出種子数

考え方は個体群動態と同じ
これらの全パラメータが測定可能なら容易だが、実際は捕食種子数や移出等の測定は困難
→ 様々な推定式が提唱され実測された例は少ない

埋土種子集団推定法 (methods of seedbank estimation)


サンプルサイズ → 土壌中に広く分布し母集団推定にはサンプルサイズと種子抽出手法により大きな違い

→ 目的により適宜、サンプルの選定法・種子抽出法を決定する必要 (露崎 1990)

種子抽出法 (seed extraction method)

  1. 発芽実験法 germination test
  2. 直接顕鏡法 direct observation (hand-sorting, elutriation): 顕微鏡(ビノキュラ)下で直接、土壌と種子を分離
  3. 篩い分け法sieving: 篩を用い種子を選別
    湿式: 水中で篩やナイロンメッシュを用いて行う
    乾式: 土壌を乾燥させ篩にかける
  4. 比重選別法 flotation method (Tsuyuzaki 1994)
    種子より重い比重溶液 → 土壌中有機物浮上 vs 土壌・礫等沈降 → 上層に種子を集める
    比重液溶質: (1) 種子より比重大、(2) 種子を害さない、(3) (できれば)多量に使用し安価
    赤座法変法 (Tsuyuzaki 1993): 比重液 = K2CO3(炭酸カリウム)50%溶液(比重1.540)

    → 30分以内に処理完了すれば種子ダメージ低い。溶質も安価

種子生死判別 (Discriminant criteria on seed survival)

発芽試験: 100%発芽は不可能 → 土壌中種子の生死判別は発芽試験でも最終的には必要
比重選別法・直接検鏡法・篩い法: その後発芽試験を行い不明種子同定 + 未発芽種子の生死判別
  1. 軟X線照射 soft X-ray radiation: 堅果等大形種子 → 内部食害や生死等の種子内容を判断可
  2. 発芽試験: 条件設定に標準はない!
    発芽床 seed bed: 濾紙、ピートモス等 → これにより発芽種が異なることも多い
    低温湿層処理 stratification を要する種子が多い
    後熟種子 after-riping seed では不適
  3. TTC検定法: (トリフェニル)テトラゾリウム塩 (TTC) 約1%の溶液で胚(+胚乳)を染色 → 生細胞 = 呼吸によりTTC液が酸化され赤染 → 赤変種子 ≈ 生存種子(中山 1966)
    生死判別が、解剖(胚乳押し潰し法)で判別困難な時等に有効な方法 (と書いてある本もあるが、実際は、微小種子では染色がよく分からない。コンタミがあると、そちらの呼吸を拾ってることもある)
  4. 胚乳押し潰し法 (原典は赤座 1941)
    TTC染色法は、播種前牧草種子等雑菌の少ない種子では種子呼吸のみを計測しているため有効
    → 埋土種子: 種子に多量の細菌等をつけ、少なくとも種子周囲赤変 → 生存率過剰評価

    小型種子では、赤変有無の識別極めて困難

    → 胚乳押潰法: 種子をビノキュラ下でピンセット・解剖針等で押潰し、白色で瑞々しい胚乳 = 生存(誤差大)

種子寿命 (seed longevity)


短命種子short-lived seeds Ex. Salix: 休眠能なし = 寿命数週間 (Zasada & Densmore 1977; Niiyama 1990)
↔ 長命種子 long-lived seeds
長命種子

大賀ハス (Ohga 1923): 縄文時代遺跡中からハス種子発見 → 発芽成功 = 数千年休眠

Dr. WJ Beal実験: 1879にミシガン大キャンパス内に瓶に23種で1種につき50種子を、湿砂と混ぜ入れ瓶に蓋せず逆さにし(水入らない)、深さ約90 cmに埋めた。後継者が定期的に取り出し発芽試験(現在120年)。100年後で3種の種子生存
→ 人工条件下(菌害・水分条件自然界と異なる) → 光なく土中温度変化小さい所で種子が120年生存実証(Darlington & Stteinbauer 1961; Kivilaan & Bandurski 1981, Telewski & Zeevaart 2002)

表. Dr. Beal実験の結果 (%)

    Year                 50  80 100
    Brassica nigra        +   -   -
    Polygonum hydropiper  +   -   -
    Malva rotundifolia    -   -   2
    Verbascum thapsus     -   -   2
    Oenothera biennis    38  10   -
    Rumex crispus        52   2   -
    Verbascum blattaria  62  70  42

有珠山: 1977-78年噴火により火山灰が数m堆積したところの噴火以前に形成されていた表土を採取し比重選別法により種子抽出 → 発芽試験 + 胚乳押潰法 → 種子生存確認
→ 土壌中に25種で1683.3/m²の種子が生存(Tsuyuzaki 1989)
→ 20, 30年後も類似した結果(Tsuyuzaki & Goto 2001, Tsuyuzaki 2010)

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