(2014年1月2日更新) [ 日本語 | English ]
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種子散布 (seed dispersal)表1 歌に語られる種子散布seed-dispersal。種子散布型は、種子に付属する散布器官の形態と機能により区分され、幾つかの分け方が提唱されている(Fenner & Thompson 2005)。遷移(succession)において、大規模撹乱を受ければ、種子は長距離移動が必然となるため、散布様式からは、遷移初期に風散布や水散布等の長距離種子散布を行う種が侵入し、極相近くになると自発散布や重力散布の種が増える。これらの種子は、その特徴から様々な歌に語られている。有珠山では、カンバ・ヤナギ・ハンノキ等、初期侵入樹種は、すべて風散布種子を生産するものである。風散布 wind-dispersalタンポポ、ヤナギ、カエデのように、種子に風によって運ばれる付属体をつけているものを風散布種子という。それらの膨大な数の種子が風に舞う姿の美しさから、多くの歌で風散布は紹介されている。松任谷由実の「ダンデライオン~遅咲きのたんぽぽ」では、風にのり飛んで来た はかない種のような と歌われている。さらに、特別な散布器官を持たずとも微小な種子は、主に風により十分な長距離を散布されるため風散布に含める方が妥当である。水散布 water-dispersalすぐ頭に浮かぶのは、島崎藤村の「椰子の実」の1番で名も知らぬ 遠き島より 動物散布 animal-dispersal動物散布は、動物外部に付着し運ばれる動物付着散布と動物内部を通過し散布される動物被食散布に分けられる。動物付着散布は、動物の体毛や表皮に付着し運ばれるもので、これで子供の頃に遊んだ人も多いと思う。動物被食散布は、種子や果実が捕食され動物内部を経由し運ばれ排泄され散布される。いずれも、その散布距離は動物の行動範囲に大きく依存する。動物散布の一種であるアリ散布の代表種であるエンレイソウは、北大恵迪寮歌の中で雲ゆく雲雀に延齢草の 真白の花影さゆらぎて立つ と歌われる。(オオバナノ)エンレイソウは、その種子にカルンクルあるいはエライオゾームと呼ばれるアリの餌となる物質をつけることで、アリによって運ばれる(Higashi et al. 1989)。自発 self自発散布self-dispersal (mechanical dispersal): 自発散布とは、種子を飛ばす機構を持つ種子(果実)のことで、ホウセンカやカタバミに見られる。中島みゆきの歌で「ほうせんか」という歌の一節に |
ほうせんか 私の心 重力散布 gravity-dispersal特別な散布器官を持たない種子の総称である。そのイメージから、ただ単に落下するだけということで落下散布と呼ぶ人もいる。代表例としては、堅果(ドングリ)を生産するナラ類があげられる。「どんぐりころころ」という唱歌があるが、この歌の出だしのどんぐりころころ どんぶりこ 種子貯蓄 (seed storage)種子の貯蓄場所 = 種子生存にとり重要種子の貯蓄形体の分類 (Lamont 1991)
落下時の状態健全種子 apparent sound seed未熟種子 immature seed: 一番の曲者 食害種子 damaged seed |
= crown seed storage and aerial seed bank (林冠貯蔵種子) セロテニー serotiny (Lamont et al. 1991): 種子成熟直後に散布せず、翌年の種子成熟するまで林冠に種子保持
Ex. マツ科球果が数年間、枝に留まり、火災で開き種子散布する特性
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火災(a) 定着可能(b) 定着不可能 高 非セロテニー的 セロテニー的 火災感受性 火災感受性 低 セロテニー的 セロテニー的 火災感受性/耐性 火災耐性 (a) 稚樹期間における火災発生率 |
多回繁殖植物が、種子生産について極端な年次変動を示すこと
豊凶のみられる樹木 資源適合仮説 resource-matching hypothesis気象条件等により決められた、その個体の獲得した資源量に応じ種子生産量が決まる → 種子生産量と年輪成長(栄養繁殖)の間に負の相関はなくてよい |
経済仮説 economy hypothesis繁殖器官(花・種子)を大量生産することが、様々な意味で有利• 豊作年にはより多くの資源を繁殖に回す • 種子生産量と年輪幅の間には負の相関があるはず
捕食者飽食説(回避説) predator satiation hypothesis |
侵入: ある生物がそれまで生息していなかった地域で繁殖するようになること 伝播: 生物の分布域が広がっていくこと Ex. 1769 キャプテン・クック: ニュージーランド島上陸 4年後: 地中海原産のカナリヤ草が繁茂 1951 Skellam: 侵入の空間的伝播に関する理論的研究拡散方程式 - 広範に適用可能 (適応できない事例が見つかりだす) 1974 Goel-Richter-Dyn: 個体群存続の理論的条件
出生-死亡確率過程モデルで説明 ⇒ 出生率が死亡率より大きいほど初期個体数は少なくても絶滅回避 定着過程: 定着期 - 伝播期 - 飽和期1. 定着期 分布域拡大が顕著ではない理由 (a) 初期侵入個体数が非常に少なく侵入先で生息地が十分にある → 移動分散はホームレンジや縄張りが埋まってから始まる
(b) 侵入先環境不適で繁殖率低 - 結構あるのでは
(a) 一定速度で前進 Ex. Ondatra zibethica、欧州での農耕文化伝播
(a) 親離れした子は比較的親の近くに営巣
(b) あぶれ個体 - 親集団を取囲むよう分布 → 親集団に吸収 拡散モデル diffusion model(Fisher 1937) Fisher方程式 (Fisher model)本来は突然変異個体の拡散過程を説明するモデル∂n/∂t = D(∂2n/∂x2 + ∂2n/∂y2) + (ε - μn)n … (1) 密度n(x, t)の時間変化 増殖 D: 拡散係数 ε 内的自然増加率 μ 種内競争係数 t: 時刻 拡散方程式 diffusion equation∂n/∂t = D(∂2n/∂x2 + ∂2n/∂y2): Fisher方程式で増殖を1としたものPr. t = 0, 個体数 N0 n(x, 0) = N0δ(x) δ関数 ≡ δ(x): 個体が見つかる確率が原点の近傍に集中 ⇒
n(x, t) = N0/(4πDt)·exp(-r2/4Dt) (r = √(x2 + y2)) <r2> ∝ t 密度: 原点から遠ざかると急激に減少 + 無限大でもゼロにならない ⇔ 観察精度限界 - 密度が極めて低いとゼロと見做すしかないDef. 観測限界密度, n*: 観測で検出できる最低密度 |
拡散係数(D)の求め方: 個体分布の時間変化測定可 → (2)で求まる
普通は測定できない → ランダムウォーク適用
<r2>: 1個体がランダムウォークでtの間に移動する距離の2乗平均 ロジスティック方程式 logistic equation(1)式で個体数は増殖のみで変化 (拡散なし) ⇒ dn/dt = (ε - μn)nIf μ = 0 ⇒ dn/dt = εn (≡ マルサスの増殖方程式) n(0) at t = 0 ⇒ n(t) = n(0)·(εeεt)/(ε + μn(0)·(eεt - 1))
If μ = 0 ⇒ n(t) = n(0)eεt マルサス増殖を伴う拡散方程式: (1)式でμ = 0 ⇒
∂n/∂t = D(∂2n/∂x2 + ∂2n/∂y2) + εn (Skellamモデル) √((εD)·r*) := R*, εt := T ⇒ R* = 2T{1 + 1/T·log(r/(4πT))}1/2 ただしr = (εN0/Dn*)定着期間: n(x, t)がn*より低い時期からn*に達するまでの期間 rが小さいほどが長くなる 定着期存在が(c)による場合 伝播速度 C ≡ R*/T ⇒ C = lim(R*/T) = lim2{1 + 1/T·log(r/(4πT))}1/2 = 2伝播期のR*は勾配2の直線に漸近 伝播期の伝播速度, c = lim(r*/t) = 2√(εD) (= Skellamの侵入種伝播速度式)
伝播は増殖と拡散の相乗作用の結果として起こる
伝播期のR*は勾配が2の直線に漸近 (3)式でr := 0, t := te ⇒ r = 4πεteexp(-εte) r = 0 ⇒ te = ∞. r↑ ⇒ te↓. r ≥ 4.6 ⇒ te = 0 Def. 進行波 traveling frontal wave: 解が分布形一定/一定速度前進進行波前進速度, c = 2√(εD) → (1)式の解に存在 + 撹乱に安定 不均質環境での伝播パッチモデル仮定: パッチの状態に依存してεとDは変化Ex. 2種類のパッチが1次元上に交互に分布:凹凹凸凹凸凹凸凸凹 ⇒
凸/凸凸: 好適パッチ(奇数): D(x) = d1, ε(x) = ε1 (x2m ≤ x < x2m+1)
(m = 0, ±1, ±2, …) i: i番目のパッチ ε1 > ε2 Di: 種の環境応答特性に依存 li: i番目のパッチの幅 ⇒ ∂/∂t·n(x, t) = ∂/∂x·(D(x)·∂/∂·n) + (ε(x) - μn)nEx. 仮定: |