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(2018年11月20更新) [ 日本語 | English ]

地衣類 (lichens)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

[蘚苔類, 菌類, 遷移, 図鑑]

地衣酸を代謝産物とする特異な独立群として扱う

門-門共生 symbiont

菌類 (fungi) + 藻類 (algae) → 共同体(consortium)植物群
菌・藻単独では作らない

地衣体内で菌類-藻類は、それぞれ規則的に並び、菌類は吸器houstoriumにより藻類の一部に付着
日本: 約1000種 (阿寒 250種)

Lichensa Lichensb Lichensc
Fig. 120 地衣類皮層構造 a. 異形菌糸組織(ヨロイゴケ属) b 繊維菌糸組織(サルオガセ属) c 繊維状皮層(テロスキテス科)

索引

コケとの見分け方


  • 緑藻 = 銀色を帯びた白っぽい緑か薄い青緑
    藍藻 = 青みを帯びた黒っぽい色
    ↔ コケ植物 = たいてい深緑-黄緑色
  • : 地衣類には規則的な葉のような形をもつものはほとんどない
    ↔ 蘚苔類: ほとんどは茎と葉を持つ
    葉状地衣は葉状体の苔類(ex. ゼニゴケ)に似るが、地衣類は、たいていはるかに薄く、周辺全体で伸びるので、成長する先端が明確でない。葉状苔類は主軸があり、二又分枝が明瞭となる
  • 地衣類: 胞子は地衣体表面か内部に埋もれた子器(子実体)に作る
    ↔ コケ植物: 胞子を柄の上の袋(さく)に作る

形態 (form)

生育形区分(系統無関係だが同定上は参考になる) → 1種で複数生育形示すこともある

固着地衣 (痂状地衣) crustose lichen
地衣体痂状 - 基物に全面的に固着し下皮層欠 → 子柄あれば樹状地衣
子嚢果構造、胞子形状 → 属以下レベル形態同定は特徴明瞭でない限り困難 Ex. Graphia
structure
Fig. 124. 子嚢果模式 a-b, 裸子器 a レカノラ型子器 b レキデア型子器 c 被子器 d 擬子座
structure
Fig. 125. 胞子 a. 楕円形1室, b 2室 c, 紡錘形4室, d 石垣状多室 e 分極2室, f 針状, g 紡錘形多室, h 紡錘形4室(室は菱形)
樹状地衣 (樹枝状地衣) fruticose lichen
地衣体少なくとも一部基物から離れ痂状でなく樹状 Ex. Cladonia
地衣体断面は円形のものが大部分で、藻類層は同心円状に並ぶ
葉状地衣 foliose lichen
地衣体薄紙状、偏平で水平に広がる。表裏区別明瞭
裏面の仮根(偽根)で基物につき基物から少し浮く → 安定 Ex. Parmelia
外部構造
裂芽(針芽) isidia: 地衣体表面、多くは背面に散在する小突起 - 皮層あり

皮層、ゴニディア、髄層からなる

粉芽 soredia: 髄層からできる菌糸と藻類が集まってできたもの - 皮層なし

粉芽塊 soralia: 粉芽が集団をなしているもの

パスチュール pastule: 裂芽の様に突起として形成

→ 先端太くなり破れ粉芽に似た粉噴出

杯点 cyphella (偽杯点 pseudocyphella): 地衣体腹面に見られる孔

Ex. ヨロイゴケ属

臍状体 umbilicus: 腹面中央部にある点で基物付着部分 - 繊維状の互いに固く癒着した菌糸からなる

Ex. イワタケ、カワイタケ

海綿状組織 spongy cushion: 地衣体腹面にある太い菌糸が網目状に並ぶ半球状突起

Ex. アンチンゴケ属

頭状体 cephalodia: 地衣体共生藻(緑藻)と異なる藻類(藍藻)を中に持つ突出物

Ex. ヒロハツメゴケ

内部構造
上皮層、藻類層、髄層、下皮層の4層に分化
皮層 cortex (上皮層 upper cortex) = 表↓
ゴニディア層 gonidial layer (藻類層 algal layer): 藻類細胞が層状に並ぶ

ゴニディア(-ウム) gonidium, pl. -a: 菌類と共生している藻類 = 主に緑藻。藍藻のものもある

藻体: 単細胞か糸状体
異層地衣 heteromerous lichen: gonidiaが表層に偏る
同層地衣 homomerous lichen: gonidiaが髄層まで満遍なく存在

髄層 medulla: 地衣体大部分を占める層 → 縦横に交錯する菌糸 hypha
皮層 cortex (下皮層 lower cortex) = 裏↑
偽根 rhizine: 地衣体裏面から伸びた菌糸の束
トメンタ tomentum, pl. -a: 地衣体腹面・背面に生じる綿毛状のもの

地衣成分 (chemical components)


地衣の色を決める主な物質でもある
呈色反応法: 地衣体に試薬をつけ色変化から地衣成分見分ける
顕微化学的手法: アセトン抽出 + 試薬 → 再結晶や塩 → 顕微鏡観察 → 結晶形 → 地衣成分種決定
クロマト法: 薄層クロマト法が良く用いられる
14C, PC (生合成最盛期に), 13C NMR: これらの技術により地衣成分構造明らかとなる
1. シキミ酸経路 shikimic acid origin
Ex. テルフェニルキノン類 terphenyl qauinones, プルビン酸誘導体 pulvic acid derivatives
2. メバロン酸経由 mevalonic acid origin
トリテルペノイド triterpenoids
3. 酢酸-マロン酸経由 acetate-malonate origin
高級脂肪酸類 higher fatty acids, フェノール・サルボン酸類 phenol carboxylic acids

利用

リトマス試験紙 = リトマスゴケ Roccella tinctoria (L.) DC.化学成分を利用
オークモス: 樹枝状地衣類(ツノマタゴケ類) → 抽出エキス = 香水原料(ムスク様)
ウールの植物染色
鉄道模型等ジオラマ用樹木に利用
医薬品: ウスニン酸 → 傷薬(現在不使用)
地衣成分中に抗ガン作用? → 研究必要

(昔のノート)

分類 (taxonomy)


Class Lichens 地衣綱 (Zahlbruckner 1926)

生殖器官(子嚢等)微細構造、遺伝子塩基配列 → 多系統群で並行的に地衣化lichenization起こる

→ 地衣類は菌類分類体系の枠組中で取扱う

ICBN: Def. 地衣類学名は地衣体構成菌類に対し与える → 菌同種なら藻類に関わらず同学名
→ 共生菌類 mycobiont: 大部分子嚢菌。担子菌少。菌類形態から3(4)種subclassに分類

地衣体 thallus の大部分は菌類菌糸からなる。分離は子嚢か担子器から菌を採取し寒天培養

Subclass Phycolichen

Fries E 1831 (藻菌地衣, green algal lichens) 1属1種(疑問)

Subclass Ascolichenes (子嚢地衣, 一般的)

子実体に子嚢 ascus ある (= 子嚢胞子 ascospore) → 子嚢果 ascocarp
栄養体生殖 = 針芽(裂芽)isidiaか粉芽scoredia (Gonidia有性生殖未確認。Fungiは個々菌体で有性生殖)

粉子器 picnidium, 粉子 picnospore (microconidium): 分生子の一種
子嚢上層 epithecium, 子嚢下層 hypothecium
子実層 hynenium = 子嚢 + 側糸
果殻 proper exciple, 果托 thalloid exciple
被子器 perithecium or 裸子器 apotheciumということが分類基準となる

Series Pyrenocarpeae (被果地衣系)
壷状で無柄の被子器peritheciumを作る。大多数は固着性
Dermatocarpaceae
Pyrenulaceae
Strigulaceae
Trypetheliaceae
Series Gymnocarpeae (裸果地衣系)
裸子器apothecium作る。大多数の地衣類がこれに属する
Subseries Coniocarpineae (粉果地衣亜系)
側糸 paraphysis は崩壊し粉状となり、胞子と共に粉塊となって盤上に残る(3科全て日本に産)
Caliciaeae
Cypheliaceae
Sphaerophoraceae
Subseries Graphidineae (モジゴケ亜系)
裸子器線状-星状で無柄。粉塊作らない
Caloplacaceae ダイダイゴケ
Dibaeis baeomyces Baeomycetaceae センニンゴケ
Baeomyces Pres. センニンゴケ: B. fungoides Sw. Ach., syn. B. roseus (Hampe) Pers. → Dibaeis baeomyces (L. f.) Rambold et Hertel
Cladoniaceae ハナゴケ
Cladonia (Hill.) Vain.(f < g, clados (枝) - 樹木状地衣で分枝する) ハナゴケ: C. rangiferina (L.) F. H. Wigg. ssp. grisea Ahti トナカイゴケ: トナカイ食)
Glossodium Nyl. ヘラゴケ
Cladia
Gymnoderma Nyl. ツブミゴケ
Pilophoron Th. Fr. カムリゴケ (n < 1, pileus 帽子 + phoros 持つ。子器形に基づく): P. hallii (Tuck.) Vain. カムリゴケ)
Stereocaulon Schreb. キゴケ (n < g, stereo 硬直な + caulon 茎。植物体は樹枝状) キゴケ
Collemataceae
Collema (Wigg.) Zahlbr.イワノリ, Leptogium (n < g leptos 薄い。地衣体薄) (L. palmatum (Huds.) Mont テガタアオキノリ)
Lecanoraceae チャシブゴケ
Lecanora (f < g lecane(皿,水盤)。子器形が浅い盤状をなす): L. megalocheila チャシブゴケ
Lecideaceae ヘリトリゴケ
Rhizocarpon DC チズゴケ, map lichen (n < g rhiza 根 + carpon 果実。基部に密着した根の様に地衣体中に子器出来る): R. geographicum (L.) DC ヘリトリゴケ
Pannariaceae
Parmeliaceae ウメノキゴケ: 樹上-岩上着生
1. 皮層は異形菌糸組織

Cetraria Ach. エイランタイ
C. aculeata (Schreb.) Fr. タチクリイロトゲキノリ
C. islandica (L.) Ach. ssp. orientalis (Asahina) Karnefelt-, laevigata Rass.マキバエイランタイ
C. odontella (Ach.) Ach. トゲエイランタイモドキ Parmelia (Ach.) De Not. (f < 1 parmia 小さな楯。子器形から) P. tinctorum エイランタイ
Flavocetraria cucullata (Bellardi) Karnefelt et A. Thellウスキエイランタイ (Syn: Cetraria cucullata (Bellardi) Ach., Toolik Lake)

1. 皮層は横走する菌糸からなる遷移状菌組織

2. 偽根ある

3. 子器と粉子器は必ず地衣体背面につく

4. 背面穿孔あり、子嚢は2胞子入れる ___ Menegazzia
4. 背面穿孔ない、子嚢は8胞子入れる ___ Hypogymnia

3. 子器と粉子器は地衣体背面に散生するが地衣体縁部にもつく ___ Asahinea

2. 偽根がない

3. 子器と粉子器は地衣体背面に散生する

4. 地衣体腹面には海面状組織ない。胞子長楕円形、子嚢は2-8個の胞子入れる

5. 粉子は頂生する ___ Parmeliopsis
5. 粉子は側生する ___ Parmelia

4. 地衣体腹面には海面状組織ある。胞子三日月状、子嚢は2多数の胞子入れる ___ Aniza

3. 子器と粉子器は地衣体縁部につく

4. 皮層上部はI-、胞子は11-12 × 6-12 μ ___ Cetrelia
4. 皮層上部はI+、胞子は5-8 × 3-5 μ ___ Platismatia

Lecideaceae ヘリトリゴケ
Pannariaceae
Parmeliaceae ウメノキゴケ: 樹上-岩上着生
Cladonia macilenta Cladonia rangifera Peltigeraceae ハナゴケ
Peltigera ハナゴケ (f < 1 pelta (盾)を持つ意。楯状子器付ける
P. canina (L.) Willd. イヌツメゴケ
P. aphthosa (L.) Willd.ヒロハツメゴケ Felt lichen, Toolik Lake
Pertusariaceae
Physciaceae
Stictaceae ヨロイゴケ/カブトゴケ
Lobaria (Schreb.) Hoffm. カブトゴケ (f < g lobos (裂片)。地衣体が多くの裂片lobeからなる)
Sticta (Schreb.) Ach. ヨロイゴケ (f<g stictos(点)。地衣体裏に一面点ある)
Teloschistaceae
Umbilicariaceae イワブスマ
Umbilicaria Hoffm. イワブスマ
U. caroliniana シワイワタケ, U. esculenta (Miyoshi) Links イワタケ: 日本食用, U. cylindrica タカネコゲノリ: 十勝), Lasallia pensylvanica オオイワブスマ: 十勝
Usneaceae サルオガセ
Usnea Wigg. サルオガセ (f < ar Ar語 usnea 苔から)
Ramalina (f < 1 ramos(枝)縮小形。体細かく分枝) カラタチゴケ(R. intermediella Vain.コフキサルオガセ)
Alectoria Ach. (f < g alektor 牡鶏, 延いて鶏冠。子器/枝端形が鶏冠状になる)

Subclass Basidiolichenes 担子菌地衣

担子菌が共生菌。地衣類中例外的存在
Dictyonemataceae ケットゴケ
Dictyonema (Ag.) Zahlbr. ケットゴケ, D. sericeum (syn. D. thelephora) ケットゴケ: 主に(亜)熱帯
Clavariaceae ホウキタケ Multiclavula Peters. キリタケ, M. mucida (Fr.) Peters. キリタケ)
Agariaceae マツタケ
Omphalina hudsoniana (Favre) Hendersen アオウロコゴケ
lichens

Subclass Imperfecti (Deuterolichen, Lichens Imperfecti) 不完全地衣

不完全菌(共生菌): 子嚢胞子形成見られない + :藻類 日本5属
Racodium Pers
Thamnolia Ach.
Siphula Fr.
Lepraria Ach.
Leprocaulon Nyl.

生理 (physiology)


  1. 物質移動

    炭水化物: 藻類 → 菌類へ移動 - 移行阻害実験により調べる
    窒素化合物(アミノ酸等): 藍藻Nostocは空中窒素固定 → 菌類へ
    ビオチン: 菌類発育因子 → 藻類生産 → 菌類へ

  2. 光合成: 地衣体内含水量により大きく変化 → 乾燥適応法は種により異なる
  3. 成長: 早いもので年数cm程度、遅いと年1 mm以下 → 厳しい条件下への適応

地衣体から藻類の分離

  1. 展開培養: 地衣体懸濁液 + 無機栄養寒天培地
  2. 藻類抽出: マイクロピペットを用い藻類のみを磨り潰し培養基に移す

培養条件: 一般に増殖速度は遅い

光 / 有機窒素(増殖速度を高める) / pH
Ex. Nostoc無菌培養 (μg/ml): エロスポリン10-20 units/ml, グリオトシキシン125-250, ネオマイシン < 4, ストレプトマイシン <, テラマイシン > 233

人工的再合成: 分離した藻類と菌類を混ぜることにより地衣類を再現する試み

Ex. Acarpospora fuscate-Trebouxia sp.: 粉胞子器形成に成功

語源 (etymology)


旧: Anzia Stizenb., f < p, Anzi (恐らく18C, Cl). Cetraris, f < 1 cetra(小楯)。盤果形から

Evernia f<g eyernys(よく分枝した)。体分枝状態から (サルオガセ科)

Gyrophora f<g gyros(環) + phore(有する)。円盤状子器表面に明らかな環状模様がある (イワタケ科)

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