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(2014年6月2日更新) [ 日本語 | English ]

研究概要






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

「自己紹介」 も参照

撹乱 (メインテーマ) 自然撹乱 人為撹乱

自然撹乱・人為撹乱は便宜的な区分で、両撹乱が混在した生態系は多い。

共通テーマ: 撹乱(環境変化)に伴う植物群集動態機構の解明


 撹乱(disturbance)直後から極相に至るまでの植物群集動態および遷移(succession)様式を、包含的に説明できるモデル構築を目指している。具体的には、一次遷移と二次遷移を分けることなく、乾性遷移と湿性遷移を分けることなく、さらに人為撹乱を考慮しても説明可能な遷移理論を構築したい(Tsuyuzaki 1995)。このことが、生態系の保全と復元につながるのだろう。そのためには、様々な撹乱地における遷移と動態の鍵を明らかとする必要がある。 Dream  森林火災やスキー場に関わる研究は、温暖化話と関わったり、紫外線が植物に与える影響について研究したい学生が発生したりで、I hyave a dream ... * 状態となりつつあるが。

自然撹乱


火山噴火初期植物群集動態


⇒ 洞爺湖・有珠火山地域の環境と資源 植生復帰

1977-78年噴火-有珠山山頂部1985年の姿  1977-78年に噴火した有珠山山頂域に永久方形区を設定し現在まで調査を行っている。植生回復は、栄養繁殖種子散布埋土種子(seedbank)・人為散布の4起源が主である(有珠山フローラリスト) (Tsuyuzaki 1987)。主に、一年生草本は埋土種子(seedbank)から、木本植物(ヤナギ類やカンバ類)は種子散布により供給されている。噴火から10年程度は、 オオイタドリ オオブキ のような大型多年生草本の栄養繁殖が植生回復に大きく寄与していた(Tsuyuzaki 1989)。植生発達決定因子としては、初期には植物供給起源からの距離・土壌栄養状態・土壌安定性の3つが主要である。植物群集構造は、多様性等の側面から見ると大きくは変化していない。先に侵入した植物の特性により遷移速度が決められている(Tsuyuzaki 2009)。

有珠山における植物群集動態

 研究過程で効率の良い土壌中からの埋土種子抽出法(遠心浮上法(centrifuged flotation method)を開発し(Tsuyuzaki 1994)、噴火から30年を経過しても、なお、火山灰下ではかなり高密度で種子が生存していることを示した(火山灰の下から発芽するタネ) (Tsuyuzaki 2010)。

→ フローラ: 有珠山, 駒ヶ岳 (標本)

Summit area in 1985
有珠山噴火30年後にテフラ下から採取した
旧表土から発芽・開花したオトギリソウ
(Hypericum erectum)

 2000年噴火火口周辺に永久調査区を設定し調査を継続しているが、砂防工事が火口近くまで行われ、今後継続調査が可能かどうかは分からない。その一方で、日本初のジオパークGeoParkに指定され、開発と観光の狭間に置かれた微妙な地域となった。

video 有珠山に見る、人と火山の共生

 1980年に噴火した米国セントヘレンズ山と有珠山の植生回復を比較し撹乱強度が似ていれば種組成を異にしても機能的・構造的に類似した植物群落が発達することを示した(Tsuyuzaki & del Moral 1995)。
 火山のような撹乱地では帰化植物が侵入しやすい。北海道渡島駒ケ岳では、非在来種であるカラマツが優占する(Kondo & Tsuyuzaki 1999)。そこで、カラマツの侵入定着特性を在来種と比較すると、環境に応じて形態的特性をより変化させることが分かった(Akasaka & Tsuyuzaki 2005)。駒ケ岳では、菌根菌(mycorrhiza)の定着状況(Tsuyuzaki et al 2005)と植物成長の関係、ミネヤナギの定着促進効果(ファシリテーション, facilitation) (Uesaka & Tsuyuzaki 2004)は地上部・地下部環境をともに改善することで起こることを示した(Tsuyuzaki et al 2012)。

駒ケ岳における植物群集動態

大規模火災後の植生回復 (fire ecology)


Wildfire  火災後の植物群集発達様式は、火災の頻度や規模に規定される。アラスカでは温暖化に伴い、火災は、頻度も強度も増しつつある。その結果、タイガ(taiga)を始めとする森林はCO2の貯蔵源から放出源に変化する。そこで、2004年の大規模火災跡地において追跡調査を行っている。  クロトウヒ(Picea mariana)林において、火災強度が増し林床のミズコケ類が消失すると、これまでの回復とは異なるパターンが見られる(Tsuyuzaki et al 2013)。特に、落葉広葉樹の実生定着が顕著となる(Tsuyuzaki et al 2014)。したがって、回復の鍵はミズゴケであることが明らかとなり、ミズゴケを復元させることによりクロトウヒ林を維持する手法を検討する予定である。地表面アルベドは、植生が回復するまで、低い値のまま推移すると予測された(Tsuyuzaki et al 2009)。
 セワード半島において、ツンドラ火災後の回復過程を調査し、永久凍土を介したタイガ火災との共通性を調べている。

動物撹乱


 撹乱とは限らないが扱った動物は以下の通り。アリとかもあるけど。

人為撹乱


二次遷移植生動態

 スキー場・耕作放棄地・採掘跡地等が調査対象であったが、自然撹乱も人為撹乱も同じ図式で書けるはずである。台風・津波等、その他の自然撹乱跡にも拡張したい。
 知床100 m²運動近くの耕作放棄地では、二次遷移では埋土種子(seedbank)が植生回復に重要だが、埋土種子集団の発達は悪く植生回復に寄与せず、推移が遅い原因となっていた(Tsuyuzaki & Kanda 1996)。
 マキリング山(フィリピン)においてアグロフォレストリー(agroforestry)導入による森林保全効果を検討した(Taguiam & Tsuyuzaki 1998)。現地の人達は、自分がやっているのがそうなのだという自覚がない点が面白い。クリスマスと治安状態から、ピナツボ山を見る以外は遠出もできず、調べられることは中軸分枝数(number of veins, NV)位だったもので、大学の近くでずっとシダ植物のサイズ測定をしていた(Tsuyuzaki 2000)。

スキー場植生


 北海道・新潟県スキー場斜面の植生と環境データを集積し斜面植生の推移様式の検討を行っている。スキー場斜面植生発達は、人為干渉形態・斜面斜度・周辺植生・土壌侵食等が主に規定され(Tsuyuzaki 1990)、造成時の人為干渉が軽微なスキー場ですら、土壌移動は広範に発生し植物侵入を抑制している。北海道低地スキー場では、様々な草本群集が発達するが、ススキ(Miscanthus sinensis)草地を除くと木本植物定着は不良であり、帰化植物の侵入は木本植物の侵入を阻害する(Tsuyuzaki 2002)。一方、高地スキー場ではススキ草地が発達せず木本植物侵入は不良である(Tsuyuzaki 1993)。傾向は本州のスキー場でも同様であり(Tsuyuzaki 1995)、木本植物侵入定着による迅速な生態系回復にはススキ草地導入が鍵となる(Tsuyuzaki 2005)。この機構を明らかにできれば、植生復元にも応用可能と考えられる(手が回らない)

スキー場斜面植物群集動態
スキー場斜面生態系 情報・リンク

Nakayama

 米国(WA, OR)のスキー場と日本のスキー場の植生比較をし、植物群集発達様式が2国間で異なるのは、造成方法を含めた人為撹乱強度によることを示した(Titus & Tsuyuzaki 2003)。カナダ西海岸の州立公園・国立公園内スキー場を調査し、これらの指定公園の法的規制の特徴を調べた。これらの成果を踏まえ、スキー場造成に伴う環境問題を、北海道および新潟県を例に生態学的側面および経済・社会側面から整理した(Tsuyuzaki 1994)。
 北海道では、2000年に入り10以上のスキー場が閉鎖(休業)した。スキー場として使われてるのならまだしも、斜面は一体どうなっているのか... そういうページ をここに作りたい。

鉱山廃鉱跡地における植生回復と復元


 自然撹乱と人為撹乱をつなぐとして鉱山廃坑跡地が適しているのではないか、という視点から研究を始めた。西オーストラリアのボーキサイト採掘地を調べたが、これは社会問題が大きくからみ、悩ましい。

鉱山跡地における植物群集動態

 煙誘導種子発芽 Pに関する研究アイデアと手法は、オーストラリアで会得した。煙により種子発芽が誘導される現象は、火災の多い地中海性気候の地域から数多く報告されている。そこで、日本で40種類の種子発芽を調べると、煙誘導発芽をする種はゼロではなかった(Tsuyuzaki & Miyosyhi 2009)。

湿原遷移と保全


Drosera  釧路、サロベツ、中国大陸、シベリア、アラスカ*の湿原において調査している。スケール依存的に、水位が、ついで水位に規定された物理化学要因が植生分化に関与することを示した(Tsuyuzaki et al 2004)。泥炭採掘跡地における植生遷移にも、このスケール依存性が関与している(Nishimura & Tsuyuzaki 2014)。湿原の森林構造(Tsuyuzaki 1994)・野地坊主 (Tsuyuzaki & Tsujii 1990)・放牧が植生に与える影響を調査した。シベリアの湿原でメタン放出には、植物群集組成が関与していることを示した(Tsuyuzaki et al 2001)。地球温暖化が進めば湿原群集構造は、間違いなく変化するため保全研究が必要となる。

*: アラスカは森林火災に関連

湿原の植物と保全 P
湿原の保全と復元 -サロベツ湿原を事例として-

サロベツ泥炭採掘跡地
 多くの学生が調査しており、詳細は学生に聞くとよい。
 まず、採掘後の遷移様式を特定した(Nishimura et al. 2009)。その遷移系列に沿った、埋土種子集団の発達様式を確定した(Egawa et al. 2009)。特に、リター堆積が、埋土種子集団には重要である(Egawa & Tsuyuzaki 2013)。ついで、遷移に伴う環境変化に応じた実生の定着様式を示した(Egawa & Tsuyuzaki 2011)。また、谷地坊主の発達は、他種の定着を促進するが(Koyama amp; Tsuyuzaki 2012)が、その効果は乾燥ストレスが強くなると低下していた(Koyama & Tsuyuzaki 2013)。
 採掘跡地には絶滅危惧植物であるナガバノモウセンゴケが、生息している。本種の保全を目的に、形態的特性(Hoyo & Tsuyuzaki 2013)による同定を試み、これを用いて生息地特性を調べている。
 日本では火山・湿原の多くが国立公園等に指定され、自然保護区における生態系管理も考えねば、とは思う。しかし、有珠山の調査地は特別保護地区になるが、その近くには生えている訳もないアカエゾマツが堂々と植えられている。これでいいのか。復元は悩ましい。
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