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(2013年1月5日更新) [ 日本語 | English ]

植物分類学 (Plant taxonomy)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

はじめに (なぜこのページを作るのか)
総論 [ 学名 | 読み方 | 見分ける | 同種異名 | 学名確認 | 標本作成 ]
参考 [ 図鑑等 ]
 学生の論文原稿で学名の書き方の間違いが減らないような。いい加減な学名は論文を書く時に信頼性を失う原因の一つになることは疑いない。10種くらい学名が書いてあって、そのうち3つがコケてる論文を審査させされたことがあるが、ここまでひどいとデータそのものまで疑わしくなってしまう。
 もう一つの目的は、完璧に 趣味なので、植物の見分け方等も、少しずつだが書いていこうとは思う(これも趣味)。
 良く聞かれることの一つに、「図鑑」は何が良いか」というのがあるが、「この図鑑」と1冊だけを薦めることはできない。というのは、どの図鑑にも一長一短がある。「これ一冊でOK」とかいう、受験参考書みたいな図鑑はない。いくつかの図鑑を比べてみるとよい。学名や分類キーがかなり異なっていることが分かる。以下のページ等を参考にしながら、自分が正しいと思う学名を使うことが重要である。

分類学 (taxonomy)


  1. 分類(s.s.): タクソンの限界 circumscription 示す = 整理 タクソンの限界circumscription
    → 限界を示す鍵 = 分類鍵 taxonomic key
    = 最少標準 minimum standards
  2. 命名: 各国際命名規約に則ってタクソンに学名を与える
  3. 同定: 個体が既に命名されたタクソン上の位置を決める
  4. 保存: 基準種および重要な標本を劣化を防ぎ保存する
  5. 系統発生 phylogenetic: タクソンの進化論的位置づけと相互関係を示す
    → 新分類体系確立する

pentagon

分類と命名の相互関係: 分類と命名は表裏一体であるが区別されねばならない → それぞれの持ち分

命名: 名付け方が正しい手続きを経たかどうかを検討 → 分類中の位置づけ問題に立ち入らない
分類: 正式手続きを踏んだ発表種名でも属以上の位置が全体的な視点から見直されることがある

論文中の学名 (scientific name) 表記


 学名について、面白い一文を見つけたので、ここに載せておきたい。どこかの大学の3年または4年の試験解答に書いてあった書き込みのようである。

Latin is a language as dead as dead can be.
First it killed the Romans, and now it's killing me!

 その講義は、この嘆きを解消することと学名の必要性を説く授業で、そのイントロに紹介されていた。

ゼミ等で目にする過ち (気づいたらメモ)


二名法 (binomial nomenclature)
  1. 悪名高き マイクロソフト ワードユーザーが硬い意志と親切心からやってくれる、人名略記に伴うピリオド、subsp., var.等のピリオドの直ぐ後ろの文字が大文字に自動変換されているのに気づかない。

    誤: Acer palmatum Thunb. Var. Amoenum Ohwi
    正: Acer palmatum Thunb. var. amoenum Ohwi

     さらに、すごいのがNicotiana attenuataと入力したら、勝手にattenuateと直された。属名と種小名の性は統一するのが約束だろーが! と怒鳴ってみたり。
  2. 学名のフォントスタイルは統一する。学名はイタリックにすると思っている人が結構いるが、統一されていればボールドでもなんでもよい。ただし、雑誌によっては投稿規程に学名はイタリックにすると指示してある。
     属名、種小名をイタリックにしたら、亜種名、変種名もイタリックにする(上例)。図鑑等では、自分が採用した学名をボールドで書き、異名と考えるものをイタリック等にしているものもある。
  3. 命名者を書くときには、亜種・変種・品種名命名者のみではなく、種小名命名者も書く。図鑑等では、種より下の分類群の説明の前に種の説明がなされているため、種小名命名者を省略している。論文等で、事前に種小名命名者を書いていない限り、それは間違いである。
    誤: Acer palmatum var. amoenum Ohwi ↔ 正: 上記
    長い例ではAster ageratoides Turcz. var. ovatus (Franch et. Savat.) Nakai f. yezoensis (Kitam. et Hara) Ohwiとなる。なお、Asterは学名見解が未統一で上記学名は不採用とする人も多い
    ただし、自動名は、亜種・変種名命名者を省略できる
    例: Platycerium bifurcatum (Cav.) C.Chr. ssp. bifurcatum var. bifurcatum
  4. 複数の文献から学名を取る場合、人名等の略記の仕方が異なる場合がある。論文中では統一する。
  5. 種小名に人名・地名等の固有名詞が用いられる場合、本来は大文字だが小文字にしてもよく、その方が増えている。論文中では統一する。
    Populus Maximowiczii、あるいは Populus maximowiczii
     本来、ラテン語は、今でいう大文字しかなく、後に小文字ができたので、大文字・小文字の区別はなかった。後に、固有名詞は最初の一文字を大文字表記するようになった。「原色日本植物図鑑」では、種小名が人名由来の場合には最初の一文字を大文字表記している。

未同定種 (sp.とspp.)


 名前が種レベルではつけられない場合は、未同定種として扱うしかないが、その記載の仕方については、なんでもかんでもsp.をつければ良いというわけではなく、

sp. (sp) = speciesの単数形, single species
spp. (spp) = speciesの複数形, (probably) plural species

ということで、意味がまったく違うので、注意したい。

 属レベルまで明らかであれば、
Salix sp. = ヤナギ属の1種だが未同定
Salix spp. = ヤナギ属は確かだが数種が混じる(可能性もある)。ヤナギ属に属する全ての種という意味もあるが、生態学の論文では混じるという意味がほとんどだろう。
 同様に、キク科であることは分かるならば
Asteraceae sp.やAsteraceae spp.とするが、意味は上記と同様に異なる。

Trillium

同種異名 (synonyms)

 植生記載等で問題となるのは、異タイプ異名 heterotypic synonym である。例えば、図鑑により学名が異なることがある。どれを選ぶべきか。もっとも安直な解決策は、雑誌"Plant Ecology (formerly Vegetatio)"に見られるように、学名は指定した文献や図鑑等に全て従うことを明記し、私情を一切挟まず、その文献の学名に従うことである。ただし、どの文献に従うかは、自分の判断が必要となる。個人的には、なんでもかんでも一番新しい文献に従えば、それで良いというわけではないと思っている。例えば、「日本の野生植物」は相当数の研究者が各分類群について分担執筆しているため、分類群によっては承服できない学名もある。その場合、学名に命名者を明記することで、その学名を用いる理由は判断される。最近、あちこちのホームページからのつぎはぎとしか思えない、統一性のない学名の羅列をみることがあるが、まったくもって頂けない。
 和名については、命名規約があるわけではないので、どうでもよいと言えば、どうでもよい。ただし、標準和名(自分にとって何が標準和名かは謎だが)を使用することが提唱されており、あまり用いられていない和名を用いると、読者も混乱するし、できるだけ広く用いられている名前を使用するように努めるにこしたことはない。学名を併記するのも、混乱を避ける一つの方法である。
 同種異名を悪用して、輸入禁止生物が「別種として」持ち込まれることがある(あった)らしい。ある意味、学名が混乱していることが原因ともなるわけだが、悪党につける薬はなし、といったところだろうか。

読み方について


 学名はラテン語で書かれているので、読み方もラテン語であるのが本当なのだろう。しかし、今の地球上にラテン語を話す人はいない。米国では、当然、米語読みをする。しかし、ワシントン大学にいた時に、どうにも米語読みに抵抗を感じて、日本ではラテン語読みをすると言ったら、今の時代に誰がラテン語を話すのか、と問い返されてしまった。ローマ字読みをするのが、ラテン語読みに一番近いのだろうが、ここは、考えようで、ローマ字読みすると、英語圏では、全く通じない。日本でも、自分が学生の頃はPinusは「ピヌス」と言う人が多かったが、今では、「パイナス」と英語読みをする人が増えている。

GIF

 結局のところ、現状では、国内では、ローマ字読みでも英語読みでも可、海を越えたら、英語読みをするのが、意思の疎通を一番しやすい、といったところだろうか。ただし、ゼミ中とかに、これをチャンポンに使われると聞いてる方が混乱するので、自分のスタンスを決めておくことは大事である。

総論


学名確認方法


学名検索データベースへのリンク

 学名については、国際植物命名規約 (International Code of Botanical Nomenclature, ICBN)があることを知る。属名、種名などの表示方法とラベルの書き方というページは、園芸植物の学名の書き方を説明しているが、その中の原種記載についてのルールは全く同じなので参考になる。

 個々の学名に自身がないときには、Royal Botanic Garden, Kew の学名データベースか、The International Plant Names Index (IPNI) を参照する。なお、近年のDNA解析等による系統関係については、Angiosperm Phylogeny Website等で見ることができる。ただし、分類と系統は、時として別問題となるのことに注意されたい。なお、英国自然史博物館(Natural History Museum)のホームページで見ることができるが国際分類学イニシャティブ(Global Taxonomy Initiative [ Japan , 日本版 ])プロジェクトが立ち上がり、世界中の分類学情報を網羅的に整理する試みが始まっている。

日本分類学会連合: この中の、 加盟学会 を見ると日本の分類学の現状が分かるはず。

植物分類学会ページの中のFlora of Japanの検索機能を使うとFlora of Japan (講談社)で用いられてる学名を知ることができる。

植物学リソース: 3000以上の植物関連サイトをテーマ別、種類別、地域別に分類したリンク集
東京都立大学牧野標本館所蔵 タイプ標本データベース
Harvard University Herbaria Databases

見分けるために


形態
花・果実
分類基準として多くが花(そして果実)形態を採用するので当然といえば当然。しかし、野外調査では、必ずこれらの器官があるとは限らないので、それ以外の見分けるポイントを知っておく必要がある。
触った感じとかいう、図鑑とかで表現しづらい部分も大事なので... 触ってみるしかない。葉に多型がある場合もある。
匍匐茎や地下茎も茎。
地下部
図鑑を見るとよく、「地下部は...」とか、「根茎を作る」とか書いてある。地上部だけを持って教室に戻ってきても、もう遅い。
生態
生息地
特に光と水の状態を見ておく。
撹乱 撹乱の度合いは、火山では大事だ(スキー場でも)。
季節性
花期、結実期はいつか。

 標本を作ろう! 似た植物を比較するには、これで比べるしかない。写真では、触った感じは分からない(-写真を撮るなという意味ではない。むしろ、撮るべき-)。標本といっても、押し花そのもののことなので、子供の頃の「夏休みの学習」とかを思い出し楽しみながらながらやれば十分なので、決して難しいことではない。標本採集時には、採集日・場所(locality)を記録しておくことは、もちろんだが、上記にあるような観察事項も記録していると、きっと、良いことがあるはず。

分類群 (taxon) 玉石混交


菌類は植物に入れないが... 必要なので

エングラー体系 (Engler's syllabus)

標本 (specimen)


[ 駒ケ岳採取標本 | 作成法 |

植物標本
 植物の全体または一部を、後々までデータが得られるよう保存されたもの。

乾燥標本: 乾燥状態で保存
液浸標本: 液体(アルコール等の保存液)に浸し保存
プレパラート: 組織標本等として保存

完全標本
 その植物 (species) の特徴をおおむね全て保有した標本。種子植物の場合は、根・茎・葉と生殖器官(花または実)が揃ったもの。
 分類学では、完全標本を理想とするが、生活史研究などでは、実生などの標本も採取・保管される。
作成目的
  • 同定
  • 学術資料(証拠標本): 分布・変異・季節性等
  • 命名(基準標本)
  • 展示学習
  • 記念品
  • 工芸趣味

駒ケ岳採取標本 specimens collected from Mount Koma


北大総合博物館(SAPS)保管標本

Chimaphila umbellata (L.) W. Barton
オオウメガサソウ
Drosera rotundifolia L.
モウセンゴケ
Campanula lasiocarpa Cham.
イワギキョウ
Chimaphila Drosera Campanula
2000年8月3日、駒ケ岳南西斜面、標高550 mにて採集。標本個体はパッチ状に生育しており、この時期にはさく果を付けていた。 2000年8月13日、駒ケ岳南西斜面、標高850 mの礫地にて採集。 2000年8月3日、駒ケ岳南西斜面、標高850 mにて採集。 ⇒ 駒ケ岳の植物 Flora on Mount Koma

スケールバーはすべて2 cmを示している。 (露崎史朗他 2001)

作成法 preparing specimen


手順

 サク葉標本は、通常、新聞紙1ページを半分に折った大きさ(30 cm × 40 cm)である。採集時に、その大きさに納まるよう意識して採集すると、後の作業が楽だし、使いやすい標本ができる。

採集時の心がけ
  • 周辺を荒らさず、必要以上に採らない
  • 保護区等では事前に採取許可が必要である
  • 事故防止に心がけ危険を伴う場合は採取しない
採集

準備 (その他は野外実習準備に準ずる)

野外調査道具 (field eqiupment) → 植物採取用 (collecting plants)

胴乱 または ビニール袋(一斗程度の大きさ)
野冊(段ボールやべニア板で代用可)
剪定鋏
根掘り
新聞紙(できればその場で押してしまうため)
マジック(新聞紙に記録するには消えないようにマジックで)

 採ったらできるだけ土を落としておく。できれば、その場で、記録を書いた新聞紙に形を整えて挟み野冊に挟み込む。できなければ、ビニール袋や胴乱に入れて持ち帰る。

作成

道具

吸水紙(吸湿紙) (新聞紙可)
挟紙(= 新聞紙)
重し(普通の草10 kg程度、枝の硬い樹木20 kg程度)
押板
ピンセット

標本圧搾
呼吸熱で吸水紙温かい間は1日2度程度吸水紙を代え、その際ピンセット等で標本整形

特別処理法

タヌキモ (Utricularia spp.)、キンギョモ等: タオル等で予め水を切る。海藻標本を作る要領で行なうのもよい
多肉植物: 熱湯に浸してからか、アルコールに1日程度浸けてから標本にする

照葉樹: アルコールに1日程度浸けてから標本
花に厚みがある → 重しを使わず竹製野冊に挟み乾かす。花にアルコールを塗りカビを防ぐ

台紙に張る

台紙: 上質紙B判135 kg(葉書程度の厚さ)を8つ切り(おおよそ 縦39 cm × 横27 cm)
帯紙(糊紙): 大学ノート程度の厚さの上質紙片面にアラビアゴムを塗布
ピンセット、紙きり鋏、スポンジ

標本ラベル specimen labels

自分が使ってるもの
Label
ラベルに良く使われる表記

同定者(Det., determined by)
採集地(Loc., locarity)
生息地(Hab., habitat)
採集年月日 (Date)
採集者名 (Coll., collector)
記録 (Note)

保存

 高湿度を避ける。
 虫害防止に、パラジクロールベンゼンまたはナフタリンを適宜梱包する。複数の防虫剤を使うと変な反応が起こったりするので、必ず1種類だけを使う。実際、台紙がまっ黄色になってしまった。

標本整理をしてみたり...

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