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(2013年2月10更新) [ 日本語 | English ]

食虫植物 (carnivorous plant)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

[食虫植物について P 諸般の事情で書いた中学生向けのつもり| 参考文献 ]

被子植物の中で
昆虫等小動物捕獲し消化・養分吸収 → 成長繁殖に寄与(消化は微生物活動に依存)
当然ながら、クロロフィル持ち光合成を行う独立栄養植物 →

栄養分十分な環境で(種間競争が弱ければ)、食虫せずとも生存できる

食虫 = 不足養分(窒素・リン・ミネラル等)や、その環境で得られない栄養分を摂取
訳語対応関係
食肉植物 carnivorous plant: 本来は、「肉」だが、日本で言う食虫植物

食虫植物 insectivorous plant: 食肉植物の中で食虫に特化したもの(訳との対応関係よくない)
どんなに頑張っても日本の種が捕まえられるのは虫がせいぜいだとは思うけど

ダーウィンが初めて用いた用語(1875/06)

索引
日本の食虫植物 (2科5属約30種) → 世界の食虫植物
モウセンゴケ (Droseraceae)

モウセンゴケ Drosera

D. anglica (ナガバノモウセンゴケ)
D. indica (ナガバノイシモチソウ)
D. obovata (サジバモウセンゴケ)
D. peltata var. nipponica (イシモチソウ)
D. rotundiffolia (モウセンゴケ)
D. spathulata ssp. spathulata (コモウセンゴケ, s.s.)
D. spathulata ssp. tokaiensis (トウカイコモウセンゴケ)

ハエトリグサ Dionaea

D. muscipula (ハエトリグサ)

ムジナモ Aldrovanda

A. vesiculosa (ムジナモ)

タヌキモ (Lentibulariaceae)

ムシトリスミレ Pinguicula

P. vulgaris (ムシトリスミレ)
P. ramosa (コウシンソウ)

タヌキモ Utricularia
タヌキモ類: 水中に茎を伸ばし、葉は糸状に裂ける
ミミカキグサ類: 茎を泥や苔の間に伸ばし、匙状の葉をつける

U. aurea (ノタヌキモ)
U. australis (イヌタヌキモ)
U. bifida (ミミカキグサ)
U. caerulea (ホザキノミミカキグサ)

f. leucantha シロバナホザキノミミカキグサ)

U. dimorphanta (フサタヌキモ)
U. exoleta (イトタヌキモ)
U. gibba (オオバナイトタヌキモ)
U. inflata (エフクレタヌキモ)
U. macrorhiza (オオタヌキモ)
U. minor (ヒメタヌキモ)
U. minutissima (ヒメミミカキグサ)
U. intermedia (コタヌキモ)
U. ochroleuca (ヤチコタヌキモ)
U. uliginosa (ムラサキミミカキグサ)

f. albida シロバナミミカキグサ)

U. vulgaris var. japonica (タヌキモ)

進化 evolution


  1. 種間競争相弱(土壌栄養が十分な場合) → 他植物定着できない環境 = 貧栄養環境
  2. 貧栄養環境への適応 → 小動物から栄養搾取

    貧栄養環境: 低温多湿(高層湿原)・酸性(Ex. 蛇紋岩)・火山 (→ 駒ヶ岳フローラ flora)

形態 morphology


食虫法分類 (あまり細分化すると意味がないが)
1. 鳥餅式/蠅取式 frypaper: 粘液を (leaf)に密生した腺毛から分泌し、小動物(主に小型の虫)につけ捕獲 Ex. Drosera, Pinguicula
1.1. 鳥餅式触手型: 触毛tentacleから粘液出し捕獲 (+ 誘引臭)

Sundew Ex. Drosera: 根貧弱で葉に緑少 → 葉表面に放射同心円状に200本程度の腺毛分布
腺毛が感知し刺激反応 → 屈曲運動 = 触毛(tentacle)

外側触毛: 葉緑に分布する最長(約7 mm)蝕毛。葉裏面へ向い反り返る位置にある。外側触毛頭部に刺激があると1分以内に屈曲反応始まり、数分で180°範囲を動ける(速度温度依存か)。屈曲する触毛は刺激を受けた1本だけで隣の触毛には刺激伝達されない

傾動運動: 外側触毛頭部が直接刺激され起こる屈曲 → Drosera: 触毛が葉中心へ向い直接的に動く

中央触毛: 短い中央触毛の中央部を鉛筆で突いても、その触毛自体は動かないが、10分程で突いた触毛の周りの中央触毛が動き始める。即ち中央触毛は、その刺激を周囲の触毛へ伝達する

屈動運動: 刺激を受けると周囲に伝達し、その間接刺激で刺激が来た方向へ働く運動

外表触毛: 頭部に直接刺激与えると、外側触毛と同じ反応を示し速い傾動運動を起こす。更に、隣合わさった外表触毛も屈動運動をする。外表触毛は、外側触毛と中央触毛双方の性質を兼ね備える

1.2. 鳥餅式腺毛型: Pinguiculaの腺毛は全く運動しない ↔ Drosera

Ex. Pinguicula: 紡錘形の葉を地面に密着させた形態

葉縁は少し内側に巻き込み(程度は温度に関係)、大きな獲物を粘液で捕らえ1-2日かけ獲物を葉で取り囲み消化液を溜める皿の役目をする。葉が動く仕組は、消化液分泌により葉内側膨圧が低く、逆に葉外側膨圧が高くなり葉が折れ曲がり獲物を包み込む。消化・吸収は基本的にDroseraと同じだが、Pinguiculaでは粘液分泌腺毛(有柄腺)と消化液を分泌する腺毛(無柄腺)が分かれる

Ex. Drosera: 捕虫前の触毛先の分泌粘液と、屈曲進んだ状態で触毛からの分泌消化液は別。共に触毛頭部腺細群からの分泌物だが、屈曲前分泌物は高粘性粘液で小動物体を粘りつけ捕える役目をする。これは触毛頭部各所から表面張力の違う複数物質が分泌され集合した構造を持つ。粘液成分は、ヘミセルロース(セルロースより酸に加水分解されやすい)である。その中に微量の高透過性有機酸(アルコルビン酸等)やアルデヒド(還元時アルコール、酸化時カルボン酸になる)等含む。細胞不要産物が排出されたもので腺細胞外表面を覆うクチクラの微細な穴から放出されたもの

触毛刺激 → 粘液に変わり流動性が大きい酸性消化液分泌

分泌消化液: 蛋白質を強酸性状態(pH 1.5-3.5)で分解する消化酵素エンドぺプチターゼ含む
Exp. 葉中央部に卵白片乗せる → 1-2 hrで消化液貯留 → 消化開始

希塩酸を加えても葉は害されず卵白片溶解早まる → pH 2.6位で酵素活性最大
2-3種類の酵素抽出: カテプシン(分解酵素)や、キチナーゼ(キチン分解酵素)も微量確認(腺細胞分泌か付着バクテリア起源かは未確定)。消化液の主な働きは蛋白質分解で、酸性で作用するエンドぺプチターゼ(ペプシン類似消化液)である(ペプシンとは基質特異性等で異なるが、蛋白質をぺプチドにしアミノ酸にまで完全に消化する働きが無い事では同じ)
消化が進むと、分解産物を表面から吸収

Exp. 卵白片を葉に乗せる → 約2日間で消化(初期6時間位盛ん)。分解産物は直ちに葉中に吸収
分解産物は3時間位まで葉内に蓄積され、間もなく植物体の他部分へ移動(6-10時間後最も盛ん)

殆ど消化以前の状態近くまで葉内窒素量低減

移動減り24時間後ではほぼ一定値

24時間に吸収する窒素量 = 0.05-0.1 mg。うち90%が移動し、葉内に残るものは4-10%

迅速吸収理由: 葉構造単純で、柵状組織なく葉両面表皮とその間に柔組織が緩やかに設置されるだけで細胞間隙良く発達し、表皮表面にクチクラ層も無い事による。表面に表皮細胞から伸びできた毛とか無柄腺(触毛柄にあるものと同じ)が多く分布し吸収補助。作用は、獲物が含む窒素分多いほど強い → 粘液・葉身が何らかの形で窒素養分含む物質に反応

1.3. 鳥餅式腺毛不動型

Ex. Drosophyllum (ポルトガル・スペイン・モロッコ等乾燥地帯, 稀)
腺毛・葉身動かない → 強粘液分泌 - Pinguiculaと変わらず有柄腺・無柄腺の区別ある

2. 罠式 snap or forked: 2枚型になった罠で挟みとる Ex. ハエジゴク、Utricularia, ムジナモ

葉が変形し作られた捕虫器(罠)の運動で捕虫

2.1. 罠式閉合型

Ex. ハエトリソウ
平葉柄先に2枚貝型に葉付き、中の感覚毛に獲物触れると葉閉じ消化液分泌吸収 → 閉時に組合わさるよう対の葉の葉縁にa本とa + 1本の刺
葉内側に誘引蜜腺分布 → より中央寄りに消化腺密集
昆虫等が二枚貝型罠中に来て葉内面に生えた3?数本(1対の葉 = 罠で6本以上)の感覚毛に2回以上触れると罠は0.5秒以内に獲物を挟む(2回接触 → 閉じると数日開かない捕虫器で高確実で獲物捕獲機能)
捕虫器 = 単純構造 → 獲物が葉内側に入り感覚毛に接触 [= 刺激] → 内側細胞膨圧低下 = 葉縮小+ 外側細胞膨圧急増 = 膨張 → 外側へ反り返る葉辺が内側へ折れ曲がり2枚の葉閉じ合わさる
→ 捕虫直後のハエトリソウ: 閉じた刺が合わさり格子を作る程度で不完全に閉じ合わさる → 格子中の獲物が中で暴れ幾度も感覚毛に触れ、葉が徐々に閉じて獲物を押し潰し殺す運動(狭窄運動)が行われる
→ 消化進むが、ハエトリソウでは消化腺の働き鈍く、葉が閉じてから24-36時間後に分泌開始
消化液 = 数種類の消化酵素(蛋白質分解酵素、ATP分解酵素(ホスファターゼの1種)、デオキシヌクレアーゼ(DNA分解酵素)等)。蛋白質分解酵素は特定ペプチドを切り離すエンドぺプチターゼだけでなく、アミノ酸まで分解するアミノぺプチターゼやジペプチターゼ等も働く報告あるが、食虫植物と共存するバクテリアによるとする報告もある。10日ほどで消化・吸収が終わると、閉じた二枚葉は再び開き始める。葉が再び開く仕組は、葉内側の細胞成長により、開いた2枚葉は閉じる前より大きくなる

2.2. 罠式吸引袋型

Ex. Utricularia: 1植物体に多数の独立した罠(捕虫嚢)を持つ
捕虫嚢入口浅く、入口に口髭上アンテナ(非感覚毛。水生昆虫の休場所)が一対突き出る。タヌキモ捕虫嚢は、吸込口にドアのつくスポイド様。獲物が各捕虫嚢に近づくと水と一緒に獲物は捕虫嚢中に吸い込まれ、その後水だけが捕虫嚢から排出される。消化・吸収はハエトリソウと類似するが、一度獲物を捕えてから再復するまでの時間は非常に速い

3. 落穴式 pitfall: 筒・壷中に小動物を滑り落とし捕獲 (消化液貯留部分があり、そこで消化・吸収)
3.1. 落穴式漏斗葉型

Ex. サラセニア Serracenia: 葉筒状、上部に多数蜜腺つく葉の変形した蓋がつく
小動物が筒状葉内側に止まる → 入口部分滑面帯に小動物は足をかけられず、少し下から筒奥(地面)方向に向い毛が生え(逆毛帯)、足を滑らせ筒奥へ落とす → 筒内面も同様の毛生え入口へ戻れない → 獲物が筒奥に進むに従い、筒奥で消化液(Drosera同様)分泌される

3.2. 落穴式壷状葉型

葉先に捕虫袋下げ、獲物が消化液の溜まった捕虫袋中に落ちるのを待つ
Ex. Nephentes ウツボカズラ: 大捕虫袋種 → 小鳥やネズミも捕獲

葉先から葉主脈が伸びた蔓先端部が膨らみ捕虫袋を作る
捕虫袋内部消化腺帯からの分泌消化液に雨水が交じり溜まる
液中酵素は至適pH 3.2-4.7、pH 7.2-8.6の2山 → ウツボカズラ/バクテリア産出酵素の2種類存在
ウツボカズラ属産出消化酵素はDrosera酵素に似て数種類の蛋白質分解酵素から成る ↔ ハエトリソウ等と違い、アリを多量に捕虫、消化・吸収しても蟻酸障害少ない

3.3. 落し穴式細管葉型

蜜使わず、捕虫器細管に獲物(小虫)入ると逆毛で中に送り込み捕える
Ex. Genlisea (南米・アフリカ熱帯等の湿地): ロゼットを形成する通常葉と、葉緑素を失いて地下に完全に潜るY字型の多数の捕虫葉

捕虫葉 insectivorous leaf: 葉螺旋状に変形し二股に分かれる部分と細管状になる部分の先端入口から獲物入る → 細管内部に逆毛生え、一方向にしか進めない獲物は細管奥へ進み消化される

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