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(2016年3月6日更新) [ 日本語 | English ]

保全・復元事例集 (Cases relevant to conservation and restoration)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

[ 釧路 : 尾瀬 , 知床 , スキー場 | 環境医学 ]

釧路湿原 Kushiro Wetland


  • 1858(安政 5) 松浦武四郎: 丸木舟で釧路湿原縦断 (東西蝦夷山川地理取調日誌「谷地多し」「川両岸が茅原」)
  • 1885(M18) 釧路湿原西側の下雪裡地区へ27戸移住(鶴居村)
    標茶地区釧路集治監開設、塘路地区熊牛村外4ヵ村戸長役場(標茶町)
  • 1892(M25) 釧路-標茶道路全通
  • 1918(T7) 阿寒川流路切替 → 釧路川から分離 - 阿寒新川(仁々志別川-新釧路川流路)
  • 1920(T9) 釧路川、阿寒川大洪水 - 阿寒川が大楽毛川へ転流し仁々志別川-阿寒新川から分離 → 3水系(釧路川、仁々志別川、阿寒川)
  • 1921(T10) 大洪水復旧と水害防止のため釧路川から分岐し太平洋へ注ぐ派川の掘削工事(新釧路川開削工事)が国により始まる
  • 1927(S2) 湿原東側に沿い釧路-標茶国鉄釧網線開通 (1931全通)
  • 1928(S3) 新富士-鶴居村中雪裡(28.8km)、下幌呂-上幌呂(15.4 km)に殖民軌道馬力線敷設
    塘路漁業共同組合結成。塘路湖中心にワカサギ、ウナギ養殖事業開始
  • 1930(S5) 雪裡川流路を開削された新釧路川へ切替 - 下流(現, 旧雪裡川)は新釧路川左岸堤防により分断
  • 1931(S6) 釧路湿原内通る釧路町岩保木に水門完成 - 新釧路川(11.2 km)へ通水
    雪裡川に合流する久著呂川を直接釧路川へ切替える新水路完成
  • 1933(S8) 釧路港内への土砂流入防止のため岩保木水門閉鎖され、旧釧路川(現, 釧路川)下流部分が分断される
  • 1934(S9) 釧路右岸堤防(幌呂川右岸-新釧路川右岸)完成
  • 1949 釧路川中上流部(弟子屈町・標茶町)改修工事開始
    1980年代まで洪水防止と地下水位低下させ土地利用促進に捷水路・新水路による河川直線化や堤防整備が各地域で実施
  • 1951 釧路市 国に釧路泥炭地(釧路湿原)開発陳情
    北海道開発庁: 「釧路泥炭地開発計画」策定
  • 1955 飯島一雄(標茶町五十石) - 釧路湿原でガの新種「イイジマキリガ」
  • 1957 飯島一雄: 釧路湿原で「エゾカオジロトンボ」国内初発見
  • 1958 国 釧路泥炭地(湿原)で農地開発試験開始
    田中瑞穂教授(道学芸大釧路分校): 論文で釧路泥炭地「釧路湿原」改称
    澤四郎(釧路市立郷土博物館学芸員)ら: 東釧路貝塚発掘調査で縄文前期道内最古(当時)の推定4-5000年前人骨発見。先史時代に有人を実証
    原田康子(作家): 旅行雑誌に紀行文「釧路湿原から阿寒への旅」寄せ全国に釧路湿原の名広げた
    北海道学芸大学釧路分校の田中瑞穂教授: 釧路湿原の植物を子供向け解説する「こどものための東北海道の植物」自費出版。釧路湿原の植生を市民に伝えた先駆け
  • 1960 岡崎由夫(北海道学芸大学釧路分校助教授)
    泥炭堆積速度1 mm/yr - 釧路湿原が海後退により姿現すのは3000年前
    釧路湿原周辺で毛皮用アメリカミンク養殖始まる
  • 1961 標茶町 町立自然公園として塘路公園指定
  • 1963 北海道開発庁
    「北海道未開発泥炭調査報告」、「釧路原野農業開発基本計画」
  • 1966 久著呂川流域(鶴居村・標茶町): 道農地開発事業に伴う排水路・明渠整備開始。以降1980年頃まで久著呂川や周辺河川の改修進む
  • 1967 釧路湿原広里地区周辺で湿原火災
    釧路川: 一級河川指定
  • 1968 釧路管内市町村等 - 釧路地方総合開発促進期成会設立
  • 1969 釧路市
    西港建設着工 + 港背後工業用地として釧路湿原内4700 haに「釧路工業地帯」造成計画
  • 1971 「ラムサール条約」採択(1975発効)
    保護すべき世界の十数の湿地の一つに釧路湿原
    釧路市「釧路工業地帯」造成に向け湿原南部11所ボーリング調査開始
    釧路湿原にかかわる「自然保護についての懇話会」開催
    釧路市立郷土博物館: 「釧路湿原総合調査団」発足 (1974年まで4年で地質、動植物、昆虫、水質、遺跡等総合調査)
    北海道自然保護協会釧路支部(現 釧路自然保護協会)発足
  • 1972 「日本列島改造論(田中角栄)」釧路湿原開発掲げる
    釧路市産婦人科医札木照一郎: 北海道自然保護協会釧路支部に釧路湿原のラムサール条約登録提案
    飯島一雄、釧路湿原で新種「イイジマルリボシヤンマ」
    市民シンポジウム「釧路湿原の開発と自然保護を考える」釧路市・釧路地方総合開発促進期成会

    経済界代表と自然保護関係者懇談:
    北海道自然保護協会釧路支部は、湿原周辺40000 haを国定公園化し丘陵地広葉樹林復元も行うことを提案。釧路商工会議所は湿原内3000 haへ食品加工コンビナート建設構想を、釧路市農協は新規農地として湿原内2500 ha開発プラン掲げた
    釧路湿原近くの鶴居村住民が、湿原内ヤチハンノキ林の拡大や土砂流入等の自然変化を釧路湿原総合調査団に連絡

  • 1973 釧路湿原特別対策委員会(釧路地方総合開発促進期成会)
    「釧路湿原の将来―開発と自然保護に関する釧路地方住民の意見」。前年の市民シンポジウム議論踏まえ自然保護関係者、経済界、関係自治体との間で釧路湿原開発に「海岸線から6 kmまで」と線引き
  • 1974 国際植生学会東京 エクスカーションで釧路湿原視察
  • 1975 釧路市立郷土博物館 釧路湿原総合調査報告書(B5版340頁)
    ラムサール条約湿地登録、国立公園指定の基礎資料
    釧路自然保護協会: 北海道自然保護協会釧路支部独立発足
    シラルトロ湖畔: 温泉湧出
  • 1978 釧路市立郷土博物館学芸員新庄久志 ハンノキ林研究着手
    日米民間環境会議東京: 釧路市札木照一郎が「釧路湿原の保護」発表
  • 1979 釧路湿原天然記念物地域(5012 ha)
    「国設クッチャロ太鳥獣保護区」に設定 - 3833 ha特別保護地区指定
  • 1980 日本ラムサール条約加盟
    釧路湿原中央部の鳥獣保護区(及び天然記念物地域) 5012 haが国内最初の登録
    治水と農地開発のため、標茶町茅沼地区を流れる釧路川のオソベツ川合流点から下流5 kmに直線新水路作られ暫定通水(沼幌新水路事業。その後河道拡幅を行い1984年完了)
  • 1981 釧路自然保護協会 釧路湿原「国立公園化構想」提案
    釧路湿原対策特別委員会: 自然保護団体、経済界、流域自治体で構成。国立公園化議論開始。湿原西部鶴居村温根内南地区開発・保護で自然保護派と村(農地開発)対立
  • 1982 釧路湿原対策特別委員会
    鶴居村温根内南地区を国申請すれば農地開発可能な「第三種特別地域」とし国立公園化要望で合意
    世界野生生物基金総裁エジンバラ公フィリップ殿下(英)が環境庁長官と釧路湿原視察
  • 1983 環境庁「釧路湿原保全対策検討会」設置
  • 1984 釧路市 北斗に釧路湿原展望台建設
  • 1985 釧路市-鶴居村: 釧路湿原大規模火災発生 - 湿原面積約1割被災
    流域自治体と道、環境庁「釧路湿原安全対策地元連絡会」設立 - 国立公園化
  • 1987 釧路湿原関係市町村連絡協議会発足
    釧路湿原と周辺丘陵27000 ha - 国立公園指定(湿原単独で初)
  • 1988 釧路湿原関係市町村連絡協議会
    「釧路湿原国立公園とその周辺地域の保護保全及び利用に関するマスタープラン」作成
    ラムサール条約事務局(スイス)ダニエル・ネイビッド氏が釧路湿原視察。鰐淵俊之釧路市長がネイビッド氏に条約締約国会議の開催地に名乗り出る意向伝える
    トラストサルン釧路(現NPO法人)発足: 釧路地域での保護地取得、植林等の湿原保護活動始める
  • 1989 「ラムサール条約締約国会議誘致期成会」発足
    「ラムサール条約国内登録湿地関係市町村会議」釧路市呼びかけ設立: 第1回会議同市開催。ラムサール条約登録湿地関係市町村会議前身
    釧路湿原のラムサール条約登録地が7726 haに拡大
    鰐淵俊之釧路市長ラムサール条約締約国会議(ジュネーブ)で1993年次回会議釧路誘致正式表明
索引
  • 1990 モントルー(スイス)開催ラムサール条約締約国会議
    1993 第5回締約国会議釧路開催決定
    釧路川水系河川環境管理基本計画策定
    釧路湿原国立公園特別地域の9714 haが動力船等利用規制区域指定
    鶴居村温根内に釧路湿原国立公園温根内ビジターセンター、温根内地区湿原探勝遊歩道開設
  • 1993 環境庁釧路湿原野生生物保護センター開設(釧路市北斗)
    釧路市: ラムサール条約締約国会議開催。参加95国。約1万人の市民ボランティア
  • 1994 釧路町細岡 ビジターズラウンジ開設
    釧路湿原で国際協力事業団(JICA)による途上国を対象とした湿地保全に関する研修実施(以後2010年現在まで毎年実施)
    東アジア・オーストラリア湿地・水鳥ワークショップ釧路市開催
    渡鳥オオジシギ(釧路地方繁殖、豪州越冬)について、北海道釧路西高等学校(北海道明輝高等学校に統合)野外科学部が調査報告書発行 → 豪州政府関係者通じ同国に寄贈 → 釧路湿原と厚岸湖・別寒辺牛湿原(厚岸町)、霧多布湿原(浜中町)の釧路管内ラムサール登録湿地と、豪州南東部のニューサウスウェールズ州・ハンター地方の「クーラガング湿地とその周辺湿地(2004年提携更新時よりハンター河口湿地に改称)」が湿地としては国内初の姉妹湿地提携結ぶ
  • 1995 「釧路国際ウェットランドセンター」設立
    ラムサール条約理念に基づく湿地の保全と賢明な利用の推進と国際協力のため、国と地方自治体、教育機関等で組織
  • 1996 北海道「釧路湿原保全プラン」作成
    第7回国際湿原保全釧路会議(IMCG Field symposium)釧路市開催
  • 1997 釧路湿原国立公園連絡協議会設立
    釧路湿原関係市長村会議に環境庁、北海道加えた
    「釧路湿原こどもレンジャー」組織 - 児童による湿原保全活動や環境学習等実施
    塘路湖エコミュージアムセンター「あるこっと」開設
  • 1998 「地域レベルの湿地保全活動に関する国際ワークショップ」開催
    アジア太平洋地域の途上国対象とした、国連訓練調査研究所(UNITAR)の環境・生物多様性の保全に関する研修ワークショップが釧路市で開催 - 釧路湿原の事例研究や視察等が行われた(2008年まで7回開催)
  • 1999 釧路湿原のラムサール条約登録地7863 haに拡大
    学識経験者や関係自治体等による「釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会」設立
    豪州ポートスティーブンス市長らによる姉妹湿地からの訪問団が釧路地域のラムサール登録湿地視察。釧路側関係者らと意見交換
  • 2001 「釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会」
    釧路湿原河川環境をラムサール条約登録当時(1980年)の自然に戻すことを目標に「釧路湿原の河川環境保全に関する提言」まとめる
    河川法改正(1997年): 釧路川「新釧路川」、旧釧路川「釧路川」名称変更
    釧路湿原北斗に北斗銃猟禁止区域設定
    国、北海道、釧路湿原周辺5市町村実務担当者らによる釧路湿原保全プロジェクトチーム「釧路湿原タスクフォース会議」発足
  • 2002 環境省 釧路湿原自然再生事業に関する実務会合発足
  • 2003 自然再生推進法施行(2003年) →
    釧路湿原自然再生協議会発足(設立時構成員105名)
    釧路湿原道路(広域農道:釧路町遠矢-釧路市北斗)開通
    湿地に修復に関する市民フォーラム(釧路開催): 豪州姉妹湿地「クーラガング湿地再生計画」専門家参加。湿地再生・修復について釧路地域の姉妹湿地を視察
    ラムサール条約釧路会議10周年記念事業: 姉妹湿地ウェットランドセンター・オーストラリア理事長参加。湿地保全・地域住民参加の意見交換
  • 2004 釧路湿原自然再生協議会 釧路川保全・利用カヌーガイドライン
    姉妹湿地提携更新調印に伊東良孝釧路市長(当時)らが豪州ニューカッスル市、ポートスティーブンス市訪問
  • 2005 釧路湿原自然再生協議会 釧路湿原自然再生全体構想策定
    釧路湿原で活動する個人・団体のネットワーク形成と自然再生事業普及啓発目的に、釧路湿原自然再生普及行動計画WGによる「ワンダ・グリンダプロジェクト」開始
  • 2006 国土交通省北海道開発局: 釧路川水系河川整備基本方針策定。釧路湿原自然再生事業とし標茶町茅沼地区旧川復元実施計画、土砂流入対策とし雪裡・幌呂地域、南標茶地域、久著呂川対象に各実施計画策定
    環境省: 釧路湿原達古武地域自然再生事業実施計画策定
  • 2007 釧路湿原自然再生協議会主催
    初の「釧路湿原自然再生シンポジウム」開催 - 約200名参加
    林野庁北海道森林管理局: 雷別地区自然再生事業実施計画策定
  • 2010 釧路湿原再生事業
    (標茶町茅沼地区釧路川蛇行流路再工事で復元 - 30 年ぶり通水)
    ラムサール条約湿地登録30周年 - 自然観察会、市民調査、シンポジウム等各種記念事業

釧路湿原のあゆみ (釧路国際ウェットランドセンター 2010.12.3)

分類 / 野生生物管理

タンチョウ Grus japonensis
江戸時代: (本州) ツル・タンチョウは保護する藩は多かった

1781 「松前志」 ツル詳述 - 個体数多

明治時代: 乱獲 - 個体数急激減少 - 1889 道庁禁猟決定 - 自然保護施策

明治末: 長都沼-馬追原野 - 絶滅と推定

1924(T13) キラコタン岬周辺(鶴居村): 10数羽確認
1925(T14) キラコタン岬付近: 国設「クッチャロ太禁猟区」 1935 釧路丹頂鶴蕃殖地 - 特別天然記念物指定
1935 釧路湿原タンチョウと湿原中央部生息地 国天然記念物指定

= 釧路丹頂鶴繁殖地 2700 ha - 「釧路のタンチョウ及びその繁殖地」名称変更

1935 釧路国丹頂保護会結成: 泥鰌放流、セリ移植、ドングリ散布 (効果不明)
1950 山崎定次郎(阿寒町): 釧路湿原に繋がる自分の畑で給餌 - 給餌始まり

1952 給餌成功確認 - 個体数増加 → 営巣地、飛来地拡大

1952 釧路のタンチョウ及びその繁殖地 2750ha 国特別天然記念物指定

道教育委員会: 第1回「タンチョウ生息状況一斉調査」33羽確認。鶴居村立幌呂小学校児童達が畑で雪中に蹲るタンチョウに給餌 - 餌付成功

1954 鶴居村立幌呂小学校 - ツル保護活動により農林大臣賞表彰
1957 ツルクラブ発足: 阿寒町立(現 釧路市立)阿寒中学校

釧路湿原から町内に飛来するタンチョウを絶滅の危機から救う目的

1958 釧路市鶴丘 丹頂鶴自然公園開設: 釧路湿原タンチョウ保護増殖目的

最初飼育した5羽を釧路湿原で捕獲したのは標茶町塘路漁師土佐藤蔵

1958 阿寒町立阿寒中学校: ツルの保護・研究活動 - 道知事表彰
1964 ツルクラブ: 釧路湿原の給餌がテレビ全国放映

全国から「保護に」と大量の餌や寄付金

1965 阿寒町タンチョウ鶴愛護会発足
1966 鶴居村立下雪裡小学校(1974廃校):

愛鳥週間にタンチョウ保護活動 - 道知事賞受賞

1967 地域を定めない国の特別記念物に指定
1967 国特別天然記念物「釧路のタンチョウ及びその繁殖地(2750 ha)」

「釧路湿原(5021 ha)」に名称変更され天然記念物指定

1970 釧路市丹頂鶴自然公園 高橋良治
1970 タンチョウ人工孵化成功: 世界初
1972 ニューヨーク動物学協会ジョージ・アーチボルド

札木照一郎ら協力し釧路湿原でタンチョウ調査実施 → 営巣タンチョウの殆どが保護区域外に生息 → 保護区域拡大と湿原保護の必要性

1984 釧路市写真家・林田恒夫撮影タンチョウ裏面にデザインの千円札発行
1985 鶴居村: タンチョウ鶴愛護会発足
1987 (財)日本野鳥の会: 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ開設(鶴居村) 2006 タンチョウ生息一斉調査: 道内生息数 > 1000羽

尾瀬湿原保全


1. 歴史
明治(M)23 平野長蔵氏 沼尻に入山 「尾瀬開山の年」
M36 最初の水力発電ダム計画発表
大正(T)4 平野長蔵氏 長蔵小屋を現在の場所に建替
T9 尾瀬沼一帯が風致保護林に指定 (大正4年 保護林制度)
T11 関東水電(東京電力の前身)が尾瀬の水利権を獲得
昭和(S)6 国立公園法発布
S9/12/4 日光国立公園に指定(第2次指定 日本4番目の国立公園)
S13 日光国立公園特別地域に指定
S24/10/27 尾瀬保存期成同盟結成 (学者、文化人、登山家)
S25 第1次尾瀬総合学術調査始まる(-27)
S26/7/23 日本自然保護協会 結成 (尾瀬保存期成同盟発展的解消)
S27 木道敷設開始(山口営林署)
S28/12/22 日光国立公園特別保護地区に指定
S31/8 9 天然記念物に指定(国指定)
S31/6/1 特別天然記念物に指定(国指定)
S41/7 アヤメ平で湿原裸地化回復事業始まる(群馬県)
S42/12/ 5 日光国立公園尾瀬地域の公園計画「尾瀬を守る計画」決定
S44/9/ アヤメ平湿原裸地化回復事業開始(尾瀬林業)
S46 環境庁設置と大石環境庁長官尾瀬視察 (道路問題)
S46/8/21 尾瀬の自然を守る会 発足
S46/11/19 自然公園審議会(現自然環境保全審議会)

尾瀬車道計画廃止の旨を環境庁長官に答申

S4612/21 尾瀬車道計画についての公園計画廃止
S47 群馬県尾瀬憲章制定される。ゴミ持ち帰り運動始まる
S48 ゴミ箱撤去(尾瀬林業撤去数約1400個以上)
S49/5/26 マイカー規制始まる (鳩待峠・沼山峠)
S52 第2次尾瀬総合学術調査始まる(-54)
S59/12 環境庁が日光国立公園尾瀬地域管理計画を策定
S60/6 尾瀬の自然を守る会が尾瀬の保護についての提言を出す
S61/2 尾瀬を守る懇話会 発足
S61/63/5 尾瀬を守る懇話会提言 が出される
S63/9/16 尾瀬地区保全対策推進連絡協議会 (以下 協議会)設置
平成(H)6 尾瀬総合学術調査(第3次)はじまる(-8)
H7/6/13 尾瀬保護財団設立発起人会開催
H8/3 尾瀬保護財団設立、東京電力が尾瀬ヶ原の水利権放棄
H12/7/8 (財)尾瀬保護財団主催「シンポジウム-尾瀬とシカ-」開催

(尾瀬保護財団資料抜粋)

2. 保護・保全問題
  1. 水源問題 ダム建設 → 水没の危険
  2. 道路建設
  3. 木道による保護(入山者の増大)
    木道考案者: 吉成一郎技官(元前橋営林局山口営林署)
    敷設目的: 当初 = 登山者保護 → 40年代以降 = 湿原保護
    敷設開始: 福島県側 = 山口営林署(1952-54)。群馬県側 = 尾瀬林業(株) (1958) + 群馬県(1959) + 東京電力(株) (1964)
    木道寿命: 湿原設置 → 7-10年で交換
    木道木材: カラマツ(原木は敷設当初-1970まで現地尾瀬地区山林で調達。1971から現地調達禁止) 設置単価: 1 m ≈ 12万円(設置場所等により単価異なる)
  4. シカの生息と食害
3. 尾瀬に始まる自然保護運動
日本自然保護協会(協会): 尾瀬保存期成同盟が母体となり1950年設立

戦後暫く自然保護運動はプロテクション中心

運動出発点 = 尾瀬ヶ原電源開発問題 → 尾瀬保存期成同盟誕生

尾瀬ヶ原ダム計画は明治時代(1903年)に始まる → 具体化ないまま戦争で中断
戦後1948年再燃 → 1949年前半までに複数機関が尾瀬ケ原電源開発計画を次々発表
1949年10月 尾瀬保存期成同盟(同盟)結成 - 学者・著述家・山岳画家・山小屋オーナ等30名

運動方法: 国会やGHQへ請願、マスコミアピール、署名活動、講演会、映画会等
国会提出請願文「… 自然を保護してその恩恵の均霑化を図り …」 = 初の「自然保護」概念記述

同盟の活動(1年間) → 尾瀬ケ原保存運動の効果 + 電力会社が電力業界再編成のため開発一時中断

同盟としての活動終了

1954頃: 再々度電源開発案 + ミズバショウブームに伴う観光客増大による尾瀬車道問題

日本自然保護協会(同盟を中核) + 「尾瀬の自然を守る会」等
尾瀬保存に関し協会が提出した請願書等は、他組織との連名も併せると計8通となる

→ 尾瀬ケ原水没中止 + 周辺道路建設中止 → 現在は観光客増加が環境破壊の主原因
協会: 尾瀬開発計画と同時進行で起こる国立公園核心地域開発にも保護活動広げる

問題: 創立直後の協会が保護を訴えた主なもの Ex. 雌阿寒岳硫黄採掘、富士山麓本栖湖発電工事、黒部川第四発電所、北山川発電

1950後半-60年代(高度経済成長期 = 「観光開発」): 山岳観光道路や大規模林道建設ラッシュ
→ 国立公園核心部改変

多くのダム建設され、渇水期に流水のない河川増。多くの海岸、干潟もコンビナートに変貌

1960: 協会を財団法人に任意団体から改組: 組織強化と拡充を図る

「開発こそ人間を幸せにする」という時代風潮 → 自然保護団体主張弱い
→ 生態学を理論的根拠とする学術調査及び研究活動を活発化

1960年代後半からの自然保護運動の特色

市民が自然保護、環境保全に目覚め、公害反対をはじめ、原生的自然破壊への反対運動 → 自分たちが住む地域の自然にも関心を高める
「○○を守る会」、「○○に反対する会」が全国各地に続々と結成される

→ 協会運動方法広範化

Ex. 「自然を返せ」をスローガンにした初めての「自然保護デモ」企画援助(1970) + 「自然保護」をテーマにしたシンポジウムやセミナー開催 + 各種団体や市民の保護活動の応援等

運動中核は開発主体への意見書や陳情書、請願書の提出とかマスコミへのアピール等(同盟時代から一貫)

Ex. 最初から30年間の意見書・陳情書類 = 計136件、学術調査報告書68件(自然保護思想啓蒙関連陳情書3件含む)

4. 湿原と森林を一体的に保全する意義
福島県駒止湿原・日光戦場ヶ原湿原・東京都練馬三宝寺池沼沢植物群落での事例
開墾、道路建設がもたらした影響等について話題提供

知床森林伐採


HOW TO 知床 ?

知床国立公園は、日本に残された唯一ともいうべき、雄大な原生的森林と、野生動・植物の生態系が保存される貴重な地域である。この森林には、北海道でもめったに見る事が出来なくなった、天然記念物のシマフクロウが生息し、その価値は非常に大きい。
知床国立公園は、知床半島約10万haのうち38,600haが指定地域になっている。うち93%が国有林である。
国立公園は、日本では、全く人手を加えず原生状態で保護しようとする区域[特別保護地区]と、ある程度入手を加え木材の切出しなどを認める区域 -木材切出し率など、施行条件の厳しさに応じ[第1種第2種第3種に]分けられる。
知床国立公園では、前者が60%、後者が40%である。
しかし、特別保護地区の殆どは高山帯や、強風地帯であり森林の非常に乏しい地域であり、シマフクロウ等の野性動物の生息が非常に困難となっている。
森林の殆どは第3種特別保護地区にあるが、ここでは制限も非常に緩やかで、森林活動を中心にした考えに基いて指定されている。今回問題になっているのは、この地区にある森林である。
国立公園でありながら、何故このような問題が起こるのか?
日本の国立公園は、名分は環境庁にあるといいながら、国有林は林野庁、河川は建設省、魚は農水省の管轄下にあり、行政の統一を全く欠いている
そのため国有林に関しては、林業関係の要求に応じ営林署がかなり勝手に木を切っているのが現状である。日本国中から有用な森林は姿を消している。
国際的には、国立公園は自然をそのままの状態で保全することが最大原則である。日本では、特別保護地区では大規模な、伐採、狩猟、漁獲が行われているの現状である。

知床伐採計画、概要

  ◎10年間で、1,700 haから10,000本の伐採を行なう。
   61年度   186 ha   844本
   内訳    ミズナラ  395本
         セン    260本
         イチイ   151本 等

知床エイドテーマ曲
TAKING MY HEART (夢を信じて)

知床伐採 Q&A

Q: 国立公園の自然は、法律で守られているのになぜ木を切れるのか?
A: 国立公園制定の時に林野庁の声がとても大きく、お金になる木が生えている所は保護の手が薄い法律になっている。現在も国立公園の中では林野庁の声が大きい。
regeneration Q: 大木を切って、小さな木に日光を当てると、小さな木は大きくなると言いますが本当か?
A: 昔の学説では、大木を切るとその下の小さな木に光が当たり、大きく成長すると言われていたが、現在では、大木の下に生える木は、光が当たっても、もう余り大きくならない事が分かっている。(原因が遺伝子なのか、あるいは他にあるのかは、まだはっきりとは解明されていない。)この木のことを専門用語では、「被圧木」と言う。
Q: 伐採木は家を造るのに使われるのではないか?
A: 切られた広葉樹は、一般庶民の手の届かない、贅沢品の高級家具の材料となる。
Shiretoko map
Q: 天然記念物の「エゾシマフクロウ」は、北海道全体で何羽いるのか?
A: 現在では全道で、約30羽位で、絶滅寸前と言われる。成長すると、体高8O cm余りにもなり、羽を広げると2 m程にもなる。アイヌの人々からは、最高位の神(コタンラルカムイ)として崇められる。
魚を主食とし、鮭が遡る自然の川と、営巣のための巨木がある、広大な原生林を必要とする。
Q: 大木を切ると、その森にどんな影響があるのか?
A: 大木ほど、種・実の生産力は莫大な物がある。多くの動物達が、実やその芽を食べ生活する。クマのような大型動物でさえそうである。それが無くなったらどうやって暮らしていげぽいいのか?
大木はその森の中心的「母木」でもある。一本の木が多くの木の母親であり、その森を支えている可能性もある。その木を切れば森は死ぬかも知れない。
Q: 斜里町は、知床100m²運動を起こしたが、なぜ町長は伐採に賛成なのか?
A: 知床100m²運動提唱者である藤谷町長は既に引退し、その後をつぐ今の船津町長は木材関係の経営者だから。

★ 知床強行慌採 · 灰色の構図

Tonzaburo
小関北大林政学教授
伐採賛成派で新聞・知床問題の会議などで択伐は必要と営林署の援護射撃をしてきた。松田・北見営林支局長とは北大の師弟関係にある。
医学会に白い巨塔があるが、林学会に緑の巨塔があるなら、その巨塔を為す人。北大関係林学者はこの人の意見に表立って反対出来ないと言われる。林学のドン。
北海道自然保護協会が一時右旋回して知床伐採賛成を唱えた時、副会長の席にあり同協会の理事・片岡秀郎事務局長と共に強力に伐採賛成への根回しをした。現在は道立名寄女子短期大学の学長。
なお、片岡事務局長は阿寒の財団法人・前田一歩園理事として天下り、阿寒国立公園内でも今回の知床と同様に自然林が強行伐採されると地元では心配している。
松田北見営林支局長
知床を伐らなければ北見の林業は死ぬと言って強引に伐採をすすめてきた人。
実際には北見営林支局管内の国有林は44万haもあり、知床国立公聞は3万ha,そのうちでも木を伐れる場所は3分の1以下である。ここが伐れないからと言って北見の林業が死ぬというのはどういうことなのか?
後に一転し、伐採は森の活性化になり自然保護につながるとあらぬ説明をしてきた。ついに4月14日に機動隊という権力の手を借りてまで強行伐採を行なった。
森の活性化の為に伐る者が何故このようなことをしなければならないのか?
そこには金の絡んだ黒い構図が見え隠れする。
日本農林ヘリコプター
伐採木運搬のヘリコプター会社。
今回の知床伐採が計画きれた翌年の昭和61年、知床国立公園の手前のマコイ地区でヘリコプター集材テストが行なわれたが、その時の責任者が北見営林署の遠山という人物である。
この人物はその後、営林署を退職し「知床伐採10年計画」というお土産をもって日本農林ヘリコプターに幹部として天下ったのである
ヘリコプター集材という新方式は、林道工事による自然破壊の非難をかわして指定業者として独占的に仕事がとれるというもの。しかし採算をとる為には今回の知床のように、金になる働き盛りの木ばかりを狙い、「択伐」とは名ばかりの完全な「略奪林業」で森の生態系を破壊する恐れがある。
国立公園など今まで自然保護の為に手をつけられなかった所からの伐採を行なう手段。
船津秀雄斜里町長
木材会社・佐藤木材の社長
今回の伐採では、うちの会社で伐る訳にはいかないと言って別会社に引き受けさせたが、実際はこの会社の社員が多数伐採にきていた。斜里町長は100 m2運動の担い手であるべきはずが、金の為に木を伐ろうという。
地元には10人と反対者はいないと公然と嘘をついていたが、実際には100人以上の伐採反対集会が聞かれた。多くの人が反対でありながら、世間のしがらみのため口を閉ざした。
今回の町長選挙では、伐採反対を旗印にした元・知床自然保護協会会長の午来昌氏が当選し斜里町民が伐採に反対していることを明確に示した。
なお、100 m2運動を起こしたのは前々町長の藤谷豊氏であり、氏は伐採に反対の立場を明確にしている。
国立公園は日本国民の財産である。
知床国立公園の原生的自然を残すか残さないかという問題は、そこに住む動物云々の問題以前に「日本人の文化の問題」である。日本人はこのわずかな自然すら残せないのか?
[ 裏面 ]
知床国有林の動物等に関する調査について
今回の動物調査は、たった11日間の調査で済ませ、報告書そのものの中に動物調査とは関係ない森林施行に言及し、行なうのが望ましい等と最初から伐採を有利にするための報告書作りであった。
調査委員も林業関係者や林野庁サイドから選ばれた人間のみであるなど、人選そのものにも問題がある。
国民の共有財産である国立公園の、しかもまれに見る貴重な生態系を残した原生林の将来に関わる調査でありながら、こんないい加減で非論理的な結論を出した学者の責任は当然厳しく追及されるべきものである。
どういう都合でこのような行為をしたのか?
この人達は御用学者の誹りを免れないだろう!
論理的思考出来ないこの人達に、これ以上知床調査を任せるべきではない。
知床国有林の動物等に関する調査委員会
委員長 東 三郎 (北大農学部教授)
委員 阿部 学 (国立林業試験場鳥獣第二研究室長)・有沢 浩 (東大北海道演習林助手)・長内 力 (道森林施業研究所長)・沢田秀邦 (道森林技術センター理事長)
[ 朝日新聞1987年4月26日: もうけ第一の知れこと伐採 ]

環境医学 (environmental medicine)


主婦連 (SHUFUREN, association of consumer organizations)

1948.09: 不良マッチ退治主婦大会

不良配給マッチを取替えさせマッチ配給打切りとなる

         10: 主婦連合会結成
1954.08: 有毒黄変米配給反対運動
1960.09: うそつきカンヅメ追放に公開研究会
1962.04: うそつき表示追放に「不当景品類及不当表示防止法」成立促進

法律は同年9月施行

1963.12: IOCU(国際消費者機構)加入
1965.08: ヘアスプレー高圧ガス等のテスト結果発表
1966.08: ユリア樹脂製食器のホルマリン検出等テスト結果発表 (武谷 1967)

テストで朝日新聞社の明るい社会賞受賞

         10: 主婦連テスト結果

プラスチック製食器について厚生省では新しい衛生基準告示

企業の壁・役所の壁 ⇒ 現在まで通底するもの 1967.06: 鉛が出てきた中華食器を都衛生局に告発
1968.05: 消費者保護基本法制定
1969.07: 厚生省 食品衛生法改正

肉類、鮮魚、野菜類等着色、漂白一部禁止、加工食品表示義務強化
主婦連要望考慮 - 不良食品追放一歩前進

1972.04: 消団連PCB追放大会
1976.06: 二酸化窒素測定全国調査
1992.01: 欠陥商品110番
2021.02: 学習会「改正種苗法って?」開催

民医連 (全日本民主医療機関連合会)

Japan Federation of Democratic Medical Institutions
1930 東京大崎に「無産者診療所」が開設 (起源)
1936 各地無産者診療所で結成「日本無産者医療同盟」(前身)
1953.06.07 結成 「無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす組織」
1954 ビキニ水爆実験被害調査参加

新医協(新日本医師協会)

New Japan Medical Association
1948.10 設立

コホート研究


ダイオキシン(PCDD)健康影響

強毒性: 皮膚障害、内臓障害、癌、奇形児出産 + 難分解 + 高体内含積性
枯葉剤: ベトナム戦争で米軍が密林除去に用いた - 不純物(PCDD)混入

戦場一帯に7200万ℓ、散布面積130万ha = 約160 kgのPCDD散布
死者多 + 奇形、死産、流産、新生児死亡等生殖障害急増 → 今も問題

環境中蓄積PCDD

主にゴミ焼却場等で塩素系合成化学物質を300-500°C低温焼却時発生
→ 焼却灰処理問題

Ex. 埼玉県所沢くぬぎ山焼却場PCDD問題: PCDD測定値非公表

1995 周辺土壌と焼却灰: TEQで100-500 pg/g、2000-4000 pg/g PCDD
1999 「株式会社環境総合研究所」独自調査 - 「News Station」報道

所沢の野菜は高PCDD濃度と報道 - 不買運動起こり社会問題
⇒ 市民運動・マスコミ報道から法整備・情報公開進む

= 日本における環境汚染対策の転機


Cancer mortality in workers exposed to 2, 3, 7, 8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin
後向きコホート研究研究
目的: TCDD(tetrachlorodibenzo-p-dioxin (特に2,3,7,8-TCDD)への職業曝露影響評価のための化学工場労働者追跡研究(PCDD健康影響) → 曝露量及びLatency(潜伏期間)に関する検討
TCDD混入化学物質(除草・殺虫・殺菌剤等)製造12工場で働く♂5172人を、1940から初めてTCDD混入に係わるプロセスに系統的に携わった時から1987まで会社記録を基に追跡(研究開始1978年)
基準集団(非曝露群?) = 米国国民
曝露情報: TCDD混入可能性のある作業従事を職場履歴で調べ、作業年数から検討。更に生存労働者中の

253人対象に血清TCDDレベル測り、作業年数との関連性調査
死亡は、曝露10年未満、10-20年、20年以上(最初の曝露からの年数)で比較。血清中TCDD濃度分析から、曝露期間1年未満、1年以上で、低濃度、高濃度曝露と定義(平均233pg/g lipid、うち1年以上曝露をうけた119人418 pg/g lipid、一般人7pg/g lipid)
Dose-response relationship検討
他の化学物質への曝露:就業年数で考慮

エンドポイント(健康影響の評価項目)

クロロアクネ(塩素ざ瘡): ある種塩素化合物との長期間接触による職業性ざ瘡様発疹blister。角質性の栓子(面ぼう)が毛包脂腺開口部に生じる。大きさの異なる小丘疹(2-4mm)が発生
癌死亡: 胃癌・肝癌・非ホジキン性リンパ種・軟組織肉腫soft tissue sarcoma, STS等 – 死亡診断書、ICD-9に基づく

  1. 非ホジキン性リンパ種: ホジキン病以外のリンパ種
  2. ホジキン病: 初期にしばしば頸部リンパ節慢性的腫脹 - 全身リンパ節に広がり、脾臓腫大、しばしば肝臓腫大伴う疾患。明確な白血球増加ないが、貧血及び弛張熱または持続熱がある
  3. 軟組織肉腫: 骨以外の支持組織(血液、リンパ、脂肪組織等)の癌。非常に稀な癌
結果: コホートの13%クロロアクネ発症
非曝露群発症なく曝露に対する高度特異指標(曝露した人の多くは発症しない → 非高感度指標)
コホート全体では全癌死亡15%上昇(SMR = 115.95%信頼区間 = 102-130)
→ 長期曝露(≥ 1年)かつ長期潜伏期間(≥ 20年)で46%上昇(SMR = 146.95% CI=121-176)
肺癌は全体で13%増加、サブコホート(長期曝露/長期潜伏)で43%増加 → 他は死亡数少なく精度よくない
軟組織肉腫に関し詳細調査(病院記録、組織標本、死亡診断書) → 4人中2人軟組織肉腫確認とれず。プラント8に3人、プラント9に1人
喫煙影響? → 種々の喫煙状況割合(注: surviving member喫煙状況)、及び喫煙状況による相対リスク仮定上で調整済み相対リスク計算しても変化なし 他研究: 多くは後向きコホート研究

USA(上記研究)、ドイツ、10カ国研究、更にこれら含む36コホート研究等
ベトナム戦争従軍者(曝露評価に問題) → ベトナム側は?
セヴェソ(イタリア)の化学工場爆発事故(1976)
油症研究(日本、台湾) → PCB

日本のPCDD健康影響調査
Ex. カネミ油症問題 (PCB): クロロアクネ、肝癌(?)等

母乳中PCDD類濃度測定
龍ヶ崎市新利根超ゴミ焼却施設周辺等調査(計画段階) | 殆どの研究 = 曝露評価段階


セベソ爆発事故 (Seveso disaster)
1976.7.10: セベソ(イタリア)近辺農薬工場爆発
→ 大気中にPCDD等大量有害化学物質(ca 2900 kg)放出
3-16 kg TCDD(四塩化ジベンゾPCDD、特に2,3,7,8-PCDD)大気中放出
曝露した人は、曝露直後よりクロロアクネ、胃痛、内出血等の症状出現

セベソ事件: ドラム缶封入保管汚染土壌が1982.3持ち出され行方不明 → 8か月後北フランスの小村で発見

Bertazzi et al. (1997)
地域 (Zone)_______土壌中TCDD濃度 (µg/m2)
高汚染 (A), 87 ha__15.5-580.4 → 181家族立ち退く
中汚染 (B), 270 ha_< 50
低汚染 (C)________< 5 μg/m2

法的措置: Zone B-Cの農作物は食べない
対照地域(上記3地域周辺の非汚染地域): 濃度等状況不明, N
A 爆発事故当時の血中TCDD濃度(13歳以上、中央値)

Zone A(296人): 447.0 pg/g blood lipids (1993-1994 = 73.3 pg/g blood lipids)
Zone B( 80人): 94.0 pg/g blood lipids (1993-1994 = 12.4 pg/g blood lipids)
Zone C( 48人): 48.0 pg/g blood lipids
対照( 52人): 5.5 pg/g blood lipids (1993-1994採血)

人-年計算: 爆発時(1976.7.10)か転入日(7/10以降の場合)から1991.12.31か死亡日時まで

結果
♀食道癌: Zone AでRR=1.5 (95% CI: 0.5-3.5)と中程度の増加、zone Bでも過剰死亡(10年経過後)

Zone Bで10年経過後の♀胃癌: 2.4 (0.8-5.7)、♂直腸癌: 6.2 (1.7-15.9)、血液癌も増加
Zone Bにおける最大リスク(?)は、♂白血病(RR=3.1, 95% CI=1.3-6.4)、♀多発骨髄腫(RR=6.6, 95% CI=1.8-16.8)、両性でホジキン病(♂RR=3.3, 95% CI=0.4-11.9、♀RR=6.5, 95% CI=0.7-23.5)
軟部組織肉腫は♂ Zone Rのみで増加(RR=2.1, 95% CI=0.6-5.4)
全癌死亡、及び主要な癌(♂肺癌、♀乳癌等)に過剰死亡認められない。しかし、得た過剰死亡は、バイアスで説明できずPCDDと関連性考えさせる

長所: 曝露は比較的単一である程度の量、また環境中濃度分布測定される。血中濃度推定可能。曝露集団安定し、両性及び様々な年齢層含む対照群存在。満足いく追跡
欠点: 曝露分類、曝露からの時間短い、標本数小。他研究との不一致 = 曝露レベル及びパターン(他は複合曝露)の違い? TCDDに対する男女間の応答の差が存在する可能性
Bertazzi et al. (2001): 1976-1996追跡
全観察期間: 全死因、全癌死亡に過剰死亡なし(A地区804人+B 5941人)
曝露15年以降

♂: 全癌RR = 1.3 (95%CI: 1.0-1.7), Latencyなし直腸癌RR = 2.4(95%CI: 1.2-4.6), 肺癌1.3 (95%CI: 1.0-1.7)
男女: リンパ造血系癌RR = 1.7(95%CI: 1.2-2.5)

ホジキン病リスク: 最初の観察10年間に上昇 (RR = 4.9、95%CI: 1.5-16.4)
非ホジキン性白血病(RR = 2.8、95%CI: 1.1-7.0)
骨髄性白血病(RR = 3.8、95%CI: 1.2-12.5)は15年経過後に最高の上昇
軟部組織肉腫の発生は観察されず
糖尿病による死亡増加、特に♀(RR = 2.4、95%CI: 1.2-4.6)
慢性循環器・呼吸器疾患死亡は中程度の上昇、事故関連のストレスと化学物質曝露との関連示唆
→ 発癌物質PCDD評価支持 + 他健康影響(心血管系及び内分泌攪乱関連含む)との関連示唆

HSCS (Harvard Six Cities Study)


前向きコホート研究 → 大規模・有名 = 社会的インパクト大
目的: 低濃度の大気汚染の健康影響を探る
1970: Clean Air Act (= マスキー法)成立
1971-1972: National Ambient Air Quality Standards (NAAQS:環境基準)制定

6汚染物質(TSP,SO2,CO,NO2,光化学オキシダント,炭化水素)
当時最も信頼性高い調査に基づくが、汚染状況の異なるデータ、測定にSOP欠如、対象集団の特徴が調査により異なる、等に疑問 + 多くの曝露評価は、固定測定局のデータに基づき行われるのみ
→ 環境基準再評価を行う必要性

1990: マスキー法大改正

Ex. SO2 = 24時間値年平均80 μg/m3、24時間最高値365 μg/m3, TSP = 24時間値年平均75 μg/m3、24時間最高値260 μg/m3、24時間値は1年に1度だけ超えてもよい)

1997: 米国 – 微小粒子状物質に関する環境基準が設定(改訂)

PM2.5: 年平均値15 mg/m3、24時間平均値65 mg/m3
PM10: 年平均値50 mg/m3、24時間平均値150 mg/m3 (改訂) → 日本も微小粒子状物質による健康影響評価必要, PM2.5に関する環境基準設定必要

地域: 米国東部・中部の大気汚染濃度(SO2, PM)異なる6都市
高汚染: St.Lous, MO(工業都市) – 1975秋, Steubenville, OH(工業都市) – 1976春
中汚染: Watertown, MA(住宅地域) – 1974秋, Kingston-Harriman, TN(住宅地域) – 1975春
低汚染: Portage, WI(農業地域) – 1976秋,Topeka, KS(非工業地域) – 1977春
都市選択条件
  1. 過去の汚染物質濃度データ得られる
  2. 人移動少ない
  3. 人口約50000人で1500人程度の成人対象者抽出でき、適当数の児童を全小学校から得られる
  4. 交絡要因となる特定職業集団 (ex.鉱山労働者)少
  5. SO2とTSP以外の大気汚染物質発生源数少
  6. 人種構成複雑でない
  7. 州や郡等の組織が協力的
1974年-1989年まで実施(閉じたコホート研究)
対象
児童 = 小学校1-2年生(Portageは1-4年生)

学校を通し保護者に記入を依頼し、封印の上提出してもらった

最初の調査は、各都市とも成人と同時期行い以後毎年実施
対象者数が各都市1500人以上になるまで3年を限度とし毎年新1年生を追加
小学校卒業後も高校卒業まで追跡
4年生以上の喫煙歴に関する質問も調査票に加える
10年生以上は自分で記入してもらった

成人 = 25-74歳成人対象者が各都市で約2000人

地域センター来訪 – インタビューから標準化された呼吸器症状等質問紙調査及び肺機能測定

3年毎に症状調査及び肺機能測定を12年にわたりおこなった

測定
個人曝露量測定
健康影響データ: 呼吸器症状(調査票)、肺機能、死亡

肺機能測定: 成人 = 座位、ノーズクリップなし / 児童 = 立位、ノーズクリップなし

努力性肺活量 forced vital capacity, FVC
1秒量 forced expiratory volume in one second, FEV1

1978: FEF25-75 (平均最大呼出速度forced expiratory flow between 25 and 75 percent of forced vital capacity)、FEV0.75も測定項目に加わる
5回有効測定(6秒以上記録、児童3秒等)中、上位3回の平均を記録(最大8回まで測定繰り返す)
肺機能計は毎年メーカーによる較正、とスタッフによる日常点検

+ 1983年秋より新コホート設定 = 児童を対象とした追跡調査 – 呼吸器症状調査と肺機能測定

各地区1000人対象者を得るため、該当地区全公立・私立小学校特定学年児童対象
→ Watertown, Kingston, Portage = 2-5年生、St. Louis, Topeka = 3-4年生、Steubenville = 2-4年生
初年に症状調査と肺機能検査 → 次年に同様調査 → 2回目調査から1年-18ヶ月後の秋に3回目症状調査(肺機能なし)

環境測定: 汚染物質濃度測定, 固定測定局データ, 室内/室外濃度の測定

→ 測定項目・内容は研究が進むにつれ変わる
HSCSの曝露評価は屋外、室内そして個人曝露量測定に分けられる
研究開始当時から、大規模疫学調査における曝露量推定改善のために屋外と同様に室内濃度を把握
対象者全員曝露量やDose測定は現実的に不可能 → 上記3種類を一部に対し行い個人曝露量と種々の要因との関連性探るアプローチ
第2コホートは、各都市から300人選び、2-3回目健康調査間に室内濃度測定

結果
環境測定: 様々な汚染物質濃度: 屋外 < 室内 → 発生源や発生源による室内濃度への寄与

室内の方が高い値を示す汚染物質: 個人曝露量は屋外濃度よりも室内濃度との関連性高い
屋外に起因する汚染物質では屋外濃度との関連性が高い
→ PMやNO2のような汚染物質では、室内濃度を考慮に入れない環境基準は不適切
浮遊粒子状物資測定: 分級捕集 + 新測定器開発 → 粒子状物質の特徴別(粒径、組成等)検討可能

小児健康影響: SO2関連性議論されず(SO2濃度高くない)、その他汚染物質(NO2やPM)との関連性議論

呼吸器症状: 汚染レベルで差
肺機能: 差なし
死亡率: 大気汚染度 → 成人死亡率に差(RR = 1.26)
急性影響(日死亡数)(Six Cities Studyでも): PM10が10 mg/m3↑ → 日死亡数0.5%↑(メカニズム未詳)


PCDD/PCDF


Persistent health effects of dioxin contamination in herbicide production. Neuberger M, et al. Environ Research Section A. 1999; 81: 206-214
目的: クロロアクネ患者のその後の健康状態を探る
デザイン: 後向きコホート研究(?)
対象者: 1969-1975にクロロアクネ罹患者(159名)中で1996に存命で、採血や問診等の調査協力者(50名)。及び性、年齢でマッチングした2種類の対照(化学製品等職業曝露ない人、化学工場曝露ないがアスベストセメント従業者)
期間: 1996
方法: 上記3群間で病歴、血液中生化学検査結果等比較
交絡要因: 性、年齢(マッチングで交絡除去)
結果: BSR、白血球、γ-GT、SGOT、SGPTは曝露群が有意に高。曝露群中でも肝臓疾患歴ある人の方がない人より血中TCDD濃度高い (801 pg/g lipid vs. 407 pg/g lipid, 平均値)
幼児のアトピー性皮膚炎と母乳の関係. 中村好一他. 日本公衆衛生雑誌. 1999; 46: 298-303
目的: 乳児期栄養方法とアトピー性皮膚炎発生状況観察し、母乳中PCDDの関与調べる
デザイン: 断面研究
対象者: 栃木県内開催3歳児検診受診者(2968名)
期間: 1997.9-10
方法: 調査票で乳児期栄養状態、出生順位、アトピー性皮膚炎既往把握。乳児期栄養方法、アトピー性皮膚炎への他変数ロジスティック回帰により把握
交絡要因: 乳児期栄養方法、出生児母親年齢、出生順位、アレルギー関連既往(母親結果: 母乳栄養児(オッズ比: 1.37、95%CI (1.02-1.83))、人口栄養児(オッズ比: 1.21:95%CI (1.21-2001.1)
備考(考察): 母乳栄養がアトピー性皮膚炎危険因子と考えるが、学生モチベーションを受けつぎ以下になる可能性もあり。PCDD濃度は、環境媒体、体内共に測定されていない
Serum dioxin and cancer in veterans of Operation Ranch Hand. Ketchum N, et al. Am J Epidemiol. 1999; 149: 630-639
目的: Operation Ranch Hand退役軍人の癌有病状況と2,3,7,8-TCDDへの曝露との関連性を探る
対象者: Air Force Health Study対象者中Operation Ranch Hand参加退役空軍軍人(曝露群)、及び年齢、人種でマッチングした同時期に東南アジア在籍だがOperation非参加者(非曝露群、血液中濃度レベル < 10ng/kg lipid)
期間: 1982-1997.7.10 (ケース = 期間中癌判明)
方法: 血中PCDD濃度測定は1987か1992実施。ケース-癌非発症人(対照)の曝露関係をロジスティック回帰(曝露群濃度レベルで3群分割: Background 0-10ppt, Low 27-94ppt, High 94-3290ppt)
交絡要因: 生年、軍の中の職種、人種、喫煙歴、飲酒歴、アスベスト曝露等(皮膚癌以外の癌について)
結果: 腎臓癌か膀胱癌はオッズ比: 4.5(Low群、95%CI: 1.0-20.4)、全癌で差ない。潜伏期間考慮すると、除隊後20年未満群で、皮膚癌除く癌でLow群がオッズ比3.4 (95%CI: 1.5-8.0)、High群が2.7(0.9-8.0)である。20年以上でオッズ比1下回る
備考(考察): 検出力小。潜伏期間20年以内で観察されたオッズ比上昇は、PCDD曝露以外の影響と考える。曝露群の40%がバックグラウンド濃度との閾値である10ppb以下
Blood lipid concentrations of dioxins and dibenzofurans causing chloracne. Coenraads P, et al. Br Assoc Dermatol. 1999; 141: 694-697
目的: クロロアクネ出現する血液中PCDD類濃度
対象者: ペンタクロロフェノール工場従業者でクロロアクネ出現群、非クロロアクネ・曝露群、非曝露従業者群、この工場に勤務せず、かつ工場側にも住まない人(対照群)。対象人数不明
方法: 断面研究の区分
結果: クロロアクネ出現群血中PCDD濃度は1168-22308 pg-TEQ(WHO)/g lipid、曝露してるがクロロアクネ現れない群の濃度は424-662 pg-TEQ/g lipid → クロロアクネ出現は650-1200pg-TEQ/g lipidの範囲と考える
備考(考察): 総TEQに寄与したのはHxCDD/Fsで、脂肪ベースではHxCDDが2-3.5ng/g、HxCDFが2-5ng/gでクロロアクネが出現する可能性あり
Cancer, Heart disease, and diabetes in workers exposed to 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin. Steenland K, et al. JNCI. 1999; 91: 779-786
目的: IARCコホート追跡期間最大6年間延長し、TCDDと癌その他の影響の関連調査。更にコホート中69%の人のデータ用い曝露-反応関係検討
デザイン: コホート研究
対象者: 12のUSプラント従業員(5132人 ♂) 期間: 1993まで観察延長 方法: 生命表分析でSMR(対照全米人口)を算出し、かつコックス回帰で率比を算出
交絡要因: 生年、年齢(喫煙等生活様式やhealthy worker effectは濃度群毎の比較し避けている)
結果: 全癌SMRは1.13(95%CI: 1.02-1.25)、量反応的傾向が全癌と肺癌に観察。高曝露群で全癌のSMR=1.60、心臓病に関し弱い関連性、糖尿病と負の曝露-反応関係。コックス回帰から全癌で15年のタイムラグ、心臓病でタイムラグない傾向性
備考(考察): TCDD高濃度曝露が過剰死亡(全癌)を見いだすこと示唆。しかし過剰死亡は一般集団曝露レベルの100-1000倍で、動物実験レベルとほぼ同レベルでの検討に限定
Serum dioxin and immunologic response in veterans of Operation Ranch Hand. Michalek J, et al. Am J Epidemiol. 1999; 149: 1038-1046
目的: Operation Ranch Hand退役軍人対象に2,3,7,8-TCDD曝露-免疫応答関連性探る
対象者: Air Force Health Study対象者中Operation Ranch Hand参加退役空軍軍人(曝露群)、及び年齢・人種マッチングした同時期に東南アジア在籍したがOperation非参加者(非曝露群、血液中濃度レベル < 10ng/kg lipid)。抗炎症剤か免疫抑制剤使用者、最近癌放射線治療か化学療法受けた人、HIV陽性の人も除く
方法: 遅延型皮膚過敏反応(Candida albicans, mumps, Trichophyton, Bacterial antigen made from Staphylococcus aureus: 4種の抗原抗体反応どれも陽性でなければ異常と判断)
交絡要因: 年齢、軍中職種、人種、喫煙歴、飲酒歴
結果: PCDD曝露と免疫系変化に明瞭な傾向なし
備考(考察): ベトナム退役軍人のPCDD曝露(負荷量)と免疫変化に関し調べた唯一の研究
Olestra increases faecal excretion of 2, 3, 7, 8-tetrachlorodibenzo-p- dioxin. Geusau A, et al. Lancet. 1999; 354: 1266-1267
目的: 患者クロロアクネ発症原因を調べる
デザイン: 疫学研究ではなく患者2名対象調査
対象者: クロロアクネ発症30歳♀とニキビ等出現した27歳同僚
期間: 1998
方法: クロロアクネ発症に関しTCDD関与考えられ、血液中TCDD濃度測定
結果: 2名の血液中TCDD濃度144,000pg/m3、26,000pg/m3。TCDD摂取経路不明。オレストラ(代用脂肪)摂取で糞への排出が8-10倍程度増大
Serum dioxin level in relation to diabetes mellitus among air force veterans with background levels of exposure. Longneker M, et al. Epidemiology. 2000; 11: 44-48
目的: バックグラウンドレベルでの血中PCDD(2,3,7,8-TCDD)濃度と糖尿病(有病)との関係、血中(血清中)グルコース及びインシュリンレベルとの関連性探る
対象者: Air Force Health Study対象者中、Operation Ranch Hand非参加の比較対照群退役空軍軍人。1982から継続調査され、1992調査参加者中、血液中PCDDデータが存在し、かつ濃度レベルが10ng/kg lipid以下だった人(1197名)
期間: ケース・コントロール研究形態(断面研究と書いているが)
方法: Logistic回帰で血中PCDD濃度-糖尿病関連性解析。PCDD濃度は4分位を用い4群に分類
交絡要因: 年齢、1992のBMI、採血時BMI、人種、軍職種、家族歴(糖尿病)等
結果: 最低PCDD濃度群(<2.8ng/kg)に比べ最高濃度群(< 5.2 ng/kg)の調整オッズ比は1.71(95%CI: 1.00-2.91)となり関連性あるが、血中トリグリセリドで補正加えると1.56 (95%CI: 0.91-2.67)に減少
備考(考察): 糖尿病診断: 1995までに医師診断受けたと答え、かつ医療記録で確認とれた場合か、1992に糖負荷後血糖値 > 200 mg/dLであった人。得た関係はメカニズム検討必要。参加者偏りの可能性示唆
Health effects of chronic exposure to polychlorinated dibenzo-p-dioxins (PCDD), dibenzofurans (PCDF) and coplanar PCB (Co-PCB) of municipal waste inicinerator workers. Kitamura K, et al. J Epidemiol. 2000; 10: 262-270 目的: ゴミ処理施設(豊能郡美化センター)労働者のPCDD曝露と健康影響との関連性
デザイン: 断面研究
対象者: 1988以降同施設勤務の16-78歳の人で、健康調査を希望し200mLの採血を行った92名
期間: 1998.10
方法: 産業医による聞取調査、カネミ油症皮膚診断のエキスパート医師による皮膚検査、調査票による食事や日常生活把握、血液中PCDD濃度、及びその他生化学検査行い、種々のPCDD類と他変数との関連性、ロジスティック回帰を用いPCDDの健康影響評価
交絡要因: 年齢、BMI、喫煙、飲酒
結果: PCDD濃度(TEQ値)中央値は39.7pg I-TEQ/g lipid、2,3,7,8-TCDDは3.9 pg I-TEQ/g lipidであった。PCDDレベルとGGT、総蛋白、尿酸、Caとの間に正の相関、Feとは負の相関あり、ただし、年齢、喫煙、飲酒で調整するとこれらの相関は消失。PCDD/F が100pg I-TEQ/g fat増加した場合のオッズ比は、高脂血症が6.08、アレルギーは4.6であった
備考(考察): 症状は自己申告に基づき、またPCDDレベルと血漿脂質の間には関連が認められなかっため、確認必要
Prostate cancer detection in veterans with a history of Agent Orange exposure. Behzad M, et al. J Urol. 2001; 166: 100-103. 目的: Agent Orange曝露と前立腺癌発生との関係
対象者: 1998-2000の30か月間の間に前立腺生検を受けた連続した400人の退役軍人
期間: 1998-2000
方法: 前立腺生検を行った際に、Agent Orange曝露の有無(32人が曝露ありと回答)、前立腺特異抗原(PSA)検査用の採血を実施。曝露群と年齢でマッチさせた(1年以内)非曝露
群対象者を1:3で選択。曝露群と非曝露群で前立腺癌発生、PSA、cancer grade等を比較
交絡要因: 年齢でマッチングした以外は特になし
結果: 曝露群前立腺癌患者21人(40.4%)で非曝露群54人(34.6%)、平均PSA = 曝露群8.4 Ng/ML, 非曝露群8.2 Ng/ML(全てNS)
備考(考察): 生検受けた対象者にAgent Orange曝露等偏りないか、当該期間に外来受診した人との間で曝露情報比較。生検受けた方が平均年齢高い
Dioxin exposure and public health in Chapaevk, Russia. Revich B, et al. Chemosphere. 2001; 43: 951-966
目的: (1)PCDDへの環境曝露調査、(2)血中・母乳中PCDDレベル調査、(3)動態データから発生率、死亡率、特にreproductive health記述、(4)遺伝的特徴影響調査、(5)ケース・コントロール研究から♂性的成熟度、♂生殖系異常調査
対象者: Russia, Chapaevsk住民(詳細不明)。先天的異常調べるためChapaevskの幼稚園に通う1990-1995生まれ幼児
結果: 40人母乳中PCDD濃度(7サンプルに纏めた)42.26 pg TEQ/g fat, ♀化学工場従業員、居住者(工場から1-3km、5-8km)血中濃度412.4pg TEQ/gfat, 75.2 pg TEQ/g fat, 24.5 pg TEQ/g fat。Chapaevsk全癌死亡率 = 1.3 &ties; Russia全体(♂死亡率主に増)。癌発生率♂肺癌、♀乳癌がRussia全土より大。過去7年間自然流産は他都市より平均24.4%高
コメント: 動態統計信頼性は?記述不親切。無理矢理Dioxinと関係付けした印象(PCDD以外の可能性考察なし)
Health effects of dioxin exposure: A 20-year mortality study. Bertazzi PA, et al. Am J Epidemiol. 2001; 153: 1031-1044
目的: Seveso爆発後20年後(1996)まで死亡調査
デザイン: コホート研究
結果: 曝露後15-20年で男に関し有意なのは全癌死亡によるrate ratio(Zone A+Bとreference群比較)は1.3 (95%CI 1.0-1.7)、骨髄性白血病で4.6 (95% CI 1.0-2.7)が、女で全癌が0.8 (95%CI 0.6-1.2)、lymphatic and hemopoieticで2.5(95%CI 1.1-5.7)、非ホジキン白血病で4.6(95%CI 1.6-12.9)、糖尿病が2.4(95%CI 1.2-4.8)

PCB

大量生産され環境中に広まる: 1954-1971に57300 t国内生産 (現在製造中止)
Ex. 鐘ヶ淵化学: カネクロール(KC)300, 400, 500, 600他(3, 4, 5, 6塩素化体異性体混合物主成製品) (1972年まで製造)
急性毒性極低 → マウス・ラット動物実験で発癌性

カネミ油症事件の原因物質として疑われる


Serum organochlorine pesticides and PCBs and breast cancer risk: results from a prospective analysis (USA). Dorgan J, et al. Cancer Causes Control. 1999; 10: 1-11
目的: 有機塩素系農薬及びPCBと、乳癌との関係
デザイン: ネステッド・ケース・コントロール研究
対象者: Missouri Breast Cancer Serum Bankへ献血♀。105名ケース(組織学的確認と、年齢と採血日で1:2マッチング実施(208名)
期間: 1977-1987献血 → 最高9.5年追跡
方法: 血中DDT 5種、他農薬13種、PCB27種濃度測定、年齢、身長等属性データ入手。条件付ロジスティック回帰分析
交絡要因: 身長、体重、BMI、初潮年齢、月経状況、外因性エストロゲン使用、第一親等の乳癌既往歴、教育歴、喫煙等
結果: PCB-118とPCBー138は血液が診断時に近い時期に採られた場合は乳癌と正の関係が示唆されるが、全体的には乳癌リスクを増大させてはいない
備考(考察): 検出限界以下多 ≠ 精確評価
Mortality in male and female capacitor workers exposed to polychlorinated biphenyls. Kimbrough R, et al. JOEM. 1999; 41: 161-171
目的: PCB曝露したコンデンサー製造過程従事者 → 既報告の過剰癌死亡にさらに検討加える
デザイン: 後向きコホート研究
対象者: ニューヨーク州2工場で1946.1.1-1977.6.15まで、≥90日上記作業に従事した時間給従業員及び給与従業員(7075名)
期間: 1993末まで追跡
方法: 死亡記録(National death index and Equifax Nationwide Death Search tapes)に基づきSMR算出(referenceは全米人口)。また就業期間別、潜伏期間別にもSMRを算出 交絡要因: 年齢、性、人種、calender-specific 結果: ♂時間給従業員の全癌に対するSMRは81 (95%CI: 68-97), ♀は110 (93-129)。部位別、更に就業期間別(20年 < / ≥ 20年)に検討したが、有意な過剰死亡はない
備考(考察): Healthy Worker Effectの示唆
Chloracne, goiter, arthritis, and anemia after polychlorinated biphenyl poisoning: 14-year follow-up of Taiwan Yucheng cohort. Guo YL, et al. Environ Health Perspect. 1999; 107: 715-719 目的: Yuchengコホートの生き残りメンバーの有病状態を調べる
デザイン: 断面調査の枠組み
対象者: 1963.1.1以前誕生Yuchengコホートメンバー(795名)、及び1979油症事故当時にコホートメンバー近所に住んだ対照(性、年齢±3歳でマッチング、事故当時でなく後日に選択、693名)
期間: 1993年
方法: 構造化質問票を用い電話聞取り調査、調査員は健康科学系大学卒業者で曝露状況はblindとし実施 結果: 曝露群17%にアクネ様皮膚症状出現(対照群1.3%)。その他皮膚疾患等でも曝露群の方が有症率高いが、慢性疾患様症状には差がない
備考(考察): 結果は1979の高濃度曝露者でPCB/PCDFはほとんど排泄されず、その影響が残されていることを示唆
Exposure to plychlorinated bihenyls and levels of tyroid hormones in children. Osius N, et al. Environ Health Perspect. 1999; 107: 843-849
仮説: 血中PCB濃度は小学生甲状腺ホルモンレベルに関与
デザイン: 断面研究
対象者: 産業廃棄物焼却施設周辺(比較対照地域含む)に居住する小学校2年生(671名)
方法: 生活環境、人口学的変数、ETS、栄養等の情報を自記式調査票で、24時間尿、血液サンプル入手し、血液中PCB濃度の地域比較、及び回帰分析により甲状腺ホルモンレベルに対する個々のPCB congenerの寄与検討
交絡要因: 性、年齢、ETS、魚摂取量、血中カドミウム及び鉛濃度、尿中水銀濃度
結果: 殆どの児童のTSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT4(遊離チロキシン)レベルは正常範囲内、PCBレベルに殆ど地区差なし。mono-ortho PCB 118とTSHに有意な正の相関、PCB 138, 153, 180, 183, 187とFT3とに負の関係。PCBとFT4間に関係なし[仮説否定]
Breast Cancer Risk associated with Congeners of Polychlorinated Biphenyls. Zheng T, et al. Am J Epidemol. 2000; 152: 50-58
目的: 乳癌リスクとPCB及び種々PCB Congernesの体内負荷量との関係
デザイン: ケース・コントロール研究
対象者: 米国コネチカット州居住40-79歳♀(ケース304人、対照186人)。ケースはYale New Heaven Hospitalで外科手術を受け組織学的に確認。対照も同様に組織学的に確認(病院内対照、良性乳疾患)。ケースも対照も他の癌の既往はなし
期間: 1994-1997
方法: 乳脂肪組織中PCB の分析(9 congeners: IUPAC #74, 118, 138, 153, 156, 170, 180, 183, 187)
交絡要因: 出産歴、授乳歴、病歴、職業、人口学的変数(標準化、構造化質問票により)、食事記録(半定量法式質問票)、他
結果: ケースと対照の間にPCB濃度(幾何平均) の有意差なし(478.6ppb vs. 494.1ppb)。種々の共変量調整したオッズ比(下位1/3 vs. 上位1/3)は0.7
備考(考察): 対象congener以外のPCBの寄与不明(Ex. #77)。対象者偏りの可能性(良性疾患を対照、0.4gのbiopsyが可能な人のみ)。Sample size小
The assessment of risk to acquired hypothyroidism from exposure to PCBs: A study among Akwesasne mohawk Women. Sukdolova V, et al. Cent Eur J Public Health. 2000; 8: 167-168
目的: 長期間にわたるPCB曝露(魚食)と甲状腺機能低下との関係調べる
デザイン: (後向き)ケース・コントロール研究
対象者: ケースは30歳以上のMohawk Nationメンバーで、Akwesasne reservationに住み、Indian Health Service Clinicの患者。対照は現在実施中の環境疫学研究対象者で、甲状腺異常のない人( 46ケース、75対照を分析)
方法: 甲状腺異常患者(ケース)と、対照他の環境疫学調査に参加する人のうち、甲状腺異常のない人の血中PCB濃度(93 Congenerに分けて)を比較
結果: Congener毎では、全ての濃度低く、殆どで対照群濃度大
備考(考察): 研究は現在途中段階
PCB congener profile in the serum of humans consuming Great Lakes Fish. Humphrey H, et al. Environ Health Perspect. 2000; 108: 167-172
目的: ミシガン湖周辺住民に1979-1982に設定したコホートの一部を用いてCongener毎の血液中PCB濃度濃度を把握
デザイン: コホート研究(?)
対象者: 1992に50歳以上であったコホートメンバー(魚食者101人、非魚食者78人の血液を分析)
期間: 1993-1995(採血時期)
方法: 魚食者と非魚食者の血液中PCB濃度をcongener (90種)毎に測定した結果を報告。今後はPCB濃度の変化に焦点あて、魚中濃度の変化と魚消費行動の変化との関連性を調べる予定。血液サンプルは、対象者の10%からDuplicateを得る等によりquality control実施
交絡要因: なし
結果: 90種の総PCB濃度は魚食者群で14.26ppb、非魚食者群で4.56ppb(22種のPCBで平均的に99%のPCB濃度説明)。IUPAC #138/163, 180, 153が全体の53-64%。しかし、魚食者群濃度の方が高かったが、congenerパターンは両者ほぼ同じ
備考(考察): どのcongenerを測定するかの選択が、cost-effectivenessの観点からも重要。神経心理学的機能と甲状腺機能へ影響に関する検討が進行中
コメント: 健康影響への言及なく、曝露評価的位置づけ、交絡要因含む共変量の検討は不明
Risk of female breast cancer associated with serum polychlorinated biphenyls and 1,1-dichloro-2,2'-bis(p-chlorophenyl)ethylene. Zheng T, et al. Cancer Epidemiol Biomark Prev. 2000; 9: 167-174
目的: PCB及びDDEと乳癌発症との関連性
デザイン: ケース・コントロール研究
対象者: Connecticutで実施。ケースはTolland County居住かYale-New Haven Hospitalで手術を受けた組織学的に確認された乳癌患者(475名)。対照は同地域居住者中か、同病院で新規良性乳腫瘍診断受けた人中から無作為選出された人(5歳階級分類し頻度マッチング502名)。ケース、対照共に30-80歳
期間: 1995ー1997
方法: 10mL(以上)採血実施、PCB(74, 118, 138, 153, 156, 170, 180, 183, 187)とDDE測定。ケースと対照の間で血中濃度比較(幾何平均、調整済み平均)。Logistic回帰分析用い交絡変数を制御したオッズ比算出
交絡要因: 調査票(インタビュー)用い、月経、出産、授乳、既往歴、家族歴(癌)、職業、食事(頻度調査)、人口学的変数等
結果: 年齢及び脂質で調整したPCBレベルはケース733.1ppb、対照747.6ppb。調整済オッズ比は、PCB濃度を3群に分類し、最高濃度と低濃度群で比較し0.95。出産回数、授乳期間等で層別化してもリスク上昇はない
備考(考察): DDE同傾向。属性中に単純クロス表分析で関連性認められたものあり。血液のみを検討対象としたこと、対照として良性腫瘍患者を選んだこと等が研究の潜在的限界点となる。個々のあるいはグループ化しPCB影響を議論することが必要
Repeated measurements of organochlorine exposure and breast cancer risk (Denmark). Hoyer A, et al. Cancer Causes Control. 2000; 11: 177-184
目的: 繰返し有機塩素化合物濃度測定 → 乳癌リスク測定精度を上げる (前向き評価)
デザイン: ネステッド・ケース・コントロール研究
対象者: Copenhagen City Heart Study (CCHS)参加者で、1976-1978と1981-1983間に2回血液を提供した人。この内、2度目採血後に癌登録データで確認された乳癌ケース155名と、年齢と診断時の動態統計でマッチングした対照477人のうち2度の血液データが利用可能であった274名)
期間: 1992年末まで
方法: 2回の血液中濃度平均と、乳ガン発症関係をロジスティック回帰で分析(血液中濃度を4分位用いて4群分類)
交絡要因: 出産回数、体重、ホルモン補充療法有無、2回の測定間での体重変化
結果: 傾向性はNSだがPCBのCongener 118 (IUPAC#、最低濃度群と最高濃度群の比較でオッズ比が1.2(95%CI: 0.7-2.2)と、138で(オッズ比は1.4、95%CI:0.8-2.6)、血液中濃度と発癌リスク増加との間に関連性認められた
備考(考察): p,p'-DDTは乳癌と関連性認められ、量-反応関係が認められた。DDTに関してはPCBと同様であった
Organochlorine exposure and breast cancer survival. Hyer A, et al. J Clin Epidemiol. 2000; 53: 323-330
目的: 有機塩素化合物曝露による乳癌リスクと、予後への影響
デザイン: ネステッド・ケース・コントロール研究
対象者: コペンハーゲン周辺居住し、無作為抽出20-80歳♀のうち乳癌を発症した人(195名)
期間: 1976-1978と1981-1983の2回採血、1996.7末まで追跡
方法: 採血、生活様式、出産歴等を調査票にて収集。癌登録利用し1992まで乳癌発症を把握(発症は第1回目採血以降に限定)。血液中27種のコンジェナー濃度を足しあわせたPCB(四分位に基づき濃度を4カテゴリに分類)の影響(乳ガン生存率、死亡等への)を、比例ハザードモデルで調べる
交絡要因: 癌の特徴、採血から診断までの時間、診断前に収集された調査票データ(妊娠回数等)、飲酒、喫煙、収入等
結果: 診断5年より前に採血行われた場合 → PCBは乳癌死亡リスク増加と関連性が認められる
備考(考察): 主にディルドリンに関し検討
Menstruation and reproduction in women with polychlorinated biphenyl (PCB) poisoning: long-term follow-up interviews of the women from the Taiwan Yucheng cohort. Yu M, et al. Int J Epidemiol. 2000; 29: 672-677
目的: 台湾油症♀と対照群の月経と出産経験比較
対象者: 油症患者と近隣neighborhood対照からなるコホートの生存メンバーで1993に30歳以上の♀(該当患者596名、内368名を同定し、この内356名が対象者: 対照は329名同定し312名調査)
期間: 1993.7-1994.6
方法: 後向き聞き取り調査(電話か家庭面接)、曝露状況は調査員にはblind、対象者には油症あるいはPCBに関する調査と明言せず、出産経験と月経周期に関する質問
交絡要因: 油症患者に関し、1979-1981測定から血中PCB濃度に基づき46mg/gで高低層別化
結果: 曝露群で異常月経時出血16%、対照群8% (p < 0.05)、1979以降死産は、曝露群4.2%、対照群1.7%(p = 0.068)。油症患者が、健康上の問題から出産断念した傾向大(7% vs 2%, p < 0.05)。血中PCB濃度に基づく量反応関係は認められず
備考(考察): PCB/PCDFが内分泌系及び生殖機能に影響を及ぼす可能性を示唆。しかし、調査実施は事件発生より長い年月後で、更に全対象者は検討していない(バイアス可能性)
Breast cancer risk factors: PCB congeners. Lucena R A, et al. European J Cancer Prev. 2001; 10:117-119
目的: PCBと乳癌の関係を探る
デザイン: 断面研究区分(ケース・コントロール研究?)
対象者: Spain, CordobaのReina Sofia University Hospitalで乳房しこり摘出生検受けた♀134(51.3 ± 16.1歳)
期間: 1997.2-11
方法: 組織病理学的しこり検査、乳房脂肪中PCB congener濃度(#28, 52, 101, 118, 138, 153, 170, 180, 183, 187, 188)、生検結果から良性腫瘍(65名)-悪性腫瘍(69名)間比較(t検定、ロジスティック回帰分析等)
交絡要因: 既知乳癌リスク要因(喫煙、授乳期間、BMI計算用身体計測値等、調査票聞取で収集)
結果: 単純比較ではPCB #28及びPCB #52が、またロジスティック回帰ではPCB #28がもっとも重要なリスク要因として検出(オッズ比9.6, 95%CI 3.8-24.4)。他のcongenerはNS。他要因として、単純比較で年齢、授乳期間、過体重が、回帰モデルで年齢、飲酒、子供の数、過体重が認められた
備考(考察): 喫煙-授乳期間はNSだが、既存研究より交絡要因と考えられ最終モデルに加える。病院内対照バイアスの可能性示唆
Association between blood concentration of polychlorinated biphenyls and manifestations of symptoms and signs in chronic "Yusho" patients from 1986 to 1997. Tokunaga S, et al. Fukuoka Acta Med. 2001; 92: 122-133
目的: 油症認定患者の自他覚症状有所見率と血中PCB濃度との関連を年度毎検討
デザイン: (繰り返し)断面研究
対象者: 全国油症認定患者中、血中PCB濃度が各年で測定された患者
期間: 1986-1997
方法: 年度毎に、内科・皮膚科・眼科の自他覚症状を目的変数に、PCB濃度を説明変数とし、ロジスティック回帰分析実施
交絡要因: 性、年齢
結果: 血中PCB濃度は1986の4.05ppb(幾何平均)から、1997の2.85ppbに減少。皮膚科検診項目中、黒色両皰(躯幹)とざ瘡様皮疹(外陰部と臀部)有所見率は12年中5年以上でPCBと有意な正の関連。他自他覚症状とは強い関連性は認められず
備考(考察): 全員が毎年自他覚症状検査を行うわけではない、時間変動を考慮した統計的解析行っていないため、必ずしも時間的変化は表していない。年毎の対象者照合、更に欠損値存在から、より複雑な統計的解析不可
油症患者追跡調査と人口動態死亡テープの照合による死亡原因の同定. 金子聰 他. 福岡医誌. 2001; 92(5): 134-138
目的: 動態死亡テープ用い油症患者原死因探る
対象者: 1986.3までの油症認定患者(♂918名、♀897名)
期間: 1978.1.1-1996.12.31(この間死亡データを人口動態死亡テープ保管)
方法: 生年月日、死亡年月、性用い、油症認定患者追跡調査データ、人口動態死亡データ照合実施
結果: 最終追跡調査日(1996.1.31)までに死亡確認患者292名(♂177名、♀115名)。照合完了203名(86.0%)。内、死亡原因新たに確認したのは58名、既報告死亡原因と一致したのが87名、照合未完了32名、既入手死亡原因と異なるもの58名(23名同じと解釈可、残り35名全く異なる)
備考(考察): 照合プログラム詳細略。一致率86%は油症患者追跡調査情報が必ずしも公的資料を情報源としない点が考えられる
Plasma concentrations of persistent organochlorines in relation to thyrotropin and tyroid hormone levels in women. Hagmar L, et al. Int Arch Occup Environ Health. 2001; 74: 184-188
目的: 食事(魚食)由来と考えられるPCBと血漿中tyrotrpin (TSH)や甲状腺ホルモン濃度との関係
対象者: Sweden東部沿岸居住漁師妻182人(平均42歳、範囲23-62歳)。元々はCB-153と低体重児出産の関係を調べるケース・コントロール研究(1995)対象者として選択
方法: 採血済(1995)血液からCB-153及び甲状腺ホルモンレベル(FT3, FT4, TT3, TT4)調べ、両者関係をスピアマン順位相関係数と回帰分析。採血時に魚摂取量も調査票により把握
交絡要因: 年齢
結果: CB-153濃度 159 ng/g lipid(中央値)。Baltic Sea fish消費量とCB-153との相関係数0.24。CB-153濃度はTT3と弱い負の相関(rs = -0.29)
備考(考察): CB-153をPCB曝露バイオマーカーに使用。食物由来POCsが成人♀の末梢血中甲状腺ホルモンレベルに弱い影響示唆
Neurobehavioral deficits associated with PCB in 7-year-old children prenatally exposed to seafood neurotoxicants. Grandjean P, et al. Neurotoxicol Teratol. 2001; 23: 305-317
目的: 出生前PCB曝露と7歳時神経心理的影響を調べる
デザイン: コホート研究
対象者: フェロー諸島3病院で1986-1987年出生児コホート → 1993に臨床的検査を受けた435人
期間: 1986-1993
方法: 出生時に臍帯血と臍帯を採取しPCB濃度及びDDE濃度を調べ、7歳時に神経心理学的検査(Neurobehavioral Evaluation System (NES2) Finger Trapping Test, NES2 Hand-Eye Coordination Test, NES2 Continuous Performance Test,等)実施し、両者関係を重回帰分析
交絡要因: 性、年齢、Raven's Progressive Matrices母親のスコア、親学歴、父親就業状況、デイケア等
結果: 臍帯PCB濃度は中央値が1.88 ng/g wet weight。NES2 Continuous Performance Test平均応答時間と、Boston Naming Test の2項目に湿重量あたりのPCBが有意に関連
備考(考察): コホートに関しPCB濃度とメチル水銀濃度が相関し交絡要因 → PCBよりメチル水銀の方が重要と考える
Impairments of memory and learning in older adults exposed to polychlorinated biphenyls via consumption of Great Lakes Fish. Schantz SL, et al. Environ Health Perspect. 2001; 109: 605-611
目的: 成人期PCB曝露に関し、高齢者知能へのPCB及び他魚由来汚染物質の潜在的影響調べる
デザイン: コホート研究の一環
対象者: 49-86歳ミシガン在住者(既存コホートから年齢層別無作為選択)。Great Lakes fish良く食べる101人(sport-caught Lake Michigan fishを年間24 lb超摂取)と食べない79人(< 6 lb)
方法: 一連の神経心理学的テスト実施。血中PCB及びDDE含む他汚染物質濃度測定。重回帰分析で両者関係分析
交絡要因: 人口学的要因(性、年齢、教育等)、生活様式(活動レベル、喫煙等)、心理学的機能(WAIS-R Vocabulary subtest 等)、健康状況(一般症状、BMI等)、モデルにより組込まれる交絡要因異なる
結果: 魚食者はPCBとDDEレベル顕著に高く、潜在的交絡要因調整後、PCB曝露は記憶と学習に関する低位の尺度の幾つか(Weschler Memory Scale verbal delayed recall, semantic cluster ration, 等)と関係。Executive and visual-spatial functionはPCB, DDEともに関連しない
Polychlorinated biphenyls in blood plasma among Swedish female fish consumers inrelation to time to pregnancy. Axmon A, et al. J Toxicol Environ Health, Part A. 2001; 64: 485-498
目的: Sweden東部沿岸に住む漁師の妻のPCB曝露と妊娠までの期間(TTP)との関係
デザイン: 後向きコホート研究(?)
対象者: 漁師の妻コホート中から以前のTTP研究で選んだ1945以降生まれたサブコホート、及び子供の出生時体重(1973-1991出産)を元にネステッド・ケース・コントロール研究に選んだ母親中から1945以降生まれ、かつ血液サンプル得られた。計121人
期間: 1995?
方法: 1995分析血漿中CB-153濃度(2,2', 4,4', 5,5'-hexachlorobiphenyl)から最初に計画した妊娠直前濃度推定(詳細略)。CB-153濃度に基づき3群(低:37-206 ng/g lipid、中:207-330 ng/g lipid、高:331-1036 ng/g lipid)に分類し、Cox回帰分析によりTTPとの関係を低濃度群との妊娠成功率比(SuRR:人月あたりの妊娠数の比)の違いで検討
交絡要因: 喫煙、コーヒー摂取、フルタイム就労、ピル服用、学歴、年齢等
結果: 高濃度群とのSuRRは0.95(95%CI 0.74-1.23)、中濃度群とは0.77(95%CI 0.47-1.28)と明確な関連性認められない
備考(考察): 血漿中CB-153は総PCB曝露量のバイオマーカーに使用。推定妥当性は値をカテゴリ化(3群)しκ統計量で検討(TTP, Time to pregnancy)は"How many months did it take you to get pregnant?"という質問open endedから情報入手。高曝露♀が省かれるネステッド・ケース・コントロール研究から選択された対象者は子供体重に基づき選択される、等のバイアス存在も示唆
Environmental exposure to polychlorinated biphenyls and quality of the home environment: effects on psychodevelopment in early childhood. Walkowiak J, et al. Lancet. 2001; 358: 1602-1607
目的: 幼児期精神発達とPCB曝露との関係 - 胎児期PCB曝露のみ影響か出産後曝露も影響するか
デザイン: コホート研究(各時点での断面的解析)
対象者: 171健康母子ペア(デュッセルドルフの3病院、終了時116ペアに減少)、対象者条件は、母親同意、37-42週で生まれた第1子または第2子、他
期間: 1993.10-1995.5
方法: 前向きに7, 18, 30, 42月時に子供の精神発達を自宅測定(試験)。臍帯血と母乳から出生前及び周産期PCB曝露量(#138、#158、#180の合計)推定。42月時採血し濃度測定。18月時に家庭環境質をHome Observation for Measurement of the Environment Scaleで測定。重回帰分析
交絡要因: 試験時年齢(日)、妊娠期間(月)、妊娠中飲酒/喫煙、アプガースコア、新生児時病気/黄疸等
結果: 授乳期間長いと生後42月時点で血中PCB濃度上昇(2週未満で中央値0.36ng/mL、4月超で1.77ng/mL)母乳中PCB濃度と精神/運動発達に負の関係。母乳中PCB濃度173ng/g lipids(5%)-679ng/g lipids(95%)に上昇すると30月以上時点のBayley Scales of Infant Development mental scores8.3ポイント減少(95%CI–16.5-0.0)、Bayley Scales of Infant Development motor scores 9.1ポイント減少(95%CI –17.2--1.02)。出生後PCB曝露も負の影響。家庭環境の質は正の関係
備考(考察): PCB濃度レベル自体は以前より減少。今日のヨーロッパのバックグラウンドレベルPCBが精神発達等に影響する可能性示唆
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