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(2022年3月6日更新) [ 日本語 | English ]

湿原 (wetland)






有珠山 / サロベツ泥炭採掘跡
1986年, 2006年の有珠山火口原. ワタスゲ・エゾカンゾウ

用語: 各地域、各分野(生態学水文学土壌学等)で別個に定義発達し混乱
環境大別
海水域 = 常に冠水
陸上域下部 = 泥多く満潮時浸水
陸上域上部 = 砂質で一部浸水
湿度範囲 mositure regime: 生態に長期間影響を及ぼす生理学的な水分状態 – 長期的土壌水分状態
  • 含水(水溶性)の aqueous: 自由水面を持つ湿地 (marsh, scar)
  • 従含水の paraquic: 長期湛水し、極めて排水悪い(patterned fen, swamp)
  • 中含水の aquic: 中程度の湛水飽和期間がある排水悪い(ブランケット泥炭地、中間泥炭地)
  • 亜含水の subaquic: 短期間湛水飽和し、排水が完全でない(ドーム状泥炭地、台地状泥炭地)
  • 過湿の perhumid: 季節的に水分不足せず、不完全に排水ある (凍結台地、凍結パルサ、凍結泥炭ポリゴン)
  • 湿生の humid: 季節的に水分が不足せず、若干排ある泥炭地 (folisol)

沼沢性 telmatic: 定期的氾濫条件下で生育する植物による水面付近での泥炭形成

湿地 mire

陸生湿地の総称 (西欧) = 水多くスポンジのような土地 (≈ 泥炭地 peatland, 同意のこともある)
mire = bog + fen

開水 open water: 一時的にでも抽水植物が存在しない水面

降水栄養性湿地群 bog mire complex (ombrogenous wetland)

降水栄養性 ombrotrophic (ombrogenous): 栄養分が結露含む降水のみに供給される
高貧栄養性: 水酸性でCa乏しくMg殆ど含まない
降水涵養性植生 ombrophilous vegetation

鉱物質栄養性湿地群 fen mire complex (minerotrophic wetland): 鉱物質栄養性 = 栄養分を降水の他に鉱物質に富む地下水・流水・浸透水から得る湿地

マール marl: Ca, Mg炭酸塩の緩い土壌の堆積。主に鉱物質湧水に涵養される流域で堆積する
鉱物質栄養性水 telluri water: 土壌由来の鉱物質栄養分を涵養する水
流水鉱物質涵養性 soligenous (≈ rheophilous): 動きのある水による鉱物質涵養性

rheophilous: 動きのある水の所の植生 (鉱物質涵養性のより広いgeonerousという意味で使われる)

地表水涵養性(滞留水涵養性) topogenous: 地形起伏による供給水がある。窪地の部分的水面も含める
地表水(涵養)性 geogernous, soligen: 鉱物質涵養性条件下
飛散性 flushing: 横方向の水の動きで、通常鉱物質イオンが付加される

湿地(沼地) vlei: 湿原(南アフリカ, 口語)。湿原に含まれないものも含む概念

[ 湿原研究 | 谷地坊主 | 海草 ]

索引

(Keddy 2010)

基本6分類 (major types)

  1. 沼沢地 swamp: 樹木優占湿地
  2. 湿地 marsh: 水中にある土壌に根付く草本植物が優占する湿地 Ex. ガマ・ヨシ (≈ 低層湿原: 泥炭優占)
  3. 高層湿原 bog: 泥炭堆積進み地表面が隆起し水位面より高く水理上隔離された部分 (= 降水のみから水供給) Ex. ミズゴケ類、ツツジ科矮性低木
  4. 低層湿原 fen: 多くは地表面が地下水位より低く、周辺集水域や地下水から水を供給され、泥炭上にイネ類(Ex. ヨシ)・スゲ類が優占する湿原

    中層湿原: 高層湿原-低層湿原中間 Ex. ヌマガヤ(代表種)、ニッコウキスゲ、ワタスゲ、ヤチヤナギ、ホロムイスゲ、ヤマドリゼンマイ (☛ 標津湿原)

  5. 湿性草地 wet meadow: スゲ・イネ等の湿性草本植物が優占。時に氾濫性土壌
  6. 浅瀬 shallow water: 水生植物(hydrophyte)が優占する
形成過程と水供給源
wetland
a. 湧水湿原____________b. 斜面湿原_______c. 貫流水湿原
wetland
d. 沼沢化型湿原_________e. 氾濫湿原__________f. 陸化型湿原
wetland
g. 釜型湿原______________h. 降水涵養性湿原
高位泥炭, 低位泥炭, 湖沼堆積物. 水の主な移動経路
図1. 欧州中央部の湿原形成過程・涵養水供給源による分類(Succow 2001)

栄養段階 nutirent classes

栄養分(酸素、水、光エネルギー)状態を考慮した植生の状態
→ 現場で栄養分知ること困難 → 植生により判別行われる (循環論法的)
貧栄養 oligotrophic: 利用可能栄養分少なく生物学的活性低 Ex. raised bog

貧(悪)栄養 distrophic: 貧栄養で、ある種の生物にとって有害な条件がある場合

< 亜貧栄養 suboligotrophic < 亜中栄養 submesotrophic
< 中栄養 mesotrophic: 有機物分解低く未分解腐植 raw humus (mull)現れる
< 過中栄養 permesotrophics < 亜富栄養 subeutrophic
< 富栄養 eutrophic: 排水の悪い湿原にはない
ラムサール条約における湿地
第1条1 この条約の適用上、湿地とは、天然のものであるか人工のものであるか、永続的なものであるか一時的のものであるかを問わず、更には水が滞っているか流れているか、淡水であるか汽水であるか鹹水(= 塩水・海水)であるかを問わず、沼沢地、湿原、泥炭地または水域をいい、低潮時における水深が6 mを超えない海域を含む。

沼沢地 (swamp)


Def. 表層地水位と地下水水位がほぼ一致し、水草が優占する湿原

Ex.ヨシ・ガマ・マコモ

集水域湿地 basin swamp: 閉塞凹地ケルトホールにできた沼沢地。水涵養源は浸透(湧出)水や表面流出水
水路上沼沢地 water track swamp: 凹状の排水流路が通る沼沢地。鉱物質でできた丘に発生

分解の進んだ黒泥が多い
アメリカカラマツ、ヌマヒノキ、クロトウヒ、ヤナギが生育すること多い

斜面沼沢地 slope swamp (sloping fen)
落込穴 sink hole: swamp中によくある湿原中の小さな窪み

水多く、窪み中に泥炭あれば分解が進んでいる
おそらく、地下水中に鉱物質が含まれたため形成される

沼沢地林 bottom-land forests in flood plains = 鉱物質涵養性沼沢地

アメリカカラマツ、Picea glauca、バルサムモミ、Cedrus deodara等 (spruce bog)。Picea marianaは高層湿原より早く成長
氾濫源や河川デルタにも形成 → 極地海岸平原 Atlantic coastal plains

低地沼沢地 lowland swamp: 排水悪い低地 + 氷河湖底や平坦な漂石平原にも分布

水供給 = 地下水、浸透水、地表面流出

カール carr: 低木林や森林を覆う低層湿原(欧州) ⊂ swamp
ハンノキ沼沢地 alder swamp: 水多く富栄養な土地(時に黒泥muck soil)

高層湿原のはずれで浸透水(湧出水、浸出水)の影響のある所によく形成
北米: 栄養分少なくなるとPicea mariana増す。ハンノキ生育の悪い所はハンノキ林湿地とし区別することもある

縞状湿地 insel moor
湧水湿地 quellmoor: 湧水に形成された湿地
ローン lawn: 一様な広がりを見せる地表面の硬い湿地植生で単子葉植物(Ex. Molinia)顕著な所
ブレンケ (池塘, = loch, ≈ pond): 高層湿原にできる池

閉鎖池 closed pond: 有機物(多くは生きた植物)で塞がれた池溏
掘 moat: 幅数 mの開水面

河畔林(水辺林, 河辺林) riparian forest

(s.l.) 河川と相互に影響がある範囲の森林 = 渓畔林 + 河畔林(s.s.) + 湿地林
渓畔林(渓谷林) valley forest: (河川上流域)渓流周辺

日本温暖帯: ケヤキ林
日本冷温帯落葉広葉樹林域: サワグルミ林(道南) (トチノキ(道南)、カツラ、シオジ)

河畔林 (s.s.): (下流)氾濫原で増水・洪水の影響を受け成立 - 不安定環境

扇状地河畔林: 砂礫がちの扇状地帯

Ex. ドロノキ林 (東北-北海道)、ヤシャブシ林
Ex. アカマツ林

平地河畔林: 平野部

Ex. ヤナギ林(高木林・低木林)
河辺林 riverside forest Ex. ドロノキ林、ヤナギ林
沼沢林 backswamp foerst Ex. ハンノキ林: 谷底地形に多

ヤチダモ林: 河畔林-沼沢林の間 - ハンノキ、ハルニレと混生多 エノキ林: 自然堤防上 (河畔林 river swamp forest)

+ 構成樹種: オニグルミ、オヒョウ、カツラ
機能
  1. 日射遮断: 木陰により水温上昇を抑制し、冷温性魚類等にとって重要
  2. 有機物供給: 水生生物の餌資源となる落葉、落下昆虫等の供給
  3. 倒流木供給: 淵や隠れ場所、越冬場等、主に魚類の生息場を形成
  4. 水質浄化: 林内濾過により水質を浄化 - 汚染源ある平野部で重要
  5. 生息地: 河畔を利用する全陸上生物の生息地
湿地林 swamp forest: 地下水位高く水が地表に停滞 Ex.沖積低地

ハンノキ林 → 水位↓ ヤチダモ林 → 水位↓ ハルニレ林

Ex. ハルニレ林: 河畔林(s.l.)の中では最も乾性立地

自然堤防、氾濫原、扇状地、山麓部、山地凹型斜面、段丘斜面等

= 土砂移動堆積: 河川運搬土砂(水積)、斜面移動土砂(匍行・崩積)
+ 水位変動大

上流 ↓ [ 山地渓畔林        ] ➔ ●地表変動撹乱(崩壊・土石流) ●流路変動
        ↓ [ 扇状地河畔林     ] ➔ ●洪水撹乱 ●最低河床からの高さ(水分、粒径)
下流 ↓ [ 沖積低地湿地林 ] ➔ ●河川水の停滞 ●推移、水質、土壌の化学性
札幌 (恒屋・伊藤 1983)

ハンノキ・ヤチダモ = 低位泥炭土
ヤチダモ・ハルニレ = 褐色低地土・灰色低地土

土壌水分: ハンノキ林 > ヤチダモ林 > ハルニレ林

胆振防風保安林: 茨戸川および石狩川(改修後)に囲まれる (恒屋 1996)

茨戸川 - 氾濫原 - 砂堤列帯 - 紅葉山砂丘

氾濫原: 上層 = ハンノキ・ヤチダモ - 下層 = ハルニレ
砂堤列帯: 低木層 = ハルニレ (+ エゾイタヤ)

浅間山麓・戸隠山麓 (今・沖津 1995)

ハルニレ実生は不安定立地にのみ出現 - 不安定立地で更新可
= 扇状地・河畔

河辺冠水草原: 河原や河原の背後に発達する草原 = 洪水時に浸かる環境

海岸 seashore

マングローブ mangrove
(ヨシ・スゲ類が混在することもある)
熱帯-亜熱帯、河口の干潟(砂泥地)に発達する森林

種:      マヤプシキ ヒルギダマシ ヒルギモドキ/オオバヒルギ オヒルギ   メヒルギ
北限:  西表島      宮古島           沖縄本島                          奄美大島 種子島

機能: 魚介類稚魚生息地・防波堤
干満 - 淡水塩水頻繁に入替 + 土壌泥深く不安定 → 土中酸素乏しい

呼吸根発達 + 塩分排出機構

胎生種子: 母樹に着いたまま発芽 - 落果後水に浮いて散布 (水散布)

浮遊中は破婚・発芽(開葉)抑制 - 海水による散布上の重要性質
Ex. オヒルギ、オオバヒルギ、メヒルギ

帯状分布 Ex. ポナペ島

① オオバヒルギ: 樹高5-7 m、支柱根(≤ 2 m)、垂下根(下枝から下垂)
② フタバナヒルギ: 樹高5-7 m、支柱根(≤ 2 m)
③ マヤプシキ: 樹高 ≤ 20 m、支柱根(板根様、≤ 50 cm)、直立根(高さ1 m、径 ≈ 10 cm)
④ オヒルギ: 樹高 ≤ 15 m、支柱根(≤ 50 cm)、膝根(高さ ≤ 50 cm)

Ex. 西表島

海 ← ヒルギダマシ/マヤプシキ-オオバヒルギ-オヒルギ-(海岸林)*
仲間川/その沖積平野: 〃 - オヒルギ - アダン - サガリバナ**

(* ≠ マングローブ林、**: マングローブ林としない見解多)

帯状分布要因 = 海からの距離に沿った環境傾度

Ex. 基質(砂・泥)、塩分、波浪、湛水時間

塩性沼沢地 salt swamp: 潮間帯や河口から上流に向かって発達

温帯以北 (マングローブ林欠く地域)

沿岸沼沢地(潟) lagoon
ポコシン pocosin: 米国東部の地学的に最若で低平な海岸平野にある湿地

地形: 僅かにドーム状 (時に湖沼有する)
植生: 上層マツ、低木層常緑ツツジ科潅木。周辺塩水部では下層鉱物質土壌は海水面下にある。鉱物質表層出現部は野火で泥炭・黒泥消失?

湿地 (marsh)


水は滞留かゆっくり動き、季節的潅水氾濫受ける。水質弱酸性-アルカリ性
地形区分
河口 estuaries (大きな川の河口 estuary)
河口湿地 estuarine marsh: 河口隣接した湾で、潟、流路、池溏が淡水、汽水、塩水の湛水受ける
沿岸湿地 coastal marsh: 河口から離れた海岸段丘上marine terraceや沿岸州内側湾入部、ラグーンで定期的に潮汐、汽水、塩水の湛水受ける
河川湿地 fluvial marsh: 流路上や氾濫源上
静水湿地 lentic marsh: 湖岸や川跡湖flowage lakeの岸
集水湿地 catchment marsh: 地形的に集水域
浸透水湿地 seepage marsh: 地形的な集水域ではなく、標高的に低いところか斜面の麓
窪地湿地 basin marsh: 閉塞した凹地(氷塊による凹地、ケルトホール、氷河凹地等)のmarsh。水涵養源は、表面流出水、溢水、表面排水、地下流出水等 牧草湿地 meadow marsh: 低層湿原fenと同意か、沼沢地の一部が全般的に厚い湿原で水位変動大
塩水性湿地 salt marsh: 砂洲や砂嘴により海から分離された潟や湾が、流入する河川の運搬物質や、潟形成によって生じた有機物により堆積され、次第に浅くなり形成された塩生植物生育する湿原
潮汐湿地tidal marsh

[ 湿原 ]

塩湿地 (salt marsh)

= 塩沼, 塩性湿地, 塩性沼沢
海の入江や河口付近の傾斜緩やかな潮間帯等にみられる沼沢地
厳しい環境で限られた種が単純群集形成
塩生植物 (好塩性植物 halophytic plant, halophyte): 高濃度塩水適応種 → 一般に根系発達悪く茎葉多肉化

Ex. アッケシソウ・ウミミドリ・ウシオツメクサ

→ 埋め立てに適した立地条件にあるため、近年著しく減少

湿性草地 (wet meadow)

湿性草原wet grassland: 非湿性植物交えるか、湿性植物優占しても植生高低い(< 1 m deep)
Ex. 湿性プレーリー wet prairie, 河川後背湿原(河川湿原) river meadow

[ サロベツ湿原 ]

高層湿原 (bog)


≈ 泥炭高層湿原 peat bog ≈ 降水栄養性湿原
→ 極貧栄養性 → 土壌酸性化 ミズゴケ湿原多 (+ スゲ類、ツツジ科低木(被度 < 25%)か常緑木本)

土壌栄養: 貧栄養性 dystrophic ~ 中栄養性

ブルテ(ブルト/ビュルテ) bulte (ハンモック hummock)

高層湿原表面にできる周囲よりやや高く乾燥した凸状の高まり
一般に谷地坊主より規模大きく側面が傾斜・逆傾斜しない → 周囲は高水分の窪みに取り囲まれる
普通に形成されたraised bog頂部にはツツジ類、コケ類、地衣類、小潅木等
泥炭マウンド peat mound より小
ハンモック成長は'泥炭のレンズ状再生複合体'とし説明される
更新サイクル regeneration cycle
高層湿原発達過程の[ブルテ ↔ シュレンケ]を繰り返すサイクル ⇒
更新複合体 regeneration complex: 高層湿原で形成が再生複合した広がり

シュレンケ内半水中性ミズゴケ類 = 成長早く隆起 → ミズゴケブルテ形成 → ミズゴケ・地衣類、潅木からなる成長遅いブルテは周りの成長に取り残され湛水しシュレンケ形成 ⇒ 繰り返し
この現象の継続は層位形跡から判別できるが、メカニズムは全ブルテ-シュレンケ複合体共通ではない

隆起高層湿原 raised bog: 現地形より中心部が(時に数m)高く成長し表面が凸型の貧栄養湿原 → ミズゴケ成長と泥炭堆積(再生複合体)により形成。水分は主に降水涵養性。表面には強酸性ブルテとソーク soak を通じ縁辺湿地に排水する湿った窪みや池溏がある。貧栄養性で酸化Ca含有量 < 0.5%

植生(木本植物)
北西欧州: Betula pubescens, Pinus sylvestris
アルプス山麓: Pinus mugo
北米北部: Picea mariana

ケルミ kermi (kermis): bog特有微地形 → ブルテより連続性ある帯状隆起

典型的raised bogではシュトラング湿原の集まったものが発達し形成

大陸性(気候下)高層湿原 continental bog: raised bogに類似 → 隆起低、多くはマツ類疎林や潅木(Ledum palustre, Chamaedaphne calyculata)に覆われたミズゴケ類からなる

欧州東部: meadow raised bog, ridge raised bog, karst raised bog

キューポラ cupola: ミズゴケ優占した降水涵養性湿原のドーム状の部分

→ 周辺に縁辺湿地laggがある
縁辺斜面 rand: ドーム状湿原の周辺部

→ bog expanse: rand内側に位置するraised bog中心部
→ 非森林性隆起泥炭地 bare raised bog: 森林ないドーム状泥炭地(南スウェーデンの分類)
ブランケット湿地 blanket bog complex
= ブランケット湿原(高地湿原, 地形被覆高位泥炭地) branket bog complex (upland moor) 地形の凹凸を反映した泥炭地(英)

起伏ある準高地(丘陵地)覆う高位泥炭地。標高高い所か低平地では寒冷湿潤地域に形成され、丘陵地では多温多雨な所に形成される。起伏全体(丘陵、斜面、谷)を覆うこともある。泥炭は繊維質、降水涵養性で、稀に厚さ6 ft以上となる
高地泥炭 upland peat: 斜面・起伏ある丘陵地上。特異的水面ない

台地上高層湿原 plateau bog: 0.5-2 mの高さを持つ湿地で、比較的平坦な表面を持つ。高くなった降水涵養性の地表面が形成されるのは、泥炭の堆積またはレンズ状の土壌凍結による。数ヘクタールの広さを持ち、しばしば波状で、周囲を鉱物質涵養性湿地に囲まれる。通常、森林を伴う

大型泥炭丘 krupny torfyany bugor

沿海性高層湿原 maritime bog (この訳はよくない): 起伏を覆う高層湿原(ブランケット湿原)。冷涼で多湿な気候地帯にできる
湖水性沼沢地 lacustrine bog: 高層湿原形成過程で、依然鉱物質の水が大きな影響を与える中間的段階
丘陵地覆う高層湿原。高標高の所か低平地でも寒冷湿潤な地域に形成され、丘陵地では低温多湿な所に形成。泥炭深2 mに達することもある
湿地林(訳不適切) bog forest (continental forest raised bog):

高層湿原に成立した森林 - 沼沢地より貧栄養性

指紋状高層湿原 fingerprint bog
陸化型湿原 bog of lacstrine origin: 湖盆埋積で湛水深浅くなり、湖底の至る所に抽水植物が繁茂し形成
湿原湖 bog lake: 岸全体か一部が高層湿原に囲まれた開水面。湖岸周辺、湖底、かその両方に泥炭堆積を持つ。多量のコロイド物質を含有 (いずれ高層湿原に変わると考えられる)
浮島(フローティングマット) floating mat
水溜りに浮かぶ泥炭の1形態。湖岸沿いに形成多いが、モレーン凹地、ケトルホール kette hole、シンクホール sink hole等にもある

プラウアー plaur: ドナウ川デルタのヨシの浮島
スード sudd: スーダンのCyperus papyrusでできた浮島

揺るぎの田代 quaking bog (floating bog, shaking bog)

突出海岸進出 > 湖底堆積 → 湿原下に水塊閉じ込められ不安定で、この上を歩くと動揺 (= 名前の由来, ≈ quagmire)
ぬかるむ湿地(適訳なし) quagmire: 踏み込むとへたる(s.s.)または膨張する(s.l.)揺るぎの田代。ミズゴケ繁茂し池溏が陸化状態にある湿原

凹型モール concave bog
非対称丘モール eccentric bog complex
潅木湿原 (矮生低木湿原) dwarf shrub bog: 貧栄養で比較的乾く高層湿原

→ ツツジ科小潅木・ミズゴケに覆われる

傾斜地湿原 bog on hill slope (Gehangemoor): 水流出し易い傾斜地に形成

フロエ flowe (Scotland): 傾斜した高層湿原

斜面高層湿原 sloping or hanging bog: 鉱物質含む水を受ける斜面。内部で横方向への水移動は泥炭堆積で制限され、高層湿原植生優占 - 湿潤地方多

アーパ湿原 (= 島状泥炭地、環状高位泥炭地, aapa mire)

等高線に沿いシュトラング-湛水シュレンケ
降水は殆ど雪が供給 → 融雪期に蒸発作用弱く水が多量に表面流出 = 地表に長く滞留 → ミズゴケ発達抑制 → 全体の形態(断面)は平坦かやや窪む
亜寒帯の広範囲に分布

混合湿原 mixed mire ⊂ アーパ湿原 = 降水涵養性となる高さのridge + 鉱物質涵養性に留まる残りの部分(多くはflark)

シュトラング strang (strange), string, (bog) ridge
水田畦の様な帯状の幅の狭い泥炭部

通常、傾斜方向と直行する長い軸持つ  網状パターン形成もある

シュレンケ (ハロウ hollow)
ブルテかケルミ間の凹地。浮島で水を湛えた平坦部 → ハリミズゴケ定着

ハリミズゴケマットにオオミズゴケ侵入 → ブルテ

シュトラング(ストリング)湿原 string fen
構造性湿原 (patterned mire or patterned fen) ⊂ アーパ湿原
豊富な融雪水の局所的流れにより形成されたブルテ-シュレンケ起伏を持つ
シュトラングと湛水シュレンケは傾斜方向に直角な梯子状パターンを成す

フラーク flark (rimpi, flachette (ニューファンドランド), mare, hollow): シュトラング湿原にある規則的配列シュレンケ。北方型鉱物栄養性泥炭凹地。通常細長く、水多い泥状凹地。長さ数100 mに及ぶ。斜面上でflarkは細く幅は数m。平坦な湿地で幅数100 m以上のこともある。Flark長軸は必ず斜面方向と直交
発達したシュトラング湿原: flark底は泥状。植生 = Drepanocladus, Scorpidium、ミズゴケ、スゲ類

島状森林性湿原 wooded island fen: 湿原上で林が直線状に点在や、島になる構造性湿原の1形態。島状の林は下り傾斜方向に末端部が向く長い軸持つ

トウヒ島 spruce islands [米]: 高層湿原植生 + クロトウヒ-米国カラマツ林
永久凍土核持つクロトウヒが覆う泥炭隆起部分で縁辺部から徐々に崩壊
連続永久凍土南端で生じ、気候条件は樹木生育によいパルサ

water track fen: patterned fenの一部分。鉱物質含む水が流れる地表面下の水道を示す凹状地占める。泥炭があれば通常分解進んでいる。アメリカカラマツ、潅木等生える
ストリング湿原 string bog: シュトラングとフラルクからなる主に降水涵養性で貧栄養性の湿原

→ 構造性構想湿原 patterned bog

窪地泥炭地 basin bog: 湖や河川流路の閉塞した凹地やケルトホール(ポットホール pothole)に、水位高まで形成される高位泥炭地。表面は平坦、緩傾斜、または若干凹 → bog lake, closed pond, raised bog

窪地湿原 basin fen (retention fen, soligenous peatland, topogenous peatland): 窪地泥炭地basin bogの凹地が低位泥炭で占拠された部分

洪水は春季流出・浸透により短期間しか生じないが、水は長く滞留し低位泥炭地植生発達

偏心湿原 eccentric bog (訳不適): 縁辺部付近が高まる高層湿原で一方向に傾斜し、時に扇状やサドル状。低地-高地にある
歌才

歌才うたさい湿原 Utasai bog

ミズゴケ湿原 4.5 ha。泥炭深 ≈ 9 m、2万数千年の変遷記録。黒松内町とANT(公社日本ナショナルトラスト協会)が平成27年に土地取得し、植生・地下水位モニタリング、排水路改修等、保全再生の取組み。踏圧抑制のため立入禁止。生物・土壌採取禁止(Tsuyuzaki & Zhang 2020)  「日本の重要湿地500」(環境省)選定: 黒松内町字豊幌311-4, 311-5 (約5.5 ha)。地権者: 黒松内町、ANT。連絡先: 町役場企画環境課 0136-72-3376

歌才
    [黒松内町・ANT]

1989 黒松内町: ブナ北限里づくり構想

1991 自然体験学習宿泊施設
1993 特産物手作り加工センター、博物館的施設、キャンプ場整備
1995 自然科学奨励事業

→ 体験型学習教育提供 (歌才湿原、瀬棚層化石)
分野横断的プロジェクト研究(GRENE流域レジリエンス朱太しゅぶと川)
里山研究プロジェクト(JAGUAR)
2012 後志地域生物多様性協議会設立
来馬湿原
スゲ類: エゾサワスゲ、グレーンスゲ、ヤチカワズスゲ、オオカサスゲ

美唄湿原

亜寒帯高層湿原 (20-50 ha): 地盤沈下著しく減少中 - 原植生は1 haもない

ヌマガヤ-イボミズゴケ群落
オオイヌノハナヒゲ-ワタミズゴケ群落
チマキザサ群落
シラカンバ-チマキザサ群落

幌向湿原

幌向再生地
泥炭採掘跡地 → ヨシ原 + 外来種侵入 → 再生(地域連携)
2017-2019 植物導入の試み ☛ ホロムイ七草

2017 ヤチヤナギ、イソツツジ、ゼンテイカ、コバギボウシ、ワタスゲ、ミカヅキグサ、ハイイヌツゲ、モウセンゴケ、ヌマガヤ、ホロムイスゲ、ホロムイコウガイ
2018 ツルコケモモ、ホロムイリンドウ、エゾリンドウ、ミツバオウレン、ウメバチソウ、オオバタチツボスミレ、ヒメシャクナゲ、ホロムイツツジ、ホロムイクグ、ホロムイイチゴ

2020-2024 ミズゴケ導入の試み
現在地 夕張川右岸 ☛ 警戒レベル情報
河川敷地占用標識 (気になる看板)
許可番号 札建江河 第12号    許可年月日 令和6年4月12日
許可者 北海道開発局
使用者 住所 氏名 札幌市東区中沼4条1丁目3番11号 北海道緑興 株式会社
占用目的 泥炭水切り場    占用面積 99.233.5 m2
占用期間 令和6年4月20日から令和7年3月31日まで
[その隣には上記看板と同じだが空欄だらけで]
許可番号 札建公管企 第 _____ 号
使用者 住所 氏名 札幌市北区北7条西6丁目1番地 北海道農材工業 株式会社
使用目的 泥炭採取 (「採取土量 m3」という項目があるけど空欄)
というのが立っていた

低層湿原 (fen)


≈ 鉱物質栄養性湿原
表層水移動性高 → 鉱物質涵養性で栄養に富み、酸性度が高層湿原より低
栄養区分
富栄養性低層湿原 eutrophic fen: 栄養に富む陸水に涵養されミズゴケない
中栄養性低層湿原 mesotrophic fen: やや栄養分乏しくミズゴケ出現
(貧栄養性低層湿原 - 存在しえない)
ソーク soak: 筋状低層湿原で、浸透水の水道となる所。高層湿原を横断したり、2つの高層湿原の境界となる

フェンソーク fen saok: 高層湿原を囲む自然排水路で、湧水個所では鉱物質の水が出現することもある

湧水湿原 spring fen (soligenous muskeg): 湧水箇所や流出地帯に形成される凸状か傾斜した低層湿原

平坦地に形成されることもある
小さな湧水池が特徴
泥炭がある場合には、比較的よく分解される
スロウ sloughs: 浅い湖で通常ヨシ湿原に囲まれ地表面下の湧水により涵養される

谷湿原 valley bog (heat water bog): 水の動き小さい谷や、水の集積しやすい浅い凹地に形成される湿原 ⇒

言葉はbogだが 降水涵養性湿原未発達(= 低層湿原) ≈ minerotrophic wetland, swamp

滞留湿原 retention fen: 殆ど一年中洪水が残留する低地低層湿原

ヒース (heath, UK)

一般的に、ツツジ科ヒース常緑潅木優占地
ヒーザー heather: 特にErica, Callunaに覆われた砂地や鉱物質土壌。泥炭ないこともある
ヒーザーモーア heather moor: 泥炭があれば高層湿原となる
縁辺湿地 lagg (スウェーデン語) (marginal fen, ditch, slough, fen soaks, seepages)
高層湿原を取り巻く富栄養性湿地 = 低層湿原植生有する。Raised bog境界に相当。凹地状高層湿原から水が抜ける結果生じる

水文的縁辺湿地 hydrologic lagg: 地下水位が高くなると泥炭層の薄い周辺部が上昇した地下水面下になり湛水する縁辺湿地 → emergent fen: marshに関連

マクンベツ湿原 (Makunbetsu fen)

Reed Alder
石狩市 (43°13'30''N, 141°21'42''E, 標高 2 m)
ハンノキ (Alnus japonica)-ヨシ群集: ミズバショウ群生地
ハンノキは湿原の代表的指標種 (indicator species)

見かけた看板 (2010年4月24日)

住民参加による自然林の再生
地域住民協力のもと、自然林再生を目標に、生態学的混播法による植樹が実施された場所です。
車の乗り入れ、除雪作業等の際は十分注意してください。
サークルの周り直径3 mの円内の草刈はしないでください。

北海道開発局 石狩川開発建設部 札幌河川事務所 TEL (011) 581-3235

谷地坊主(野地坊主) tussock: 低層湿原(泥炭地)スゲ群落の叢株隆起 (s.s.)

ブルテの一種とする人もいる


中間湿原

代表種: ヌマガヤ、ニッコウキスゲ、ヒメシャクナゲ、ワタスゲ

浅瀬 (shallow open water)


川・湖・海等の水面のある地形の中で水深が浅い部分

水生植物 (aquatic plant)


水生生物 aquatic organism

reservoir
図. 水生植物生活型に基づく自然度の高い湖岸帯での緩傾斜地形と植物群集(桜井 1991)

淡水植物 → 植物プランクトン → 浮生植物 → 浮葉植物 → 抽水植物

a. 浮遊植物(浮漂植物)・動物 free-floating plant/animal: 動物: プランクトン
b. 浮生植物: 水面に浮かび水底に固着しない

Ex. Spirodela polyrhiza, Utricularia spp., Salvinia

c. 水生植物/水中植物 aquatic plant: 根は水底

= 沈水植物 + 浮葉植物 + 抽水植物
水生(沼沢)植物 (helophytes)
沈水植物 submerged plant: 葉水中に沈む

Ex. シャジクモ, クロモ, ジュンサイ, マツモ, セキショウモ

浮葉植物 floating-leaved: 根水底固着、葉水面に出る

Ex. Nymphaea spp., Nelumbo nucifera, Potamogeton spp.

抽水植物(挺水植物) emergent plant: 根水底、茎・葉水上に出る

Ex. Phragmites australis, Typha latifolia, Zizania latifolia
半抽水植物 semi-emergent plant

洞爺湖
Potamogeton spp.: 全て水草

リュウノヒゲモ P. pectinatus L.
エビモ P. crispus L.
ヒロハノエビモ P. perfoliatus L.
ササエビモ P. gramineus L.
センニンモ P. maackianus A. Benn.

ホザキノフサモ Myriophyllum spicatum L.
チトセバイカモ Ranunculus yezoensis Nakai
マツバイ Eleocharis acicularis (L.) Roem. et Schult. var. longiseta Svenson
イトイバラモ Najas yezoensis
シャジクモ類 Chara L. sp(p). (輪藻)

保全・復元 (conservation and restoration)


湿原消失原因 cause of wetland destruction

湿原の維持管理は現在の所困難であり減少の一途を辿る

開発: 農業 agriculture + 林業 forestry (logging) + 都市化 urbanization 浚渫 dredge spoils エネルギー生産 energy

谷地坊主 (野地坊主) (tussock)


谷地坊主(あるいは野地坊主)は、日本では湿原に見られるイネやスゲが作る隆起を指す。ワタスゲ(Eriophorum vaginatum)やホロムイスゲ(Carex middendorffii)は環境により谷地坊主を発達させる。
谷地坊主に当たる英語としては、tussockがよく用いられる。ただし、tussockは、乾いたところにあるイネやスゲが形成した隆起も指すので、必ずしも谷地坊主とは限らない。集合関係で言えば、谷地坊主はtussockの真部分集合となる。たとえば、ヒメスゲ(Carex oxyandra)の株立ちは、tussockと呼べるが、谷地坊主とは言わない
ちなみに
【名】1. 草むら、茂み. 2. [毛髪・羽毛などの]房 (英辞郎 2008/10/12)
【名】【C】 草むら, 茂み. (研究社和英中辞典 1998)
まったくもってイメージが掴めない訳である
機能
定着促進効果(facilitation)

ストレス緩和
リター供給
種子トラップ

十勝坊主

= アースハンモック(芝塚・凍結坊) earth hummock

⊂ 円形土 → 成因が谷地坊主と全く異なる
高さ30-70 cm、直径30 cm-1 mのドーム状に盛り上がる
全体を草本や矮生低木と腐植層に覆われる

[スゲ属 Carex]

世界の谷地坊主

ニュージーランド
Tussock1 Tussock2
[1/2] ニュージーランド、ルアペフ山中腹で見られたtussock群(1996年12月17日)。これは、谷地坊主とは呼べないがtussockではある
日本 (北海道)
Tussock3 Tussock4
[3] 有珠山に見られるヒメスゲ (Carex oxyandra). [4] サロベツ泥炭採掘跡地で発達するホロムイスゲ (Carex middendorffii)谷地坊主(Koyama & Tsuyuzaki 2010)。これらの谷地坊主は、微環境を改変することで実生の定着を促進している(Koyama & Tsuyuzaki 2012)。しかし、異常気象(乾燥)年には、その効果は薄れる(Koyama & Tsuyuzaki 2013)
ST5 Tussock6
[5] オオウシノケグサ(Festuca rubra)により形成された谷地坊主。基本的に、この種は乾いた場所に生える。
アラスカ
[6] 2004年に森林火災のあったポーカーフラットで見られるワタスゲ (Eriophorum vaginatum).
ツンドラ tundraに発達した谷地坊主の頂部は、猛禽類(フクロウ)の採餌場と化しており、骨の山が見られる(Tsuyuzaki et al. 2008)
中国
Carex meyerianaの谷地坊主は、頂部に他種を定着させ、種多様性を上げている(Tsuyuzaki & Tsujii 1992)
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